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http://japan.cnet.com/special/story/0,2000050158,20075185,00.htm(1/2)
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000050158,20075185-2,00.htm(2/2)
Paul Festa and Ina Fried (CNET News.com)
2004/10/18 10:00 Trackback (7)
Microsoftはウェブブラウザへの関心は失せていないと主張するが、外から見る限りとてもそうは思えない。
Microsoftが、ブラウザの先駆者であるNetscape Communicationsに対する勝利を宣言してから、かなりの年月が経過した。また同社がInternet Explorer(IE)のフルアップグレード版をリリースしたのもだいぶ以前のことだ。同社に批判的な人々はいま、同社がかつて予言された通りに行動していると述べているが、その予言とは「Microsoftはブラウザ技術を取り込み、機能拡張を図るが、最終的にはそれを消滅させる」というものだ。
Microsoftはその考えを否定し、代わりにIEのアップデートに時間がかかっているのは、同社がIEの次期版の開発にそれだけ労力を注いでいる証であると主張している。Microsoftの計画がうまく運べば、同社はウェブブラウジングを全く新しい水準にまで押し上げる画期的な新機能を発表することになるが、それは多くの面でブラウザを完全に超越したものだろう。
これらの新機能は、現在「Longhorn」という開発コード名で呼ばれているMicrosoftの次期Windowsオペレーティングシステム(OS)のユーザーしか利用できない。そのため、これらの機能が顧客にとってOSをアップグレードする強力な理由を生み出すと予想されている。
MicrosoftのWindowsクライアントプラットフォーム/ドキュメントチーム担当ゼネラルマネジャー、Michael Wallentは、「ブラウザに関して我々が何も行なっていないというのは正確ではない」と述べ、さらに「私が率いる大人数のチームは、過去3年半の間ブラウザの開発に懸命に取り組んできた・・・我々はIEを見限ってはいない。我々はブラウザ市場を大変重視している。それはきわめて重要な市場だ」と述べている。
これまでウェブ開発者やネットユーザーらが一様に、Microsoftがブラウザをさほど重視していないのではないかとの疑念を抱いてきたのも無理はない。
Microsoftが最後にブラウザの大規模なアップグレードを行ったのは、2001年8月のことだ。同社は2003年夏にはMacintosh向けブラウザの開発を中止し、さらに今後新しいスタンドアロンのIEは出さないと発表した。同社は今年の8月に、Windows XP Service Pack 2(SP2)の一部として新しいセキュリティ機能を追加したIEをリリースしたが、この新機能を利用できるのはXPユーザーだけだ。
かつては各種の標準に準拠しているとして賞賛されたIEだが、今やウェブ開発者からは時代遅れと非難されている。一方、同ブラウザがCSS(Cascading Style Sheets)やPNG(Portable Network Graphics)画像フォーマットといった基本的なウェブ技術の標準をサポートしていない点や、タブブラウジングのような人気機能を搭載していない点について、これを非難する声が上がっていた。
この論争の中心には、IEが一般的に考えられているような単体のソフトウェアではなく、単にWindowsの機能の1つに過ぎないとする、Microsoftの長年の主張がある。同社は待望のLonghornを皮切りに、今後リリースするWindowsの新版で、ウェブブラウザの機能を各アプリケーションの奥深くに組み込み、IEではなくWindowsのインターフェースこそコンピューティングエクスペリエンスの中心にあることを改めて強調するだろう。
「(Microsoftは)リッチアプリケーションの開発が、クライアントの側に移行するのを見たいだろう」と、Xamlonの創業者兼CEO(最高経営責任者)Paul Coltonはいう。XamlonはMicrosoftがLonghornで採用しているのと同じアプローチを採る開発ツールを提供している。「(Microsoftが)支配しているのはデスクトップで、インターネットではない」(Colton)
