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社説
05月30日付
■主権移譲――イラク自立を合言葉に
イラクの主権が米英占領当局からイラク人の手に移される来月30日まで、あと1カ月を残すだけとなった。
本来ならば、国連安保理がイラクの再建の道筋を定めた新たな決議を採択していてもおかしくない時期だ。しかし現実には常任理事国間の調整が長引き、出口が見えない状態が続いている。
ブッシュ米政権は強硬だ。イラク再建は「国連中心で」と言いつつ、占領終結後も影響力を維持しようとしている。多国籍軍の撤収期限の明示に反対し、指揮権も手離そうとしない。
イラク統治評議会が主権回復後の暫定政府首相にイヤド・アラウィ氏を指名したが、これも米国の後押しで、国連は何も知らされていなかったという。
開戦前から米国と対立してきたシラク仏大統領は、先日のブッシュ大統領との電話会談で、石油資源や治安維持にかかわるイラク側の権限について意見交換を続けるべきだと、くぎを刺した。
中国もイラク暫定政府へ完全に主権を移し、多国籍軍の駐留も来年1月までとするよう提案した。これまで聞き役だった中国のこの動きに、仏独ロを含む大半の理事国が同調している。
イラクを独裁から解放したのは自分たちだし、民主化はこれからだから、退くことはできない。米政府の言い分だ。
しかし、米国が戦争の大義とした大量破壊兵器の差し迫った脅威はなかった。占領政策も誤算が続き、武装勢力による襲撃やテロで多くの米兵やイラク人が犠牲になった。窮余の一策でイラク再建の先導役を国連に委ねたものの、イラク人虐待事件が表面化した。
反米感情が新たな襲撃やテロを誘発し、米軍がそれを制圧すればさらに反米感情をあおる。この悪循環を少しずつでも抑え込む方向へ転換させなければ、イラク再建の展望は開けようもない。
国連が満足に活動できない状態が続けば、民主的な選挙や「法の支配」は絵に描いたもちとなる。イラクがテロ集団の新たな根城になり、テロとの戦いを危うくする恐れも現実味を帯びる。
支持率が落ち込むなかで、ブッシュ氏にとって転進は難しい選択だろう。だが、もはや、現実はのっぴきならないところに来ている。
鍵は米英と仏独ロ中との間の調整だ。これから1カ月、米欧首脳の顔合わせが相次ぐ。ブッシュ氏はノルマンディー上陸作戦60周年式典に出席するため、今週末に訪仏する。来週には主要8カ国首脳会議、月末にはNATO(北大西洋条約機構)首脳会議がある。
たとえ安保理決議ができても、米欧が亀裂を引きずったままでは多国籍軍も国際協調も紙の上だけに終わる。それでは、イラクは混迷から抜け出せない。
世界があげて新生イラクを支える態勢をとれるかどうか。今はまたとない機会でもある。イラク国民が納得できる自立を確保することが出発点である。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040530.html