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(回答先: Re: 無実信じ今後も闘う「あきらめないで」支援の元ボクサーら( 投稿者 通りかがり 日時 2004 年 8 月 28 日 01:15:13)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20040828k0000m070172000c.html
静岡県の旧清水市(現静岡市)で66年6月、一家4人が殺害され、放火された「袴田事件」の即時抗告審で、東京高裁が強盗殺人罪などで死刑が確定している元ボクサー、袴田巌死刑囚の再審請求を棄却した。弁護側が提出した新証拠は確定判決を左右するものではない、との判断だ。
結論はともかく、静岡地裁が再審請求を棄却してから10年、再審請求からだと23年もたってからの決定とは、いかにも遅い。逮捕から死刑確定までに14年を要していることも見落とせない。抗告審では有力な物証とされる着衣に残された血痕についてDNA鑑定が実施されたが、判定不能に終わっている。年月がさほど経過していない段階なら新証拠となり得た可能性を否定できないだけに、裁判の長期化が真相究明の手立てを封じたとの見方もできる。
この間、袴田死刑囚は拘禁反応による精神状態の悪化が進んでいる、と伝えられている。長期間、死刑執行の恐怖におびえながら過ごしてきたことが一因となったことは間違いない。38年間に及ぶ拘置の是非は、人権面からも問い直されてしかるべきだろう。
本件では、取り調べで犯行を自供したとされる袴田死刑囚が静岡地裁の初公判で否認に転じた後、自白強要の違法性や捜査のずさんさが次々と指摘された。犯行を認める供述調書が45通も作成されたのに、同地裁は自白偏重捜査によるものと批判して44通を証拠採用せず、残る1通だけを有罪の有力証拠と認定するという異例の展開ともなった。
この経緯が捜査への信頼を損ねたことだけでも、当時の捜査当局の責任は重い。偶然なのか、同県警は本件の前に、死刑判決確定後に再審無罪となった島田事件などの誤認逮捕や捜査ミスを連発させ、社会の批判を浴びていた。本件捜査では汚名返上のため科学捜査を駆使したと強調されたが、その実は戦前の自白偏重主義から脱却できていなかったに違いない。
振り返れば、これまでに死刑判決の確定後、再審無罪となった免田、財田川、松山、島田の各事件でも自白に頼った強引な捜査が冤罪(えんざい)を招いた、と批判されてきた。自白重視の捜査が冤罪の温床であることも、繰り返し指摘されてきた。これは過去の問題ではすまされない。捜査当局は多くの反省や改善を踏まえているとはいえ、今も密室で被疑者の取り調べを続けており、自白を強要される危険性はふっしょくされていない。
この際、取り調べの録音、ビデオ録画による捜査の透明化を一気に進めたい。本件でも、もし、取り調べ状況を客観的に判断できる録画などがあれば、自白の任意性、信用性を争って法廷で時間を費やす必要はなかったはずだ。裁判所が一貫して45通中の1通だけを証拠として採用したことの当否も明確になるに違いない。
2009年には市民による裁判員制度がスタートする。人権上も裁判を分かりやすくするためにも、改革は急務だ。本件の経緯が教える教訓を無にしたくない。
毎日新聞 2004年8月28日 0時37分