収益の大半をWindows OSとOfficeアプリケーションスイートの販売から得ているMicrosoftは、ウェブブラウザがこれらのビジネスを脅かす可能性があることを認めたがらない。しかし何年も前に、コンピュータ業界やウォール街では、高度な機能を備えたウェブとブラウザが登場すれば、OSとデスクトップアプリケーションの重要性が大幅に低下し、消費者が両製品から離れていくことにもなりかねない、と考えられていた。
こうした可能性は、たとえばウェブメールなど一部の分野で現実となった。Microsoftは早くからその脅威を予想し、1997年にはHotmailを買収している。
さらに包括的にいうと、MicrosoftはNetscapeが体現するウェブの脅威に直面していた。Netscapeはかつてブラウザ市場で85%以上のシェアを占めていた。MicrosoftはSpyglassからブラウザ技術を買収し、これを元にしてIEを開発し、後に裁判所から独占禁止法違反と認定されることになる容赦ない行動で、Netscapeを早々に葬り去った。その結果、IEはブラウザ市場の95%以上のシェアを占めるまでに至った。
Microsoftは独占禁止法違反で有罪判決を受けたものの、ブラウザ戦略の本質部分は損なわれることのないまま、法廷での試練を切り抜けた。
批判者らは法廷の内外で、Microsoftがブラウザ市場の独占を目指すのは、「(競合技術を)embrace(取り込み)、extend(拡張して)、extinguish(消す)」戦略によって、開かれたウェブからの脅威を失くそうとしているためだと非難した。Microsoftは、ブラウザ技術に業界標準を超える拡張を行い、ウェブ開発者らに自らのサイトを業界標準ではなくIEに対応させるように仕向けることができた。その結果、IE以外のブラウザは重要なサイトを表示できなくなり、IEの独占状態が続くことになる。
IE離反者
Microsoftは、W3C(World Wide Web Consortium)が発表した標準のサポートを呼びかけるウェブ開発者らの大規模な反対運動を乗り切った。現在、その開発者らは、IEを捨てMozilla FoundationのFirefoxのような標準に準拠したブラウザを積極的に利用するようネットユーザーに呼びかけている。
しかし、おそらくそれ以上にIEの評判を傷つけたのは、米国の公的コンピュータ監視組織US−CERT(US Computer Emergency Readiness Team)をはじめとするセキュリティの専門機関が、IEの利用に伴う危険性について警告を発したことだろう。(CERTはSP2でセキュリティ機能の強化が図られた点を高く評価したが、Windowsユーザーの半数は、料金を支払ってXPにアップグレードしなければ、それらの機能を利用することはできない)
IE排除の姿勢を貫き、IE以外のブラウザに対応しているウェブが全体でどのくらいの割合に上るのかは定かでない。ウェブサイトに関するいくつかの統計は、Microsoftの市場シェアの急速な落ち込みを示唆しているが、いまのところウェブ全体でIEの利用が大幅に減少したとの調査結果はない。
IEに大幅なアップデートがなされないなかで、MicrosoftはIEの市場シェア、特に消費者の行動によって測られるシェアについて、さほど気にしていない振りをしているとの見方もある。
「Microsoftがブラウザを幾分軽視してきたことは、現時点では疑いようのない事実だ」と、市場調査会社RedMonkのアナリスト、Stephen O'Gradyは語る。同氏はさらに「FirefoxやMozillaが注目を集めているにも関わらず、Microsoftは依然として自社の市場シェアがさほど急激に落ち込んではいないという事実に目を向けている。確かに消費者は問題だ。Googleのツールバーなどをすすんで利用しているのは彼らだ。しかし、Microsoftは依然として売上の8割を企業顧客から上げており、企業顧客こそ同社の最大の関心事であり、同社が守ろうとしているものだ」と語った。
Microsoftは、企業向けコンピューティングと消費者向けコンピューティングのどちらにおいても、ブラウザの影響力を弱めるウェブのベース技術--なかでもWindowsベースのシステムに有利な技術の開発に、人的および経済的な資源を注いでいる。
たとえば、MicrosoftはLonghornで、現在ブラウザで行なっていることをより良い方法で行なえる全く新しいWindowsアプリケーションを作り出したいと考えている。Microsoftは2003年10月に行われた開発者会議でLonghornを発表した際、そのようなプログラムがどう機能するかを見せるためのデモをAmazon.comに行わせた。MicrosoftがAmazonに提供したカメラショップのプロトタイプでは、Amazonのデータベースが利用可能だったが、これまでのAmazonの店舗に比べてはるかに双方向性に優れ、見た目にも使いやすいデザインになっていた。
