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【奇っ怪ニッポン】
2004年9月2日 掲載
パンドラの箱を開けた全国知事会
http://www.gendai.net/contents.asp?c=025&id=15838
「私の議事進行に意見が有るなら動議を出して解任しなさい」との議長役を務める梶原拓・岐阜県知事の“恫喝(どうかつ)”が効いたのか、これぞ地方自治確立の千載一遇のチャンス、乾坤一擲(けんこんいってき)の精神で全国知事会として意思統一を、と胸張って提出した「筈(はず)」の「三位一体」改革案が、早くも各方面の抵抗に遭っています。
そりゃ、そうです。3兆円の税源移譲を、との大義名分を実現する為に、安直にも小中学校の義務教育費2.5兆円を対象としたのが、そもそもの運の尽きです。
「改革派」と目されてはいるものの、全国知事会では外様大名として存在の石原慎太郎、田中康夫の両名が反対の狼煙(のろし)を上げ、経済産業省の事務次官から転身の広瀬勝貞・大分県知事も共に反対陣営に加わりました。
彼も最後まで反対を貫いたのは、極めて象徴的です。天然資源に乏しいニッポンがニッポンたり得る上で不可欠なのは人財です。読み書き算盤(そろばん)の基礎教育が優れていたからこそ、ニッポンのモノ作り産業の現場は力強かったのです。
無論、ゆとり教育だの総合的学習だのと称する教育現場の迷走は、教員の資質低下と相俟(あいま)って、右だの左だの、上だの下だの一切関係なく、誰もが懸念している点です。が、だからって、税源移譲すれば問題が解決する訳ではない。これも自明の理です。
現に、既に税源移譲された学校図書館費は、殆(ほとん)どの基礎自治体で予算額が減少しているのです。次代を担う子供達の図書を購入する為の費用は、赤ら顔した議員諸氏の欲望を満たすべく、他の分野に充当されている、って訳です。
外様大名の反乱に怯(ひる)んだのか、中学校分の8500億円分だけ今回は計上、との修正可決案は逆に、理念も哲学も無い儘(まま)、霞が関で発言力が一番低い文科省の枠から取り崩し、地方自治体を遠隔操縦する我ら総務省の権益を増大させよう、との総務官僚の浅知恵を露呈させました。全国知事会の事務総長は歴代、総務事務次官経験者。早い話が、従来は親睦団体に過ぎなかった全国知事会は、総務省の「外郭団体」。
とは言え、好事魔多し。奇(く)しくも永田町では橋本龍太郎氏に代わって森喜朗氏が我が世の春。加えて彼は文教族の親分です。果たして真っ当なる教育論を彼が持ち合わせているか否か、神のみぞ知るとは言え、宰相・小泉純一郎は今回、苦渋の決断を迫られます。
が、今回、削減対象として公共事業費7000億円が加えられたのを一番北叟笑(ほくそえ)んでいるのは、財務省でしょう。有難う。自治体の首長が、従来型公共事業の在り方ではいけない、と宣言されたのですから、喜んで削減幅を増大しましょう。と早晩、最後通牒(つうちょう)を突き付けられる筈です。
果たして、その展開を予測した上で今回の議決に賛成した知事が何人居たのか?
財務省の高官は、精々が2人ですね、と微苦笑しています。梶原会長の下、“闘う知事会”を標榜(ひょうぼう)する構成員は、パンドラの箱を開けた人間魚雷集団として後世、語り継がれるでしょう。【田中康夫】