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プリペイド携帯と郵政公社メール【小倉秀夫のIT法のTopFront】
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[Weblog] / 2004-10-23 12:01:47
自民党が議員立法でプリペイド携帯を禁止する法案を提出することを予定しているというニュースが、相変わらずネット上だけで話題となっています。ファイルローグ事件の控訴趣意書でファイルローグとプリペイド携帯との対比をしたばかりなので、そのタイミングの良さに少々驚きです。さて、この件は2つの側面から考えられます。
一つは、手続き的な側面の話です。
プリペイド携帯がさまざまな犯罪の「道具」として活用されているということは以前から知られていました。しかし、携帯キャリアは、プリペイド携帯が犯罪の「道具」として活用されることを防ぐ実効的な措置を講じてきませんでした。購入者の身元確認を行っているといってみたところで、プリペイド携帯をネット通販している業者が大量仕入れできている以上、身元確認をされずにプリペイド携帯を使用することを可能とする「抜け穴」は、意図的にかどうかはわかりませんが、用意されていたといえるでしょう。
しかし、自民党においても、犯罪の「道具」として悪用されるプリペイド携帯の流通を規制するためには、その販売等を禁止する法律を新たに制定した上で、さらに一定の周知期間を設けなければならないということがわかります。これは、犯罪に用いられることが多い「道具」の所持や流通を規制する手段としては正に王道であって、Winny事件の時にしばしばアナロジーとして使われた「包丁」や「拳銃」は銃刀法などの「道具」を対象とした規制立法によって規制しているのです。これであれば、何をどのように販売したら有罪とされるのかということが、少なくとも弁護士に相談すれば、あらかじめわかりますから、業者としては、違法とされない方法で商売を行うことができます。
これに対し、Winny事件のように犯罪の「道具」として悪用されることを知っていながら提供を続けたから犯罪の「幇助」だなどといって逮捕・起訴されてしまうとなると、何をどのように販売したら有罪とされるのか、弁護士に相談しても、弁護士も回答に困ってしまいますから、業者としては、いつ自分が逮捕・起訴されるかわからない状態で商売を行わなければならなくなります。これでは、近代国家、特に資本主義を基本的な経済原則とする国家において必要とされる「法律なくして刑罰なし」という罪刑法定主義の機能をないがしろにしてしまいます。
もう一つは内容的な側面の話です。
犯罪の「道具」として悪用されていることが知られている商品を一律に禁止するということの妥当性です。プリペイド携帯は、犯罪の「道具」としても悪用されていますが、他方、犯罪の「道具」としての用法以外の用法にもしばしば活用されています。そういうものを一律に禁止してしまうというのは、やはり過剰規制なのではないかという気がしてなりません。昔から「馬鹿と鋏は使いよう」という諺があるとおり、「道具」というのは、使い方次第で、様々なメリットをもたらすこともあれば、デメリットをもたらすことだってあります。
また、犯罪者は、その時点で利用可能なだったからそれを利用して犯罪を犯したというだけで、それが利用可能でなかったら別のものを利用して犯罪を犯しただろうということは容易に予測が付く話です。つまり、犯罪に利用された特定の「道具」を禁止してみても、同種の犯罪は、別の「道具」を悪用することによって行われるから、それほど意味があることではないといえます。
しかも、プリペイド携帯の「問題」というのはおもに匿名性だったりするわけですが、発信者の匿名性が最大限守られている郵政公社メールは放置する、発・受信者の匿名性が守られているフリーメールも放置するというのでは、まさにバランスを欠いているというべきでしょう(なお、郵政公社メールがしばしば犯罪に悪用されていることは、グリコ森永事件の例を持ち出すまでもなく、明らかです。)。