★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 政治・選挙4 > 527.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
言語感覚を疑う小泉と自民党の「この国」(萬晩報)
http://www.asyura2.com/0406/senkyo4/msg/527.html
投稿者 シジミ 日時 2004 年 7 月 15 日 19:54:21:eWn45SEFYZ1R.
 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 20,000部発行 □□

■萬晩報 コラム配信ジャーナリズム■ http://www.yorozubp.com/
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

言語感覚を疑う小泉と自民党の「この国」

          2004年07月15日(木)萬晩報通信員 成田 好三


 7月の参院選は、昨年11月の衆院選と同じ結果に終わった。さんざん騒いだ
あげくに何も変らなかったからである。

 先の衆院選でも今回の参院選でも、自民党は改選議席を確保出来なかったが、
連立相手の公明党の協力で与党としては安定多数(衆院選では絶対安定多数)の
議席を得た。民主党はともに大幅に躍進したが、退潮著しい社民党、共産党の議
席を奪った結果だった。

 メディアは2つの国政選挙の結果を、二大政党化が進んだなどと評しているが、
与野党の議席割合、政権の枠組みから見て、何の変化も起こらなかった。

 メディアは今回の参院選を「政権選択を問わない選挙」としていたが、これは
不思議な言い方である。政権選択を問わない国政選挙にはどんな意味があるのか。
その選挙で選ばれた議員、その議員で構成される院、つまり参議院にどんな意味
があるのか。

 政権選択を問わない選挙という言い方は、参院無用論(廃止論)に、論理的に
は直結するはずだが、メディアはそのことを理解した上でこの言葉を使っている
のだろうか。

 落語でいう「枕」はこの辺でおしまいにして、本筋に入りたい。本筋とは、政
治家、なかでも総理大臣や政権政党の言語感覚についての疑問である。

 参院選公示期間中、新聞やTVに頻繁に掲載され、放送された自民党の選挙広
告に強い違和感を覚えた。広告内容に文句があるのではない。小泉首相の写真や
映像に合わせて登場するキャッチコピー「この国を想い、この国を創る。」に、
もっと正確に言うと、「この国」という言葉に、強い違和感を覚えた。政治の最
高責任者である総理大臣と政権政党が、日本を「わが国」ではなく「この国」と
表現したことに、である。

 小泉首相と政権政党である自民党が、膨大な費用をかけた参院選の選挙広告の
キャッチコピーに選択したのだから、このキャッチコピーは相当優秀なコピーラ
イターが考え出し、大手広告代理店がよくよく吟味したした上で、最終的に選択
された言葉だろう。小泉首相と自民党は、「この国」という言葉に有権者へのメ
ッセージを込めたはずである。

 「この国」という言葉は故司馬遼太郎氏が多用した表現である。司馬氏が文藝
春秋に長年連載した巻頭エッセーのタイトルは「この国のかたち」だった。司馬
氏はこのエッセーの中で、日本を「わが国」ではなく「この国」と表現した。

 司馬氏が日本を「この国」と表現したことには幾つかの理由があるだろう。そ
のひとつには、出来るだけ客観的立場でものを見る上で、「わが国」では障りが
あると考えたからではないだろうか。明治から大正、昭和へと続く日本のダイナ
ミックな流れを、出来る限り「ニュートラル」に考え、分析するために、「この
国」という表現を多用したのではないだろうか。

 社会批評、歴史批判をする上では、当然の選択だった。客観的にものを見る、
「ニュートラル」の立場に立つといっても、完全な「客観」「ニュートラル」の
立場は存在しない。そのこと知っているからこそ、可能な限りの客観性、ニュー
トラル性を担保するために、司馬氏は「この国」という表現を多用したのだろう。
その後、「この国」は社会批評などの分野で多くの人が使う言葉になった。


 そして「この国」は政治家でさえ好んで使う言葉になった。政権政党が、政党
にとって最も重要なイベントである選挙のキャッチコピーにまで意図的に使う言
葉になった。しかし、社会批評、歴史批判と政治は同一のレベルのものだろうか。
社会批評は出来るだけの客観性を前提にする。誰かのため、特定の目的のための
批評など、読者は受け入れるはずもないからである。

 政治は、批評とは逆の立場にある。政治は社会批評での「客観」や「ニュート
ラル」を前提にしたものではない。自らの立場(政策・理念)を明確に説明した
上で選挙や議会で戦うのが政治であり、政治家である。

 日本政治の最高責任者である総理大臣と政権政党が、日本を「わが国」ではな
く「この国」と表現する。しかも、その表現に何の違和感も覚えないばかりか、
それが得票につながると考えている。だからこそ、自民党は参院選のキャッチコ
ピーに「この国」という言葉を使ったのだろう。

 民主党も参院選の選挙広告で、キャッチコピーではないが、「この国」と表現
していた。総理大臣も政権政党も、そして最大野党も、日本を「この国」と表現
している。政治権力者までもが、社会批評家のようなもの言いをする。そんな社
会では、日本を「わが国」と表現する日本人は誰一人としていなくなってしまう
のではないだろうか。(2004年7月15日記)

 成田さんにメールは mailto:narita@mito.ne.jp
 スポーツコラム・オフサイド http://www.mito.ne.jp/~narita/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご意見、感想: mailto:editor@yorozubp.com
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 次へ  前へ

政治・選挙4掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。