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(回答先: 球界を閉鎖系から開放系へ(2)時代遅れのプロ・アマ対立(萬晩報・成田 好三) 投稿者 シジミ 日時 2004 年 9 月 27 日 19:36:54)
★(3)は「萬晩報」サイト上に未アップロードのため、メルマガより転載しました。
(シジミ)
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球界を閉鎖系から開放系へ(3)「鎖国スポーツ」と「黒船」来襲
2004年09月27日(月)萬晩報通信員 成田 好三
プロ野球は国内に限定された「鎖国スポーツ」である。W杯や五輪に出場して、
そこで勝つことを最高の目標とする他の競技とは違って、プロ野球は国際大会を
目標に掲げたことはない。
プロ野球の「憲法」である野球協約は、MLB(メジャーリーグ・ベースボー
ル)優勝チームとの「世界一決定戦」実現をうたっているが、絵空事にすぎない。
目標実現のために理論武装も外交努力も、何もしていないからである。
2、3年に1度程度、MLB選抜チームやMLBの単独チームが来日し、プロ
野球選抜チームや単独チームと試合をするが、あれは真剣勝負の場ではない。親
善試合、エキシビションの類のものである。
球界再編、1リーグ化をめぐって、オーナー会議などで韓国、台湾との東アジ
ア優勝決定シリーズや東アジアリーグ構想が浮上した。しかし、これも1リーグ
化に伴うマイナス面を補うための「方便」である。オーナー会議の中でこれまで
そんな構想が論議されたことはない。韓国や台湾のリーグ側と構想を話し合った
こともない。
今年、MLB側から提案された野球のW杯開催についても、まともに取り合っ
てはいない。プロ野球は国際競技としての野球には関心がない。国際競技化する
ことによる市場拡大にも興味がない。
野球の国際化に関心のないプロ野球は、選手の海外進出、具体的にはMLB入
りも阻止してきた。野球に限らず、競技者(アスリート)がより高いレベル、最
高レベルの競技環境を求めるのは、いわば本能である。球界は、選手の本能を長
い間、封じ込めてきた。
プロ野球選手の海外進出の先駆者は野茂英雄である。近鉄を退団した野茂は1
995年、MLB・ドジャースに入団した。ワールド・シリーズまで中止となっ
たMLB長期ストが行われた翌年だった。野茂はその年、リーグの新人王と奪三
振王を獲得し、鮮烈なデビューを飾った。
野茂は追われるように日本を離れた。近鉄に複数年契約を求めた契約交渉が決
裂し、任意引退選手となってMLB入りした野茂に対して、球界とそれに関わる
人たち、野球解説者やマスメディアは、まるで連携したかのように「罵詈雑言」
を浴びせかけた。
しかし、彼らの対応は、野茂のMLBでの活躍によって、手のひらを返すよう
に激変した。野茂の人格攻撃までした解説者やマスメディアは、その年のうちに
野茂の「賞賛者」に変身した。その辺の事情を今も記憶している心ある野球ファ
ンは多いに違いない。
野茂の成功は、後進に大きく道を開いた。佐々木主浩、イチロー、松井秀喜、
松井稼頭央らスターたちが続々とMLB入りした。今年、MLB最多安打257
本の更新を狙うイチローはMLBのスーパースターになった。プロ野球からML
Bへの流れはもう誰も止められない。
野茂の成功は、プロ野球とは違うMLB文化を日本にもたらした。日本最大の
TV局であるNHKが、当時普及し始めたばかりのBS放送の「目玉コンテンツ」
として野茂を位置付けたからである。NHKがその年、野茂の登板した全試合を
BSで放送したことで、MLB人気に火が付いた。
NHKはMLBを積極的に日本に紹介しようと狙ったわけではない。「目玉コ
ンテンツ」である野茂、そしてその後の佐々木、イチロー、松井稼らを露出させ
ることによって、BS放送を普及させようとしただけである。NHKは今年、い
まや彼らの「秘蔵っ子」になった松井稼、イチローに、正午と夜7時の定時ニュ
ースで、「きょうの松井稼」「きょうのイチロー」枠を設けるほど肩入れしてい
るが、MLBの試合結果などには興味はない。
しかし、BS放送を通して日本でも多くのMLBファンが生まれた。そして、
MLBファンはプロ野球との違いに気付きだした。内野に芝生があることによる
内野守備の面白さ。プレーの質の高さはもちろんだが、選手が観客席に飛び込ん
でしまうほどのフェンスの低さ。内野スタンドとフィールドを隔てるネットなど
ない一体感。MLB最古の球場であるボストン・フェンウェイパークの左翼にそ
びえる「グリーンモンスター」。2番目に古いシカゴ・リグレーフィールドの外
野フェンスを覆うツタ。強制的にではなく、自然発生的に生まれる声援とブーイ
ング―。プロ野球にはない野球の楽しさを発見した。
今年のオールスター戦前日に行われたホームラン・ダービーには象徴的な「演
出」があった。ダービー前のセレモニーでは、最多本塁打記録をもつハンク・ア
ーロンはじめ500本塁打以上の記録保持者が勢ぞろいした。そして、ダービー
本番中の外野には、強打者たちの打球をキャッチしようとする、ユニホームを着
てグラブをもつ小学生たちがいる。MLBは100年もの歴史と未来を担う子ど
もたちに支えられていることを端的に示す演出だった。プロ野球にはないもので
ある。
江戸時代末期、浦賀沖にやって来た4隻の蒸気船は、徳川300年の太平の眠
りを覚まさせた。「黒船」である。野茂やイチロー、松井稼を「看板商品」とし
て、NHK・BS放送に乗ってやってきたMLBも、プロ野球にとっては「黒船」
になった。しかし、「黒船」来襲にも眠りから覚めない人たちがいた。プロ野球
の球団オーナーら球団経営者たちである。
彼らはこう考えていたのだろう。長嶋茂雄氏が引退あいさつで使った言葉、
「読売巨人軍は永遠に不滅です」になぞらえて言えばこうなる。「プロ野球は他
のスポーツとは別格の国民的人気スポーツである。何もしなくても、何も変えな
くても、プロ野球人気にかげりなど起きようもない。プロ野球人気は永遠に不滅
であり続ける」。彼らは、彼らの足元が音をたてて崩れ始めたことに気付こうと
もしなかった。(2004年9月24日記)
成田さんにメールは mailto:narita@mito.ne.jp
スポーツコラム・オフサイド http://www.mito.ne.jp/~narita/
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