各企業は、Microsoftの新グラフィックエンジン「Avalon」やXAML(Extensible Application Markup Language)を使用することにより、インターネット上で容易にデータのやりとりが行えるWindowsアプリケーションを開発できる。それらのアプリは単独で動作したり、あるいはブラウザの中で実行させることも可能だが、ただしWindowsを搭載したコンピュータ上で動かすことが条件となる。
「2001年にAvalonの開発に着手した際、我々はアプリがブラウザの中で実行されるか、外で実行されるかの区別をなくしたかった」とMicrosoftのWallentは語る。
同氏によると、Microsoftは大半のウェブサイトが一気にブラウザなしでも閲覧可能になるとは考えていないという。ニュース、株価、ショッピングなど、ウェブ上で最も利用度の高い情報は、Longhornにおいてもブラウザを通して利用されることになりそうだ。
Wallentは、Microsoftは、すでにデスクトップソフトを開発した企業がいっそう簡単にインターネットに接続できるようにしようとしているという。さらに同社は、Ofotoなどのフォトサイトがすでに行なっているように、顧客のコンピュータ上でいくつかの追加ソフトを実行させたいと考えているウェブ企業も支援する。
ColtonがCEOを務めるXamlonも、基本的にMicrosoftと同じ構想を描いている。XamlonはLonghornの発売に先駆け、自社版のXAMLを発売しようとしている。Xamlon版XAMLで開発されたアプリケーションはブラウザ内でも実行可能だが、対応OSはWindowsのみで、対応ブラウザも現時点ではIEに限られている。
Coltonによると、このようなアプローチがMicrosoftに好都合なのは事実だが、同時に消費者や企業にも利益をもたらすという。「ユーザーエクスペリエンスは向上している。それは事実だ」(Colton)
Microsoftもそのようなアプローチを擁護している。
Wallentは「我々はインターネットを私物化しようとしているわけではない」と述べた上で、Microsoftにはこれまでの方針を転換し、全てのウェブ資産を集めて、Avalonに結集させるつもりはないと語った。
無論、標準に準拠したブラウザを搭載したOSはどれも似たり寄ったりであるため、ごく少数のインターネット企業がWindows専用ツールを提供するだけで、Windowsには十分な援護射撃となる。
ブラウザの脅威
一方で、今日OSが処理しているタスクをブラウザが行うケースが増えている。これは長年、ブラウザがもたらす脅威と考えられていたものだが、Googleが事業範囲を従来の検索や電子メールからブラウザやインスタントメッセージ(IM)にまで拡大し、基本的にWindows搭載PCとWindows以外のOSを搭載したPCのどちらでも利用可能なプラットフォームを提供する可能性があるとの噂が流れたため、その脅威に対する懸念に再び火がついた。
「Googleなど(Microsoft以外)の企業が、ブラウザ上で動作するだけでなく全てのプラットフォーム上で利用可能な豊富なアプリを提供できるのであれば、それは考慮に値することだ」とColtonは述べ、さらに「そうした事態になれば、Microsoftは(最初のブラウザ戦争の)出発点に引き戻されることになる」と語った。
Wallentは、将来OfficeやAutoCADのようなプログラムが、種類を問わず全てのコンピュータ上で簡単に動作するよう設計される日が来るとは懸念していないという。「そのビジョンを完全に信じることはできない」(Wallent)
しかし、MicrosoftがIEにどれほどの労力を注ぐつもりなのかは依然として不明だ。
MicrosoftがAvalonやXAMLを重視していることを考えると、Longhornが同社の期待通りの性能を発揮すれば、IEの重要性は失われることになる。そういうIEのために研究開発の投資を行う価値があるか否かは疑問だ、とO'Gradyは指摘する。
O'Gradyはさらに、これまでMicrosoftがブラウザを軽視してきた程度についても疑問を投げかけた。
O'Gradyは「私は未だに全く理解できない」と述べ、さらに次のように続けた。「Microsoftが(IEに)タブブラウジングのような新機能を少しでも追加していれば、現在同社が受けている批判の多くは自動的に根拠を失っていただろう。技術的な問題については分からないが、Microsoftほどの巨大企業になぜそれができないのかが理解できない。あえて結論づけるとすれば、Microsoftにとってブラウザはかつてほど重要なプラットフォームではなくなったということだろう」