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核心
2004.05.30
シャロン政権 瀬戸際
『ガザ撤退案』一転保留に
イスラエルのシャロン首相が、パレスチナ和平に向け提起した「パレスチナ分離計画」で、与党内の逆風を受け窮地に陥っている。国内外での信用と指導力強化を狙って、修正案を30日の閣議に諮り、賛成の“お墨付き”を得て計画推進へ突っ走る予定だったが、直前になって閣内でも形勢不利な空気が広がり、首相は急きょ、提案を引っ込める事態に。計画の立ち消えは、首相にとって政治的な致命傷になる可能性もある。 (カイロ支局・秦融)
パレスチナ自治区ガザからの軍撤退、ユダヤ人入植地の撤去を軸にした分離計画は、シャロン首相が今年二月、自ら率いる与党リクードや国会の承認を経ず、独断的に公表した。
今月四日、ニューヨークでの国連、米国、欧州連合(EU)、ロシアによる四者協議を受け、アナン国連事務総長が声明で「(ガザ撤退は)和平を探るためのまれにみる好機」と評価するなど、国際社会はこの計画を歓迎する。
イスラエル国内も、各種世論調査で国民の六−七割が計画に賛成し、野党・労働党まで支持に回った。だが、足下のリクードは、今月二日の党員投票で六割が反対、連立与党も含めて身内から逆風が吹き付けるというねじれ現象が起きている。
ガザ撤退の“地ならし”で、パレスチナ側の武器輸出路を事前に断つため、イスラエル軍が今月行ったガザ南部ラファへの侵攻も、住宅破壊などで内外の批判を浴び、撤退を余儀なくされた。
それでも世論を後ろ盾に、閣議で突破口を開けようとした首相は二十八日、計画の修正案を一度は全閣僚に回覧した。
修正案は「入植地撤収を四段階とし、各段階で閣議了解を得る」など、首相の独断性を抑えた内容。だが、対パレスチナで強硬なリクードの反対派や、連立与党で入植者を支持基盤とする極右・国家統一党、国家宗教党の閣僚から支持を得るのは不可能な中身だ。
この時点で、首相は閣議否決覚悟で修正案を提出、計画を支持する野党労働党との再連立か解散、総選挙に打って出る決意を固めたとみられた。イスラエル紙ハーレツによると、首相はこの回覧の直前、リクード有力者で首相の地位をうかがうネタニヤフ財務相(元首相)と会談。ネタニヤフ氏は修正案を拒否し、当初案を白紙撤回した上で三カ所の入植地撤去のみ認めると通告し、物別れに終わった。
首相側近は「ネタニヤフ案は連立政権を崩壊させ、労働党と再連立もできず、米国も合意しない案で、政権を不能にする狙いだ」と激しく非難。「修正案にネタニヤフ氏が反対した場合、更迭する意向」(マーリブ紙)など、首相は一時、党内分裂も覚悟で修正案を提出するとみられたが、最終的には側近らに押しとどめられたようだ。
これに対し、当初はガザ撤退に賛成を表明していたパレスチナ側も、四月の米・イスラエル首脳会談後、米側がヨルダン川西岸の一部入植地の存続を認めるなど、イスラエル寄り姿勢を鮮明にしたことに強く反発。「撤退は一方的な形ではなく、交渉を経てなされるべきだ」(クレイ首相)と警戒を強めている。
シャロン首相の政治基盤の弱さが際だつ中、首相の進退をにらむ思惑も絡んで、パレスチナ和平への糸口を探る分離計画の先行きは、一段と混迷の度を深めてきた。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040530/mng_____kakushin000.shtml