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2004年10月30日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.294 Saturday Edition
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▼INDEX▼
■ 『from 911/USAレポート』 第169回
「ケリー勝利を前提にして」
■ 冷泉彰彦 :作家(米国ニュージャージー州在住)
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■ 『from 911/USAレポート』 第169回
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「ケリー勝利を前提にして」
アメリカの大統領選挙は、来週火曜日(11月2日)の投票日まで残すところ数日と
なりました。長い選挙戦の間に様々な情念に揺さぶられてきた世論は何度となく、大
きく振り子を左右に振ってきました。ですが、そんな緊張感の連続した日々も、もう
残り僅かです。さすがにここまで来れば、候補の一言や一つの事件で大きく情勢が変
わることは少ないでしょう。トレンドをひっくり返すには、もうほとんど時間がない
と言って良いからです。
私は、この時点ではケリー候補の勝利を前提にしてお話しを進めるのが良いと思いま
す。大統領選挙を具体的に見てゆくためにも、仮説や予想を持っていた方が理解しや
すいだろうというのが、理由です。また、過去4年間の政治から行動パターンが類推
できるブッシュ候補に比べて、ケリー候補に関しては「どう付き合うか?」というこ
とを関係諸国は考え始めたほうが良い、この点からも現時点では、ケリー勝利を前提
にして話し合っておくのが現実的でしょう。
さて、論戦のほうですが、10月28日の木曜日の現時点では、候補同士の舌戦は
「ES細胞研究」と「イラクでの400トンの爆薬紛失」という二点に絞られてきま
した。内政外交の全てについて議論すべき選挙戦ですが、最終段階ではどうしても
「目先」の印象を有権者に与えるために、話題が絞り込まれてしまうのが通例です。
まず、「ES細胞」については、クリストファー・リーブの死去というニュースに続
いて、パーキンソン病との闘病で英雄になった俳優のマイケル・J・フォックスが
「共和党の言動は患者の希望を奪うものだ」と発言するなど、ケリー陣営が攻勢に出
ています。
爆発物紛失というのは、イラクでフセイン軍が持っていた高性能爆薬400トン弱が
消えてしまった、というものでケリー・エドワーズのコンビが、この問題を取り上げ
て「現状の米軍の治安維持能力の欠如」だと厳しく批判していました。これに対して、
ブッシュ陣営では2日間ほど沈黙した後に、ブッシュ大統領自らが「爆薬の紛失は米
軍進軍前に起きた。だから米軍の管理責任はない」として「ケリーはウソつき」とい
う「反攻」に出ました。
この問題では29日の金曜日になると、バグダッド入城直後に実際に米軍が火薬庫の
鍵を破って、爆薬を確認しているVTR映像が流れました。「エンベッド取材」の報
道陣が撮影したというのですが、ブッシュ陣営からはブレマー前暫定統治機構代表が
出てきて「政治目的で軍を中傷するのは怪しからん。しかも本当の真実はヤブの中だ」
と語っていましたが、ビデオが出てきた以上、その後に紛失したというストーリーの
方が説得力を持つことになり、ブッシュはますます守勢に回った観があります。
そうした流れの中で、28日には「最後のお願い」ということで人気タレントが選挙
戦に合流、いよいよ大詰めというムードになってきました。ブッシュ陣営は、カリフォ
ルニアからアーノルド・シュワルツネッガー、ケリー陣営は歌手のブルース・スプリ
ングスティーンというのが、それぞれのゲストです。ただ、ここでもブッシュ側の守
勢が目立ちます。何故ならば、シュワルツネッガー知事はつい先週の時点でも「ES
細胞研究の推進」を公言している「中道」だからです。
ちなみに、中部の保守州にターゲットを絞ったスプリングスティーンのツアーは盛況
で、ウィスコンシンではパフォーマンスの後で、「オレの後について来いよ。投票日
前の投票に行ってケリーに入れよう」と呼びかけたら二千人の群衆がついてきたとい
うのですから、まあ派手なものです。
いずれにしても、とりあえず選挙戦の情勢を見ておきましょう。アメリカの大統領選
挙は、まず各州ごとに「候補者の誰を州として支持するか?」の選挙が行われます。
この選挙は「ウィナー・テイクス・オール(勝者が全取り)」方式と言われ、勝利し
