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台風が今年は上陸記録を塗り替えている。
だからと言うわけではないが、毎年思うことであるが、農作物に対する被害が、予想以上に大きいことである。
こちらは近くの田園地帯を回るだけでも、いろいろ農民の「精神状態」が見てとれる。
大阪・神戸の大消費地に近いためにハウス園芸が盛んだが、台風16号、18号で被害をこうむって骨組みだけになったビニールハウスだらけだ。もうどこも補修していない。したがってハウスの中の作物も枯れたまま放置されているのが外から丸見えだ。
次に田んぼを見て回る。8月中旬まで、生き生きと成長途中にあった稲穂が16号18号によりたてつづけに倒されている。8月の中旬のこととて、収穫まであと一ヶ月以上はかかるだろうと思われる未熟な実りだった。
今回16号と18号は東風が強く、そのため東側の山陰(やまかげ)部分以外の田んぼは稲が倒れている。それでも暑い日差しを受けてなんとかストップされた成長を、再び活力を戻そうとして懸命に生きようとしていた。なんとか15号、16号の影響から立ち直りつつあるかに見えていた。
このときの稲の状態について農家に聞いてみたら、倒れた稲は土につけば発芽してしまうということだった。
そしてやがて台風18号が塩害をもたらした。
播磨地方の光景は一変した。二日も経たずに樹木の葉っぱも街路の雑草もすべてが茶褐色に変色した。相当の塩害である。太平洋岸はだいたい台風の東側に当たったため、風速40メートル以上吹いたところも場所によってはあり、それが平野部奥地まで塩をもたらした。
緑色の稲が徐々に黄色く変化してゆく。艶っぽいこがね色ではないのだ。哀れな立ち枯れ草でしかない。稲の葉も穂も黄色になっている。
それでも根気よく観察していると、やがて1週間10日と経つうちに作付けされた田んぼの中心部や東側でないほうに緑色の部分が増えてきていた。稲はまだ塩害をこうむっても生きようとする。がんばれ、と思わず声援をあげたくなる。
それでも畦で区切られた東側部分で風をもろに受けている稲たちは、もはや往時の深緑色を取り戻すことなく、稲穂もろともに立ち枯れている。このところ見る限りでは炭化が始まってより茶褐色になってきた。これが田んぼの面積に対して10パーセント近くを占めている。
思えば小学生のころ九州小林の山中で朝顔の種を植えて発芽して葉が5、6枚出てきたころ、如雨露で水を撒き花の咲くのを楽しみにしていたものだ。友達が、「塩」をやるといいよ、と言ってくれたので、夕方塩を撒いて眠った。翌朝楽しみにしていた水撒きに言ってみたら、朝顔は葉っぱもろともに枯れていた。このとき塩が植物を枯らすことを知った。
仕事柄沖縄に5年ほど居たけども、沖縄の産業はやはりサトウキビだ。宮古島もキビ産業で成り立つ。パインなどとっくに外国ものに市場を奪われて20年前でもパイン工場は閉鎖していた。琉球新報や沖縄タイムズを読むと、パインの繊維やサトウキビの繊維も乳牛の粗飼料にするべく研究がなされていた。内地から遊びにゆけばでっかいとうもろこしにミエルけど、あれはこれから伐採を待つサトウキビだ。
「ざわわ ざわわ ざわわーー」とのリフレインを持つ歌があるが、秋になるとキビ狩がはじまる。キビ狩では猛毒のハブ咬症被害がピークになる。夏はキビ畑には入れない。この近くで草野球をやっていても、ボールがキビ畑に入ればそれでゲームはおしまい。ハブの巣なのだ。
昨年は宮古島では風速70メートルが吹き全滅したときく。
沖縄本島でも事情は同じだろう。
本島から300キロ以上はなれた大東島などキビが産業の100パーセントを占める島だ。
強風とそれがもたらす塩害はいかなる影響を与えるか。
台風18号のときには播磨地方は雨よりも風の影響を強く受けた。全国各地で停電が発生し、最大時は40万件近くに達したのではないか。沖縄は何日も停電していた。これだけの停電の規模は、風の強さが内陸部まで塩害をもたらしたことにより、電柱や変電所の絶縁体である碍子が通電してしまうのだ。
以下は神戸新聞の記事。
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http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou04/0916ke48450.html
塩害 県南部で停電相次ぐ
2004/09/16
