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刑事裁判に市民が参加する裁判員制度の導入を定めた裁判員法の成立から約4カ月が過ぎた。5年後のスタートに向けて準備が進んでいるが、肝心の市民の理解は十分とは言い難い。
毎日新聞が先ごろ実施した全国世論調査(面接)でも、制度を「知っている」と答えたのは66%にとどまった。導入で現行の裁判よりよくなると思うか、の質問には「よくなると思う」が37%だったのに、「思わない」が54%と上回った。裁判員に選ばれた場合にやってみたいと思うか、との問いには、過半数の56%が「やりたくない」と回答。「やってみたい」は17%、「義務なのでやる」も24%に過ぎなかった。
だからといって、悲観的になることもない。健全な社会常識を裁判に反映させるという制度の目的が周知徹底されていない今、導入への期待感が高まらないのはむしろ当然と言えよう。民主社会では裁判への市民参加は義務と位置付けられ、先進諸国では常識として実践されてきたことも十分に承知していなければ、負担ばかりが気に掛かるのも無理はない。
それでなくても負担や義務は少ないほど好ましいと思うのが市民感情だろう。納税にしても、誰もが国民の義務と心得てはいても、税金は支払いたくないと脱税まで図る不届き者が後を絶たないのが現実だ。裁判員になりたくない人が多いことにも驚くべきではない。市民の前評判が良くないからと、導入に消極的になったり、懐疑的になるようなことがあってはならない。
世論調査結果からくみ取れる市民の反応や理解度を原点に、制度の意義と裁判員の役割を理解、浸透させる運動を国を挙げて展開しよう。すでに最高裁、日本弁護士連合会、法務省が初めて合同で啓発用のパンフレットを作成、配布を始めた。政府も今後、ビデオを制作したり、全国各地で模擬裁判やシンポジウムを開いて広報活動に力を入れる方針だ。
その際、裁判という一般の市民にはなじみのないテーマだけに、思い切って分かりやすく、アピールするように工夫することが大切だ。パンフレットにしても法律家の作ったものは、概して読む気をそそらない。時には漫画家やアニメ作家らの柔軟なアイデアを借りることも検討してはどうか。裁判所の見学会を頻繁に催し、現状の裁判がどのようなものなのか、を知ってもらうことも大切だ。
市民の理解を深めるためには、直接かかわらせるのが一番だ。まだ煮詰まっていない制度の細部を決める際には、市民を巻き込んだ論議を広げたい。一例を挙げれば、法服の扱いだ。裁判官は私心を捨て、厳正に裁くために着用するという。それならば裁判員にこそ着せた方が良さそうだが、最高裁が開いた模擬裁判員裁判では裁判官だけが着用した。その是非も幅広い議論を起こして決したい。
民主的な裁判を目指す制度がお仕着せにならぬように、市民の声を可能な限り生かしながら制度作りを進めたい。
毎日新聞 2004年9月25日 0時35分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20040925k0000m070168000c.html