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小泉首相 軽くて重い『改憲発言』
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040630/mng_____tokuho__000.shtml
憲法解釈で「集団的自衛権」の行使は禁じられている。ならば憲法を改正し、「日本を守るために戦う米軍との共同行動」を可能にすればいい。小泉首相の言葉だ。この発言の翌二十八日、イラクでは自衛隊が「多国籍軍」に組み入れられた。改憲を待たずとも、現地で自衛隊が米軍指揮下で「共同行動」を取らされる恐れも出ている。小泉政権にとっての改憲とは−。
「要は、海外における米国の戦争で自衛隊が米軍と共同行動を取りたいという意味だ」。一見、分かりやすそうでいて、あいまいな今回の小泉発言について、そう読み解くのは軍事評論家の神浦元彰氏だ。
あいまいというのは「日本を守るため米国が日米安保条約で協力してくれる。日本を守るために一緒に戦っているのに(自衛隊が)米軍と共同行動できない」という趣旨のくだりだ。日本政府は、日本にある米軍基地や日本防衛のために行動している米艦隊への攻撃を自衛隊が「排除」するのは個別的自衛権の行使であり現在の憲法下でも「共同行動」は可能としている。
首相が「憲法を改正し」と言っている以上、現行で「違憲」に当たる「米軍との共同行動」となると、冒頭、神浦氏が指摘したような「海外で自衛隊が米軍とともに戦うこと」になる。首相はそこまで明言していないが、言葉を精査するとそんな「集団的自衛権」が浮かび上がってくる。
神浦氏は加えて、今回のような発言が出た背景について「“憲法解釈”でイラクへの自衛隊派遣を乗り切ってきたが、多国籍軍への参加はすでに“解釈”で逃げ切ることができない事態だ。集団的自衛権を認めないことには成り立たない」と説明する。
■日米安保条約の枠も超えている
法政大の永井憲一名誉教授(憲法学)も「多国籍軍への参加は、すでに『日本を守るため』という日米安保条約の領域さえ超えている」と強調する。
内閣法制局は、多国籍軍の参加に際して「指揮権」が確保できるなら合憲との“お墨付き”を与えているが、永井教授は「世界各国の軍の中の一つとして行動し、多国籍軍の意思に従うことになる。『個別的自衛権』を踏み越えるものだ。自衛隊のイラク派遣以降、憲法が全く想定していないところまできている。政府は憲法を改正するしかないという既成事実を積み上げてきた」と指摘する。
■サマワ治安維持自衛隊も可能に
一方、改憲で「集団的自衛権」が明記された場合には、現状を追認する以上のことが可能になる。
神奈川大の佐藤司名誉教授(憲法学)は「例えばイラクでは、治安維持活動ができる。“非戦闘地域”ではない地域で、米軍とともに軍事作戦を行うことが可能になる」と指摘する。
具体的には、来年三月にも想定されるサマワからのオランダ軍撤退後、自衛隊が治安維持活動を肩代わりすることもありうる。
政治評論家の森田実氏は真意を、こう推測する。
「米国のアーミテージ国務副長官が推進するのは、米国の言う通りに行動する日本だ。小泉首相はあいまいな言葉で、日米一体化の方向を出したいのだろう。集団的自衛権を行使するというのは、どこへ行っても米国と行動するということだ。憲法改正のねらいは米国の従属国になることだ。“マッカーサー憲法”から“アーミテージ憲法”への転換といえる」
アーミテージ氏は国務副長官就任前、日米関係に関する超党派の研究会の座長を務め二〇〇〇年十月に、「アーミテージ報告」を発表した。十六人のメンバーの中にはウルフォウィッツ国防副長官、ケリー国務次官補ら現在の政権幹部とともに前クリントン政権のスタッフらも名を連ねる。
■米英モデルに“解禁”を迫る
同報告書は「日本側による集団的自衛権の禁止は、日米同盟協力の制約となっている。この禁止事項を撤回することで、より緊密で有効な安全保障協力が可能になるだろう」と、集団的自衛権“解禁”を迫る内容となっている。さらに「米英の間の特別な関係を米日同盟のモデルと考える」とも明記している。
今年二月二日に日本記者クラブで講演したアーミテージ副長官は「今日、報告で展望したことの多くが現実となった」と発言している。日本国内の改憲論議についても触れた。
「集団的自衛権をいかに扱うかを議論する上で、憲法改正論議が今日ほど真剣に行われたことはない、と言える。集団的自衛権は、国際社会の多くの人々にとっては常識的な考え方であり、明らかに日本でもそう考える人が増えている」
さらに続く質疑応答では「集団的自衛において、日本に対しどのような役割を期待しているのか」という質問に答える形で「もう少しの柔軟性」「もう少しの公平な関係」を挙げた。
森田氏は、小泉首相の強気な姿勢の背景に、そんな米国の後押しとともに「世論」の存在も見る。「憲法改正を言えば、支持が増えると考えている」
確かに憲法改正に賛成する人の割合は、読売新聞の四月の調査で65%、朝日新聞の五月の調査で53%といずれも過去最高となっている。本紙加盟の日本世論調査会の一月調査では容認、積極派を合わせると82%に上る。この世論を盾にして、選挙戦略として「改憲」を持ち出したと、政治評論家の浅川博忠氏はみている。
「民主は寄り合い所帯なので、改憲の話で突っ込んでいくと、旧社会党グループと自民離党組は互いに疑心暗鬼になってくる。分裂もあり得るとみて、揺さぶりをかけているのではないか。連立パートナーである公明へのけん制の意味もある。選挙協力で自民が公明に頭を下げなきゃいけない構図から、むくむくと頭を上げ、イニシアチブをとろうとしている」
選挙後には、「憲法改正」が政権の看板の一つになることもあり得ると言う。「郵政と道路公団だけでは色あせてくる」
森田氏はこの現状から、民主党に注文を付ける。
「今の時期に憲法改正は米国の要求通りの改正にしかならない。民主は菅体制のときに改憲を打ち出してしまったから、争点にしにくい。今からでもいいから、岡田代表は『前体制の不明だった』と改憲は間違いだと明言するべきだ」