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「9.11後、イスラムのリーダーがETAに共闘を提案」??(エル・ムンド)
6月1日付けのエル・ムンド紙(電子版)は、2001年の9.11の後に、「イスラム過激派」がスペインの地元テログループETAに秋波を送っていたという内容の記事です。ただし、私はこれを「デタラメな内容による情報操作の例」としてお知らせします。
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『9.11後、イスラムのリーダーがETAに共闘を提案』
(マドリッド)
エル・ムンド紙は、ホセ・マリア・アスナールの政府が、3月11日の列車爆破事件の24時間後に<ETAがイスラム・テロリスト・グループと共闘関係を確立したいと望んでいることを明らかにする機密情報を流していたことを突き止めた。この共闘がありうることの根拠は、警備当局によって逮捕されたETAメンバーの手紙や会話によっている。
その最も示唆的な文書は、2001年9月12日(アルカイダによってWTCビルとペンタゴンが攻撃された次の日)に、現在フランスのFresnes刑務所にいる「イスマイル」として知られるイスラム教徒から、現在マドリッドのソト・デ・レアルで服役中のかつてのETA指導者ホセ・ルイス・ウルソロ・システィアガに送られた一つの手紙である。
この手紙の文面で、そのイスラム教徒は次のように言う。「君はニューヨークで起きたことを見たか? ・・・、そうだ、そうなのだ。一言で言えば、偉大だ! テロの論理が純粋な形で適用された。・・・未だかつて無かった。僕にとってはすばらしい贈り物だった。僕の論理的思考に王冠が与えられるのを見たのだ。ジョセバ【ホセに相当するバスク語:訳者】、君は僕が4年前にこの任務についての論理を話したことを覚えているか? 僕はあと1年半はフランスにいるだろう。この期間は君たちを援助できる。「サーベル・サムライ」計画を準備するための作業の2ヶ月と6日後にだ。一緒にこの作戦を行なおう。そして君たちに見せよう。・・・イスラム・グループとETAの協力の可能性が自殺テロリストの名を汚さないことを期待しよう。」
政府が示した第2の証拠文書は、1998年1月にホセ・イグナシオ・デ・フアナ・チャオスとその女友達が交わした会話内容についてである。このETAメンバーは当時メリージャの刑務所にいた。
この会話の中でデ・フアナ・チャオスは相手に次のようなことを言っている。「もし統一主義者たち【スペイン全体主義者の意味:訳者】が望んでいたならば、スペイン人たちは1週間のうちにここから逃げ出していた。ちょうど彼らがサハラから逃げ出したようにね。」
http://www.elmundo.es/elmundo/2004/06/01/espana/1086068975.html
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記事前半の、2001年9月12日の「イスラム・テロリスト」がETAメンバーに出したとされる手紙で、「サーベル・サムライ」計画とあるのですが、これが何のことなのかよくわかりません。原文は「la operación Sable Samurai」で、何かのテロ計画のようなのですが。またこの記事では「イスマイル」と呼ばれる人物がどのような人物でなぜ逮捕されたかなどには触れていません。
それにしても、「テロリスト」自身が自分たちのことを『テロリスト』と呼んでいるのは珍妙です。でっち上げか、あるいはこの「イスマイル」と名乗るイスラム・リーダーが完全にどこかの回し者であるのか、でしょう。エル・ムンド紙がこんないい加減な「特報」を大々的に取り上げた、あるいは旧アスナール政権が作ったとされる「機密文書」をリークさせたことは、逆に、読者に「テロ」を拡大解釈させてわけのわからぬものを結び付けさせ、恐怖感のみを煽り立てる、という世論操作の一環でしょう。(エル・ムンド紙はスペインの胡散臭い連中と繋がっていますから、時々その本性を出すのです。それがまた面白いのですが。)
ただ、こんないい加減な情報でなくても、ヨーロッパ内のイスラム原理主義グループとETAとの間に接触があった可能性は実際にあります。3.11の直後にETAの合法組織バタスナのオテギ議長が「イスラムグループによる犯行だ」と示唆した背後に、共闘関係には無いにせよ、彼が何らかの情報を掴み得る立場にあったことは間違いないでしょう。またETAは昔からアルジェリアを亡命先の一つにしてきましたから、そこでも何らかの接点がありえます。ですからある勢力がETAとイスラム過激派の両方の動きをまとめて操作することは可能でしょう。
記事後半の、1998年の「ETAメンバーと女友達との会話」で、「サハラから逃げ出した」というのは、旧スペイン領西サハラの領有権を1975年にスペインが放棄したことを指すと思われますが、これが「9.11以後のイスラム・テロリストとの関係を表す」とは到底思えないのですが。会話の他の重要部分をエル・ムンド紙かまた旧政府のどちらかが隠しているのか、あるいは単なるこじつけでしょう。
しかし「こじつけ」だとしても、スペインの保守的人士にとっては、要するに、サハラのイスラム教徒たちに「追い出された」スペインに言及している言葉が「イスラム・テロリスト」への「連帯感」のように聞こえている、というわけです。このような「暴露記事」を通して、「イスラム」といえば「テロ」と反射的に結びつける神経を読者の中に作っていこうとする情報戦術なのかもしれません。