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民主党のジョン・ケリー大統領候補:ユダヤ系米国人の投票行動とパレスチナ自治当局の見方
(2004年8月19日掲載)
ケリー支持75%とのNJDCの世論調査結果
国民ユダヤ民主委員会(the National Jewish Democratic Council, NJDC)が2004年8月16日に公表したユダヤ系米国人の11月の大統領選挙戦に関する世論調査結果によれば、ケリー候補に投票するとの回答が75%、ブッシュ大統領に投票するとの回答が22%であった。対象者は11月に実際に投票すると見られる817名のユダヤ系米国人で、誤差の確率はプラス、マイナス3.5%とのことである。また2000年の大統領選挙戦では、今回の調査対象者の76%がゴア候補に投票し、21%がブッシュ候補に投票していた。因に、2000年の大統領選挙戦時の出口調査では、ゴア候補に投票したと答えた者が79%に対して、ブッシュ候補と回答した者は19%であった。
但し、今回の調査結果についてNJDCのライバル機関である共和党ユダヤ連合のマッシュー・ブルックス理事は「この世論調査は民主党の大統領指名全国党大会の開催中に行われたものであるので額面通りには受け取れない」「我々は、ブッシュ大統領が2000年の選挙時よりもユダヤ系米国人から投票されると強く考えている」と語り、調査結果を鵜呑みにしないよう促すとともに、ブッシュ人気に自信を見せている。
尚、NJDCの世論調査でのその他の判明事項は次の通りであった。
● イスラエル問題ではどちらが良いか?
→ケリー候補:66%、ブッシュ大統領:34%
● 米国は正しい方向に進んでいるか?
→正しい方向に進んでいる:23%、間違った方向に進んでいる:77%
● ブッシュ大統領の仕事振りを評価するか?
→評価する:25%、評価しない:75%
ケリー候補の中東問題作業部会委員長にメル・レビン元下院議員が就任
ケリー大統領候補は中東問題作業部会委員長に西ロサンゼルス選出の元下院議員で弁護士を務めるメル・レビン氏を指名した。1983年から1993年まで下院議員で外交委員会委員を務めたレビン氏が、現ブッシュ大統領の父親のブッシュ政権時代に時のジェームズ・ベーカー国務長官と中東政策を巡り衝突した一件は、未だにワシントン政界の語り草となっている。レビン氏を良く知る人々は、ケリー候補が同氏を中東問題作業部会委員長に指名したことは、同候補がイスラエルと同国の安全保障の強力な支持者であるとの明確な声明を出したに等しいと指摘している。
但し、レビン氏は同様にアラブ側の問題の解決にも情熱を傾け、ゴア元副大統領の要請を受けて、西岸経済の自立性を高めるための民間部門活性化イニシアティブとして知られる「平和の建設者」(Builders for Peace)の共同委員長を、アラブ系米国人のジェームズ・ゾグビー氏と共に務めた経験を持っている。
またレビン氏はつい最近まで米国イスラエル公共委員会(AIPAC)の役員を務めていたが、大ロサンジェルスユダヤ人連盟地域共同体委員会委員長に就任して以降、その活動を停止している。そのレビン氏は今回の大統領選挙では民主党はユダヤ票の80%を集めることはできないかもしれないと見ている。理由は、ブッシュ大統領もケリー候補も同じように親イスラエルであるからである。そこでレビン氏はユダヤ票を獲得できるかどうかの分かれ目は、教会と国家の分離問題といった国内問題になると考えている。特に、ブッシュ大統領の弱点と思われる「プライバシー権」「エネルギー自立」「保健」「環境」「社会サービス」といった諸問題が重要になると見ている。
ケリー候補の勝利に期待するパレスチナ自治政府?
当時のクリントン大統領が第二次キャンプデービッド交渉の失敗の責任をアラファトPLO議長に負わせたことに失望したパレスチナ自治政府の高官達は、前回の大統領選挙では密かにブッシュ候補を支持していた。父親のブッシュ大統領がアラブ諸国の問題に一定の理解を示していたからである。しかし、その後のブッシュ大統領の親イスラエルの政策を見る限り、結局彼らの期待は大きく裏切られてしまった。このためパレスチナ自治政府の高官達は、今回の大統領選挙では同様の失敗を避けようと静観の構えを崩していない。但し、それでも彼らは、ケリー候補が勝利した場合、中東政策がクリントン前大統領時代のものと似た公平性を持ったものになるのではないかとの密かな期待を抱いているようだ。
2004年8月中旬に中東地域を訪問したデニス・ロス元中東特使は、パレスチナ自治政府のクレア首相ほかの高官達と会談したが、その際非公式にケリー政権誕生時の中東政策を説明したといわれている。高官の一人は、民主党政権となればパレスチナ自治政府に理解を示す米国務省が主役の座を取り戻し、国家安全保障問題担当官や国防相は脇に追いやられると見ている。尚、パレスチナ自治政府の中には、ケリー政権誕生時にはデニス・ロス氏が中東特使として復活することを望む人々も少なくないといわれている。
(エネルギー・環境室長/主任研究員 畑中美樹<はたなか・よしき>)
http://www.idcj.or.jp/1DS/11ee_josei040819.htm