た陣営がその州の選挙人数を全部取ってしまうことになっています。選挙人の数は今
回の場合は538で、同点ではダメですから勝敗ラインは270となっています。
例えば、全米で最大の州であるカリフォルニアでは、一票でも多く取った方が選挙人
数で55を獲得します。ということは、カリフォルニアを取れば、勝敗ラインの27
0のうち、少なくとも55を抑えたことになるのです。また、情勢が変わって55が
右から左へ動くということになれば、単純に考えて合計で110の差が生まれる、あ
るいは110の差が一気に縮まることになるのですから、大変です。
現時点での各報道機関の予測、そして世論調査をリアルタイムで追跡している団体の
資料などを総合しますと、10月29日現在での情勢はこうなっています。
まず、ブッシュ優勢の州とその選挙人数です。世論調査のデータなどを見て一応常識
的な線を取ります。アラバマ (9)アラスカ (3)アリゾナ (10)アーカン
ソー(6)ジョージア (15)アイダホ (4)インディアナ (11)カンザス
(6)ケンタッキー (8)ルイジアナ (9)ミシシッピー (6)ミズーリ
(11)モンタナ (3)ネブラスカ (5)ネバダ (5)ノース・カロライナ
(15)ノース・ダコタ (3)オクラホマ (7)サウス・カロライナ (8)サ
ウス・ダコタ (3)テネシー (11)テキサス (34)ユタ (5)バージニ
ア (13)ウェスト・バージニア (5)ワイオミング (3)以上、ここまでブッ
シュが固めたのが26州、選挙人数として(218)ということにしておきましょう。
今度は、ケリー優勢の州とその選挙人数です。カリフォルニア (55)コネチカッ
ト (7)デラウェア (3)ワシントンDC (3)イリノイ (21)メーン
(4)メリーランド (10)マサチューセッツ (12)ミネソタ (10)ニュー
ハンプシャー (4)ニューヨーク (31)オレゴン (7)ロード・アイランド
(4)バーモント (3)ワシントン (11)ウィスコンシン (10)以上の
合計が15州(+ワシントンDC)で(195)です。
さあ、残りが激戦区「バトル・フィールド・ステート」ということになります。列挙
しておきましょう。コロラド (9)フロリダ (27)ハワイ (4)アイオワ
(7)ミシガン (17)ニュージャージー (15)ニューメキシコ (5)オハ
イオ (20)ペンシルバニア (21)これら9州を合計すると(125)です。
この中から、フロリダ(27)とニューメキシコ(5)は一旦除外しておきましょう。
この両州は(他の州もそうなのですが、特にこの2州は)、最終的に大接戦が予想さ
れる一方で、結果がどうなろうと、両陣営ともに「負けた場合」は開票に「イチャモ
ン」をつけて法廷闘争に持ち込む準備をしています。基本的に一晩で結論が出ると考
えないほうが良いと思います。さあ、そうなると残りは7州で、選挙人数では(93)
ということになります。この7州を順に見ていきましょう。
まずコロラド(9)は特殊です。今回の選挙と同時に州法改正の住民投票があり、そ
の結果によっては「勝者全取り」方式から「比例配分方式」に変わる可能性が濃厚で
す。ちなみに現在も、メーン州とネブラスカ州では「ディストリクト方式」と言って、
下院の選挙区ごとに投票パターンを見て、選挙人数を割ることが可能なのですが、過
去には選挙人数を分配した例はありません。そのコロラドですが、ケリーやや優勢、
そして州法改正が成立するという前提で、ケリーに(5)、ブッシュに(4)として
おきましょう。
ハワイ(4)は、元来はリベラルな州でしたが、日本の長引く不況そして911以降
の観光需要の落ち込みなど、経済の苦境にあって、保守化していると言われています。
秋になって以来、軍需を確保してくれ、警備を厳重にしてくれそうな共和党に票が流
れており、この流れは変わらないようです。
私の住んでいるニュージャージー(15)、そしてお隣のペンシルバニア(21)に
関しては、ずっとスイング・ステート(どちらに転ぶか分からない州)と言われてき
ましたが、ここへ来てケリー優勢で固まってきたようです。
さあ、ここまでで集計してみるとどうなるでしょう。ブッシュは、(218)にコロ
ラド(4)とハワイ(40を足して(226)です。そして、ケリーは、(195)
には、コロラド(5)、ニュージャージー(15)、ペンシルバニア(21)で、小
計(236)ということになります。
さあ、残りは3州、アイオワ(7)、ミシガン(17)、オハイオ(20)の中部3
州です。この3州に関しては、世論調査では(例えば Zogbyなど)ずっと、ブッシュ
優勢だったのがここへきて全くの互角になってきています。世論調査データは、最終
