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リストラなし 全員野球 現有戦力でV 光った落合流統率力【東京 核心】
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20041002/mng_____kakushin000.shtml
落合博満監督率いる中日ドラゴンズが一日、五年ぶりにセ・リーグの頂点に立った。球団合併やストに揺れた節目の年を制したのは「リストラなき全員野球」。各選手が持ち味を生かし、それぞれの居場所を得る−。そんな地味で当たり前の姿に、教育評論家や労組幹部らが目を見張った。トレードやFA(フリーエージェント)に頼らないチームづくりは、労使交渉で浮上した球界の構造的な問題解決への道しるべにもなりそうだ。 (名古屋社会部・中村 清)
■教育的快挙
リーグ優勝を決めたこの日、「七番右翼」で先発出場したのは森章剛外野手。中日の七十選手のうち、一軍を経験した五十七人目の選手だ。十二球団で最も多く、まさに「全員野球」で勝ち取った優勝だった。
「落合監督の選手起用法は、教育論的にも理にかなっているんです」
教育評論家の尾木直樹さんは、こう指摘する。
今季の中日は一、二軍の合同キャンプを行い、選手が横一線でスタート。その中から各選手の長所が発掘され、育てられた、と尾木さんはみる。
「一人ひとりの個性を生かし、自己実現の場所を与えれば、人は大きな力を発揮する。プロ野球という競争社会で、そのことを証明した意味は教育的にとても大きい。快挙です」と驚きを隠さない。
人材育成論の研究に取り組む津村俊充・南山大教授は言う。
「時代の流れは、多様な個性が輝く社会をつくること。この点でベテラン、若手の異質な個が融合する落合ドラゴンズは、時代の方向性に合致している」
■中高年に自信
引退を撤回して巨人から移籍した川相昌弘内野手や、一球への執念で代打の切り札になった高橋光信内野手、守備力からレギュラーに定着した英智外野手…。
東京管理職ユニオン書記長の設楽清嗣さんによると、適材適所による“いぶし銀”の活躍は、日ごろ組織の歯車として働く中高年サラリーマンに大きな自信と希望を与えているのだという。
リストラの勢いは、一向に衰えを見せない。設楽さんは「中日の優勝が、現代日本のリストラ社会に明るさを与えてくれた」ときっぱり。
就任直後に解雇とトレードの一年間凍結を打ち出した落合監督。現有戦力の「10%底上げ」でチーム力を向上させたことに、失業対策に取り組む労組幹部らは大いに勇気づけられたという。
「どんな人にも能力や役割があるのに、日本の企業は目先でしか判断せず、安易にリストラしてきた。中日のような人材の生かし方を企業にも望みたい」。理想の経営者と企業像を、落合ドラゴンズに重ね合わせた。
■カネより戦略
元近鉄のローズ外野手などの大型補強で開幕に臨んだ巨人とは対照的に、新外国人選手の獲得もFA補強にも動かなかった中日。
前オリックス球団代表の井箟重慶(いのう・しげよし)関西国際大教授は「落合監督には現有戦力で十分に戦えるという自信があったからでは」とみる。
一方、スポーツライターの小関順二さんは別の見方だ。
「カネをかけずに優勝できるチームをつくった中日の戦略は、赤字体質に悩む球界にひとつの方向性を示したのでは」
シーズン終盤の労使交渉は、選手会と経営側双方に大きな課題を突きつけた。FAやドラフト、高額年俸による慢性的な赤字経営。中日の優勝は「カネよりも戦略が重要」との可能性を提示したというのだ。
詩人で元セ・リーグ連盟職員の清岡卓行さんは、中日優勝の意味を「野球愛」と「人間的信頼」という言葉で表現した。
「猛打賞」という言葉の生みの親でもある清岡さんは「監督と選手の間の野球愛が、みんなを突き動かした。チーム内の精神的な融和が、今季の中日の最大の魅力でしょう」と、しみじみ語る。
そして、続けた。
「人間的信頼が、チーム全体を貫いているように感じる。普段は誰もが顧みず、後回しにしてきたもの。その大切さを、深く、あらためて感じさせてくれました」