今月上旬に接近した台風18号の「塩害」で、その後も県南部の沿岸地域を中心に停電が相次いでいる。強風で塩分を含んだ海水が電線をつなぐ絶縁体の碍子(がいし)に付着、漏電現象が起きていることが原因らしく、関西電力は碍子の洗浄作業を急いでいる。
関西電力の調べによると、台風が通過した八日朝から局地的な停電が相次ぎ、十五日現在、塩害が原因とみられるのは神戸市須磨区の延べ約一万一千件を最高に計約五万三千件に達している。「電線に火花が散っている」との通報も相次ぎ、同期間中、七回の消防出動があった。
関西電力によると、停電や火花の原因は、碍子に付着した塩。碍子は電線外に電気が流れないようにする機能を持つが、電導物質の塩が付くことで絶縁機能が低下する一方、雨などで塩が溶け出し、漏電やショートなどが起きるとしている。
十四日未明も同市須磨区で約二千件が停電するなど被害は続いており、担当者は「台風通過後の停電はときどき起きる現象だが、こんなに多くの被害が報告された例は珍しい」と話している。
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このような状態が全国規模で発生したのだけど、第一次産業にはどのような影響が出るのか。
親戚の話を聞いてみると、豚や鶏は扱ってないからわからないそうだが、牛舎が長時間停電すると搾乳ができない。
通常は手ではなくミルカーという機械で乳を搾る。それをパイプでバルククーラーに送って冷却する。一頭あたり20キログラム平均の乳が出るとすると、30頭(内地の平均飼養頭数)分なら600キロもの乳がバルククーラーで貯乳される。冷却にムラがないようにこの生乳はクーラーの中で一定の速度でゆっくりと回転翼で回される。
台風で停電になると短時間ならよいが、長時間、何日にもわたって停電する場合、特に沖縄が心配だ。内地も影響があったと思う。
牛乳は殺菌前も10度以下に冷却して保存するのだが、長時間の停電はこれを不可能にする。なんせ殺菌前の細菌の数は1CCあたり何十万である。それが停電による温度上昇で一気に細胞分裂が加速され、乳等省令でご法度のの500万を超えてしまう。こうなったら廃棄だ。もし台風直後に牛乳がうまくないと思ったかたがいらっしゃったら、これは怪しいと思ってください。「殺菌すりゃいいんだから」なんてメーカーは思ってるようだが、だいたいこういうのは「加工向け」だ。粉とバターにしてしまうのだ。原料代は馬鹿安くなる。メーカー大喜び。酪農家涙を呑む。
酪農被害はそれですむのか?いやまだまだ甘い。
一つには乳房炎が発生する。
牛は生き物なんだよ。人間と同じ哺乳類なんだよ。毎日毎日、手じゃなくて機械でおっぱいをしぼられてみな。牛にとっても痛くてしょうがないんだよ。一番いいのは子牛が母親のおっぱいの飲む姿を見れば、母牛がどんなに気持ちよさそうにしてるか。だからこれに次ぐ搾乳方法は手なのだが、資本主義にとって牛は商品でしかない。
それが停電してミルカーが使えないとなりゃどうなる。毎日20キロも搾り取られていたおっぱいがだよ、急に絞られない。おっぱいはどんどん分泌する。一気に乳房炎だ。乳房が内部で化膿する。おっぱいから出た乳は白い。その前に乳房の中では赤い血液だ。それが分泌をとめられるのだから一気に化膿が始まる。
停電が回復する、ミルカーがつかえるようになったからと言っても酪農家は制限を受ける。乳房炎から命を喪う牛がいるかどうかはわからないが、問題を予防なりあるいはすでにかかった牛に対する処置として抗生物質を使うことだ。
これは構成物資の反応が出てから1週間は搾乳禁止措置がとられ、出荷をとめられる。
対岸の淡路島も酪農の盛んな地域だし、この牛糞を活用したたまねぎが大変うまいことで有名だが、停電があったとく。停電と聞くと即乳房炎、抗生物質と連想してしまう。
この被害は計り知れないものがある。
ローンの返済もあるだろう。搾乳施設の建設と維持費はばか高い。まして資本のもとでとしての生きた牛のことだ。いついかなる病気で死ぬやも知れぬ。それが、ここんとこの狂牛病、今度は奈良でも発生したと聞く。風評被害もそうだが、ありゃあむかし農林省が、「日本ではおこりっこない」なあんてたかくくってたころのツケが回ってきただけのこと。こうして酪農家は莫大な被害をこうむっていること想定できるのである。
一般農家も、稲作以外にも、東北ではりんごの落下は申告だし、そのほか目に見えぬ被害も多いことと思う。
たまたま今年は台風の上陸記録を更新したのかも知れないが、その分被害は甚大であることを考慮すべきである。