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社説
05月29日付
■多国籍軍参加――話が逆さまではないか
来月末にイラク人の手に主権が戻った後、イラクの再建をどう助けていくのか。米軍や有志連合軍と反米、反占領勢力との衝突が続くなかで、今のままの自衛隊派遣を続けるべきなのか。日本が答えを迫られている重い課題である。
国連安保理では、主権移譲後のイラク暫定政府の権限や多国籍軍ができた場合の駐留期限をめぐって、影響力を維持しようとする米英と、イラクの早期自立を主張する仏独などが激しい外交戦を展開している。根底にあるのは、イラクに秩序を取り戻し、復興を早めるにはどちらの道がいいかという対立だ。
ところが、日本政府はこうした根本の問題に大した関心はないらしい。とにかく自衛隊をサマワに残したい。そのためには多国籍軍に参加するしかない。だから安保理の新たな決議は自衛隊が参加しやすい内容にしてもらいたい。米国などに対して懸命にそう働きかけている。
主権が移譲されると、自衛隊の法的な地位も変わる。駐留を続けるなら、イラク暫定政府から支援の要請を受けて決めるのが筋である。ところが、暫定政府の権限ははっきりしない。ならば、新決議で多国籍軍の任務に人道復興支援を加えてもらう、そうなれば自衛隊はイラク特措法の枠内で活動を続けられる。それが手っ取り早いというのだ。
だが、これでは話が逆さまである。
人道復興支援は、新生イラクと国際社会が結束し、国連の援助機関やNGOなどが活動できるようになってこそ効果があがる。その大前提が治安の回復だ。
しかし、米軍主体の多国籍軍が主権移譲後も幅を利かせては反米活動は収まらない。それが占領1年間の教訓である。それにもかかわらず、米政府は多国籍軍の行動にかかわる権限を保持し、必要がある限り駐留を続けるとも言う。
日本政府がイラクの再建を真剣に考えるなら、むしろイラクの自立を早めるよう米国を説得することだ。そのうえで、暫定政府に自衛隊による支援について率直な意向を聞く。米主導の多国籍軍のなかで駐留を続けられればいいというのでは、日本は米国の意向が最優先だという印象をイラク人の間に強めかねない。
治安が改善に向かわない限り、新しい安保理決議ができても、多国籍軍に大規模な兵を派遣する国は現れそうにない。自衛隊の参加はイラク問題をめぐる国際社会の亀裂の修復にも役立つまい。
多国籍軍にも様々なものがある。近年は国連平和維持活動と似た活動や、国の再建に役立つ非軍事的な活動もある。そうした分野への自衛隊の参加は、今後国会で十分議論する必要がある。
しかし今問われているのは、イラクの安定のために日本は国際社会をどう動かせるかである。ブッシュ政権への配慮もあろうし、自衛隊の活動領域をこの際広げてしまおうという思いもあるのだろう。だが、イラクにとって何が肝心なのかという思いが乏しすぎないか。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040529.html