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義務教育費の国庫負担問題
国と地方の税財政を見直す「三位一体改革」で、義務教育費国庫負担制度の廃止をめぐる文部科学省と総務省の攻防が激化している。「優秀な教職員の確保には給与費の安定供給が必要」と同制度の維持を主張する文科省。一方、総務省は「財源さえ保証されれば同じ」と、地方の裁量拡大に税源移譲を求める。数あるデータの中から都合のいい部分を抜き出して提示するなど、あの手この手で自らの正当性を主張する省庁間の権益争いの実態を追った。
教育行政になじみが薄い中山成彬文部科学相が義務教育費国庫負担制度を堅持する姿勢を示したことに、文科省の職員は胸をなでおろしながらも、警戒心をゆるめない声も。教育に関する豊富なデータと自民党の文教族議員を“武器”に、制度の存続に向けて必死の巻き返しを図る。
同省の試算では、負担金の相当額を個人住民税として地方に税源移譲しても、四十道府県は財源不足に陥る。足りない分を補てんする地方交付税は縮小傾向で、「いくら首長が教育熱心でも、先立つものがなければ」。
九月十四日に開かれた関係閣僚と地方六団体の初会合では、過去に一般財源化された教員の旅費や教材費の場合、地方の財政難できちんと予算化されなくなっている現状をデータで提示。
さらに、四十二年前には市街地と農山村で学力に格差があったというデータを初めて公開した。
三年前の調査では大都市と町村間の格差は解消されているとして、義務教育の成果をアピールした。
総務省が反論のために示したデータには「間違った数字で都合よく反論している」と怒り心頭。「負担金を廃止しても、国が厳しく地方を指導すればいい」との主張には「それこそ地方分権に反する考え方では」と皮肉たっぷりに応戦する。
一方、文教族議員は来年の通常国会への法案提出を目指して与党間で協議が進む教育基本法改正を盾に「義務教育の根幹を守る負担金がなくなるなら、基本法改正の議論も一からやり直しだ」と、小泉内閣に揺さぶりをかける。
文教族の“ドン”森喜朗前首相からは「政治家として命を懸けて(廃止に)反対する」の言葉も飛び出した。 (社会部・高橋治子)
「文科省がいろいろデータを出してくるから、同じ土俵に乗ってあげているだけ」。地方の声を代弁し、国の負担金廃止の立場を取る総務省は、専ら反論に徹する。
典型例が学力の国際比較の表だ。文科省は経済財政諮問会議などに、数カ国だけ抜き出した資料を提示し、「日本や韓国など国負担の国は学力上位で、米国やドイツなど地方負担の国は学力低位」と主張。だが、総務省は「いいとこ取りだ。例えば、カナダなど地方負担で学力上位の国もあるのに無視している。誰が考えても反論できる資料」と一笑に付す。
また、国の負担制度のおかげで教育水準が高まったという文科省の主張に対し、総務省は「公立小学校教員一人当たり児童数」の推移を提示。「一人当たり児童数が減って教育水準が高まったのは、一九五九年に義務標準法が施行されたのが理由だ」と、カネを出す主体が国から地方に変わっても水準は落ちないと反論。理屈では負けておらず、幹部からは「文科省はカネの話ばかりするが、ゆとり教育などほかにやることがあるのでは」と余裕の皮肉も。
ただ、総務省は政治の動きを警戒する。ある総務官僚は「いずれ土俵は政治になる。(理屈で勝っても)政治はあなどれない」と徒労感をにじませる。
実際、森前首相の文科省応援発言が飛び出し、「どこの省庁も政治家を使ってくる。きついなあ」と嘆く職員も。
麻生太郎総務相は内閣改造後の記者会見で、郵政民営化と三位一体改革を同省の二大テーマとして挙げたが、省内からは「郵政改革と比べて地味なだけに、首相がどれだけ本気でやってくれるのか…」と心配する声も上がっている。 (政治部・金森篤史)
<メモ>
義務教育費国庫負担金 公立小中学校の教員給与の半分を国が負担する制度。本年度の国の負担金は2兆5000億円で、文部科学省の一般会計予算の4割強を占める。三位一体改革で、全国知事会など地方6団体は2006年度までに3兆円の税源を地方に移譲する代わりに、中学校分(8500億円)の国庫負担金と、他の補助金計3兆2000億円を削減する案を決定した。最終的には小学校分の廃止も見込んでおり、同省は猛反対している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20041006/mng_____kakushin000.shtml