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小泉首相の靖国神社参拝など、歴史問題を巡る日中両国民の感情摩擦が深まる中、中国当局は日本に関する言論、報道を厳しく統制、「反日」的な論調とともに、歴史にとらわれすぎずに対日関係を再構築していこうと主張する「対日新思考」も封殺しようとしている。日中関係の悪化を避けつつ、独裁の統治手法、政権の安定も守ろうとする窮余の策だ。(北京で 杉山 祐之)
◆「導き」
中国国務院新聞弁公室の趙啓正主任(閣僚級)は最近、日中関係に関する中国での報道について、日本人記者団にこう語った。
「社会主義国家として我々はメディアを導いている。主要メディアでは反日的論調は見られないはずだ」
メディアへの介入を、当局がこれだけはっきり認めるのは珍しい。「中国は両国関係改善に努力している」という、なりふり構わぬメッセージだ。中国は、経済発展や台湾問題で大きな影響力を持つ日本との関係改善を急いでいる。
今の中国メディアは「好きに書かせたら反日一色になる」(中国外務省幹部)状態だ。趙主任はそうした中での「導き」の一例を挙げた。主任自ら、主要各社の編集責任者らに「少数の日本人の言論を、日本(全体)の言論と見なしてはならない。いいか」と念を押したという。
独裁システムに組み込まれているメディア側は「はい」と答えるしかない。報道現場では「一線記者の日本批判記事は、面倒を恐れる幹部が握りつぶす」(関係者)という。
旧態依然の世論誘導で、民衆の反日感情を抑えられる時代ではない。メディアが口をつぐめば、根拠のない情報、暴論がインターネット上で膨れあがる。
その対処でも、政権の発想は締め付けだ。趙主任は反日論の土壌・ネット掲示板について、「行政的手段」による規制を検討していることも明らかにした。
◆沈黙
消息筋によると、報道分野の最高責任者である李長春・党政治局常務委員は、「対日新思考」は政権の正式な方針ではないとの考えをはっきり示した。その背景には、「反日」を封じ、「新思考」を容認すれば、激しい反日感情が反政府感情に転じるのは間違いないという情勢がある。
「新思考」を支持していた知識人は「今は沈黙するしかない。何か言えば、売国奴扱いされる。当局ににらまれる恐れさえある」と声を潜めた。「新思考」は今や、一種の危険思想に近い扱いを受けているとも言える。
北京の男性会社員(34)は8月のサッカーアジアカップ決勝を前に若い同僚たちが「日貨(日本製品)ボイコットだ!」と無邪気に気勢をあげるのを見た。「昔と違って中日経済は一体化している。日貨ボイコットは中国の首も絞める」と思ったが、怖くて何も言えなかったという。
男性は自国の現状にため息をつく一方、「小泉首相には怒りを覚える。去年、『靖国神社に行かない』と言えば、中日関係は大きく変わったのに」と話した。
一昨年来、中国で大論争を巻き起こした「新思考」は、当面、潜伏せざるをえない状況にある。
(2004/10/3/02:35 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20041002id32.htm