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Yoichi Yamashita2004/8/2
インターネットは距離のカベを解消し、様々な分野で国境という仕切りをあいまいにしている。それは戦争も例外ではなく、サイバー戦争をこれまでのような国と国の関係で捉えると思わぬ落とし穴にはまってしまう。デューク大学の政治学部教授Peter D. Feaver氏とNCIS(Naval Criminal Investigation Service)のKenneth Geers氏が「サイバー・ジハードと戦争のグローバル化」という、コンピュータネットワークで展開する戦争を取り上げた講演を行った。
サイバー戦争における主な攻撃手法は、DoS(Denial of Service)とWebページの不正改ざんである。Geers氏が示した統計結果では、Webサイトへの攻撃の理由の34%は「面白いから」、13.7%は「破壊者としてトップになりたい」、11.4%は「チャレンジ」と大多数を個人的な理由が占めている。その一方で「愛国心」が10.5%、「政治的な理由」が10.1%と、政治がらみの動機も存在感を示し始めている。
サイバー戦争に参加する人たちの結びつきは国だけではなく、思想や宗教、そして感情も影響している。ある国の国民が他国民ねに協力するのはめずらしいことではなく、またインターネットにつながっているコンピュータを持っていれば、いつでも、どこでも、そして誰もがボランティアとしてサイバー戦争に参加できる。
サイバー戦争の脅威を感じさせるのは、現在の中東情勢である。一つのハッカーグループにおける、専門的な知識を持ったコアなメンバーは100人にも満たないそうだ。だが、「ハッキングのアイデアを宣伝し、ツールを配るのには十分な数で、SETI@homeのように、ボランティアがコンピュータの計算力を提供することで強力な攻撃力を得ている」とGeers氏。
使用しているツールや攻撃の方法は似ているが、イスラエル支持者の場合、テロリストや過激派のWebサイトを優先し、次に政府関連のサイトを攻撃する。一方、パレスチナ支持者は、政府のサイト、次にテクノロジ、通信、メディア、金融などの企業をターゲットにする。ターゲットのタイプは、Webサーバ、Eコマース・サーバ、メール・サーバ、IRCチャンネル、WWWチャットルーム、ドメインネーム・サーバ、インターネット・サービスプロバイダー、FTPサーバなど。
敵対するグループを貶めるような情報を流すのも用いられる戦略の一つ。例えばイスラエル支持者が「Hizballah」のWebサイトに対して、Hizballa.comやHizbulla.comなど、ネットユーザーがよく間違えるスペルのドメインネームを取得して、偽情報を流す。
勢いという点ではイスラエル支持者に軍配が上がるが、パレスチナには攻撃の対象となるサイトが少ない。逆にイスラエルは接続数で他のアラブ諸国の総計を上回るほど、インターネット環境が充実している。パレスチナ支持のハッカーにとってイスラエルはターゲットが豊富で、過去にイスラエルのEメールシステムの半数が数日にわたって麻痺させられたことがあるなど、手痛い攻撃を受けている。
サイバー戦争の攻撃ターゲットになった政府として、イスラエルやパレスチナのほか、イラン、レバノン、マレーシア、カタール、アラブ首長国連邦、そして米国などが挙げられた。米国の場合、国際政治で最も影響力のある国であり、最大のITインフラを備えた国でもある。だが、セキュリティは決して万全ではない。「核兵器が配備された直後のような不安定な時期に思える」とGeers氏。また、セキュリティという観点では、米国の自由競争、言い換えれば自由放任も弱点と言わざるを得ない。少なくとも、セキュリティ意識を高め、例えば十分なセキュリティ対策を行っていない企業や組織には厳しい罰金を科すなどの法的処置が必要になると指摘する。
では、サイバー戦争は現実の戦争の引き金になるのだろうか?
現状では、サイバー攻撃は国際的な事件や出来事に反応する形で起こっており、その逆は現実的ではない。だが、政府がコントロールを失うような事件が起これば、緊張感は高まるだろうとGeers氏は言う。むしろ、サイバー戦争においてリスクがあるのは企業である。ターゲットとして、そして戦闘員として、最前線に立たされているような状態だという。
企業にとっては、政治的な関係から、ある日突然最前線の放り出されてしまうのがサイバー戦争の怖いところ。状況もめまぐるしく変化する。かって米国はイスラエル支持のハッカーのターゲットだったが、今はイスラエルとの関係からパレスチナ支持のハッカーから狙われている。
日本も例外ではなく、豊富な対象があるという点では攻撃し易いターゲットである。国際政治の表舞台に出ていく限り、サイバー戦争の被害は対岸の火事とは言っていられない。
http://pcweb0.pc.mycom.co.jp/articles/2004/08/02/blackhat2/