的にはパーセント単位に丸めて発表されるのが通例ですが、この3州については、こ
こ数日のデータは完全に同率です。
他に発表されているデータとしては「投票するか未定」という層です。この未定層は
都市部では多く、中西部では小さくなっているのですが、中部ではだいたい「ケリー
支持者の3%、ブッシュ支持者の1%」が投票未決定だという数字が出ています。こ
の要因は要するに「投票率が上がれば互角のまま、下がればブッシュ有利」というこ
となのでしょう。
その他に変動要因としては「ケリー優勢のモメンタム(勢い)」という問題がありま
す。一連のTV討論以降、ブッシュは守勢に立ってジリジリ支持率を下げています。
票がケリーに流れて行く、そんな勢いが残り数日でまだ続くのなら、世論調査数字よ
りも更にケリー有利ということになります。
もう一つの要因は世論調査の方法です。どの調査も、地上回線の電話番号にランダム
に電話をして聞き取り調査をするということになっています。ということは、調査の
時間に地上回線の電話が取れる状態にいた人しか対象になっていない、ということで
す。となると、これは年齢的にも生活パターン的にもバイアスがかかったものと考え
ざるを得ないでしょう。どちらかと言えば、高齢者や地方の「意見」がより強く反映
されてしまうということになります。
となると、見かけの数字には逆にケリーの票を足して考えた方が良いと言うことです。
特に、問題になっている中部3州については、そのような観点で世論調査を見る必要
があるのでしょう。となると、この3州、合わせて選挙人数で(44)という数字は
そのままそっくりケリー陣営に流れる可能性が強いと思います。
仮にそうだとすると、ケリーは(236)+(44)=(280)で勝敗ラインの
(270)をクリアするということになります。更に開票がスムースに行ってトラブ
ルが最小限になった場合、この数字にフロリダ(27)とニューメキシコ(5)が乗
り、更にクリントンが遊説を再開した効果でアーカンソー(6)がケリーに流れたり、
ハワイが民主党に戻ると(322)、このあたりがケリーの上限でしょう。
先ほどの3州がソックリ全部ケリーというのでは極端だとして、仮にアイオワ(7)
がブッシュに行くことは想定しておきましょうか。これを日本の選挙予想に見られる
書き方で表してみると、仮にフロリダとニューメキシコで結果が出たとしてそれを足
すと、ケリー(280、ー7、+42)ブッシュ(260、ー42、+7)いずれに
しても、ケリーは当選ラインの270はクリアする、それが私の予想です。
プラス、マイナスというのは無責任という見方もあります。ならば、この際ですから
「直前予想」ということで、ケリー(322)ブッシュ(218)というのを今回の
結論にしておきましょう。一方的とまでは言えないものの、ケリーの「圧勝」という
可能性があるということです。この数字は奇しくも1960年に同じマサチューセッ
ツ選出の民主党上院議員として、大統領に当選したJ・F・ケネディの選挙に似てい
ます。この時は、ケネディ(303)、ニクソン(219)という結果でした。ちな
みに投票人数ではなく、単純な得票率で比較すると、ケネディ(49.72%)、ニ
クソン(49.55%)という僅差でした。今回も得票率としては同じような僅差に
なる可能性があります。
勿論、以上は全て数字のゲームといわれればそれまでです。ですが、こうした数合わ
せを前提にして、アメリカという社会は次の4年間を選択してゆくことになります。
日本時間で来週の水曜日、大勢が判明した時点では、以上の仮説を前提に結果を見て
行くことにしたいと思います。その決まり方の中に、次の4年間にアメリカがどの方
向に向かってゆくかの方向性も見えてくるのだと思うからです。
(追記)中越地震に関しては、被災者の方々へお見舞いを申し上げるしかありません
が、私の教える米国ラトガース大学の日本語クラスの学生の有志から義援金を送りた
いという申し出があり、日本赤十字の新潟支社を紹介しました。今回の被災に対して、
米国政府からの義援金は5万ドルという少額ですが、民間には様々な善意があるのだ
と思います。大統領選は確かに大きな事件ですが、政権が変わっても変わらなくても、
民間ベースの日米関係というものは、長い時間と大勢の人々の交流によって、綿々と
維持されて行く、それもまた大きな事実だと思います。
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冷泉彰彦:
著書に
『9・11(セプテンバー・イレブンス)ーあの日からアメリカ人の心はどう変わったか』
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