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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040716/mng_____kakushin000.shtml
日歯連裏献金
激震橋本派、揺らぐ自民
日本歯科医師連盟(日歯連)の献金還流疑惑は、自民党の吉田幸弘前衆院議員が逮捕されたのに加え、最大派閥・橋本派にも、裏献金一億円が渡っていたことが明るみになった。昭和から平成にかけて権力をほしいままにしてきた同派だが、参院選の大敗に続いて発覚したスキャンダルは致命傷になりかねない。そして、それは一派閥の問題にとどまらず、自民党全体へも直撃弾となった。 (政治部・自民党取材班)
橋本派は、田中派→竹下派→小渕派の流れをくむ。領袖は変わり、派内での激しい権力闘争の末に分裂を繰り返してきたが、約三十年の間、ある時は首相、ある時は党幹事長といった政権の中枢を占めてきた。
しかしここ数年は、精彩を欠いている。民主党の小沢一郎前代表代行、自民党の故・梶山静六元幹事長、野中広務元幹事長らの剛腕政治家が去っていったこともあるが、二〇〇一年に小泉純一郎氏が「派閥政治打破」を訴えて首相に就任したことも大きかった。
十一日の参院選では、上杉光弘元自治相ら同派所属の現職六人が落選、九十三人だったメンバーは八十七人まで落ち込んだ。自民党は参院選で目標の五十一議席に二議席及ばなかった。計算上は、橋本派が普通の選挙結果を残していれば、目標は軽くクリアしていたことになる。橋本派の不振は参院選敗北の最大要因だったともいえる。
勢力拡大中の森派との差は十まで接近。もはや「橋本派支配」などと言う者は、いない。
同派が長年培ってきた力の源泉は、「数、組織、カネ」。業界団体などとのパイプの太い議員がごろごろいて、その議員が窓口になって献金や選挙の応援を受け、同志の数を増やしていった。
今回の裏献金は、自民党有数の“タニマチ”である日歯連が擁立する中原爽参院議員の当選を確実にするためだったとされる。
ある意味で、この派閥らしい出来事ともいえる。
「低落傾向が続く中、新しい手法で選挙をするのでなく、従来の方法で威信回復を図ろうとした。その一つが今回のことかもしれない」と別の派閥のベテラン議員は分析する。
派閥会長の橋本龍太郎元首相は十五日、個人事務所を慌ただしく出入りし、事実関係をただす記者団に「私の知るところではない」などと繰り返すのみ。前日は参院選敗北の責任をとって会長職を辞める意向を示していたが、この日は「何か私に責任がありますか」と言い残し事務所を去った。
会見に応じた津島雄二事務総長は派閥が一億円を受け取ったことは認めた。が、だれが、いつ、どのような状況で行われたのかは「確認していない」を連発。会計担当者による事務的なミスであることを強調し、事態沈静化に躍起になった。
だが、今回の献金は、一億円と高額だ。事実関係を説明せず、その責任をあいまいにしたままでは、国民は釈然としないだろう。
同派幹部も「確かに金額が大きすぎる。事情は分からないが」と、説明が十分でないことを暗に認めている。
参院選では、小泉首相による「ワンフレーズ・ポリティクス」が、重要政策について説明を怠ったと批判され、それが敗因の一つとなった。
そして敗北の責任を明確にしないことにも、国民から厳しい目が向けられ始めている。
この日、橋本派がとった対応が、参院選以来、自民党に向けられる「説明責任を果たさない」「責任を取らない」という指摘と同列に映るとしたら、自民党の再生は一層困難になる。
記者団から矢継ぎ早に質問を浴びた津島氏は、最後に苦しそうにつぶやいた。
「まことに残念。こういうことはない方がいいです」