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【経済コラム】球界再編問題は日本経済の縮図なのか:W・ペセック [ブルームバーグ]
http://www.asyura2.com/0406/idletalk10/msg/690.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 9 月 09 日 15:57:18:Mo7ApAlflbQ6s
 


  9月8日(ブルームバーグ):米作家ロバート・ホワイティング氏の「和をもって日本となす」という書籍は、出版からほぼ15年がたつが、依然日本で暮らす外国人に好まれている。表向きは野球について書かれたものだが、日本の文化や日本人のものの考え方について広く語っているからだ。

  ホワイティング氏は1990年に、日本式の野球は、考察が及ぶ限りにおいて日本人の性質を最も明確に示すものであると書いた(和とは「団結」や「連帯意識」を表す日本語)。それはなぜか。野球が「日本人の集団意識をとらえて離さないのは、それが日本人の性質にぴったり合っているからだ」と同氏は述べている。

  野球は今では、景気についての洞察力も与えてくれる。プロ野球界の労使は、現在12球団の再編問題をめぐって対立している。経営者側は、球団数の削減は残った球団の利益拡大につながると考える。オリックスと近鉄の合併はその第一歩となりつつある。ファンやプロ野球選手はこうした動きに抗議し、今週末に史上初となるストを決行する意向だ。

新旧の日本

  こうしたなか、並外れた大物2人が戦うことになった。日本で最も人気のあるプロ野球球団、読売巨人軍の渡辺恒雄前オーナー(78)と、インターネット関連企業ライブドアの堀江貴文社長(32)だ。例えるなら、渡辺前オーナーは「古い日本」で、堀江社長は「新しい日本」だ。堀江社長は新球団設立で参入するか、経営難の近鉄バファローズの買収を模索。球団オーナーとなった場合、同社長は株式を公開する計画を示した。実現すれば日本初となるはずだった。さらに、テレビ中継で視聴率を稼ぐよりも、大阪で地域密着のチームを目指す考えも表明した。

  球団再編は、言い換えれば2リーグ制を採用してきた日本のプロ野球界がほとんど関心を持たなかったことだ。そこに、球団を危機にさらし、組替えし、活性化し、あわよくばそれでもうけようとする人物がやって来た。成功すれば、こうしたやり方は堀江社長の球団だけにとどまらず、日本のプロ野球界に新たな息吹を吹き込む可能性がある。

  最新作で米シアトル・マリナーズのイチロー選手について書いたホワイティング氏はブルームバーグ・ニュースに対し、「商売には新しい血、新しい考えが必要だ」と語った。もっと競争原理が働き、利益率の高い商売ができれば、スーパースターがこぞって大リーグに流出するという事態の打開にもつながる可能性がある。活気ある野球環境があれば、イチロー選手もニューヨーク・ヤンキースの「ゴジラ」こと松井秀喜選手も日本に残っていたかもしれない。

  渡辺前オーナーは記者団に対し、見ず知らずの人間を球界に参入させるかけにはいかないとの考えを示し、各球団にはそれぞれ伝統があるとして、資金があってもそう簡単に買収できるものではないと指摘した。そうした島国根性だけならいいが、時代遅れの考え方が野球の可能性を奪ってきた。前オーナーの発言は、依然としてニッポン株式会社、ひいては日本経済全体の足かせとなっているより大きな問題を提示している。日本のビジネスモデルは依然、新興企業の権益よりも、巨大で揺るぎない企業を重視するものだ。

  ホワイティング氏は「読売巨人軍の年間収入はヤンキースと同レベルだが、ヤンキースのオーナー、ジョージ・スタインブレナー氏は二軍の整備や選手の獲得などにより多くの資金を還元する一方、巨人は親会社傘下の赤字企業の救済に回している」と指摘する。

  昨今の球界のごたごたは、日本経済とのもう1つの類似点を示してくれる。それは、ある程度高まるまで一般大衆の声は無視されるということだ。大半のファンが球界再編に反対しても、球団オーナーは気にも留めず、狭い自分たちの世界を守る決意を固めている。

  球団オーナーは日本政府と同様に、市民の参加はほとんど排除した形で、物事を決定している。「われわれ当局者の方がよく承知している」といった態度が、日本人の無関心を助長させており、過去数年間の野球人気の凋落ぶりにそれがよく表れている。球場入場者数は投票率とともに低下しつつある。

変化を嫌う

  オーナー側が態度を変えなければ、選手会は事実上スト入りとなる。これは「ひとたび指針を示したら、新たな道は退ける」という過去10年間に政策担当者が犯した最大の誤りの1つと似ている。日本の場合、それは借金だ。経済が14年間の低迷から回復しつつある昨今でも、借金減らしの議論はほとんど聞かれない。国民が反対しても、政治家が随分前に選択した道だからといって借り続けている。

  こうした変化を嫌う姿勢は日本の球界も同じだ。青息吐息の球界に、新しく、自由市場の発想を持つ提案がなされても、オーナー側は聞く耳を持たないだろう。

  プロ野球界の幹部は偏見を捨てて心を広くするよりも、一層の失墜を目指しているようだ。こうした考え方は日本の過去のものであるはずだ。現在のものではないし、ましてや未来のものではない。

(ウィリアム・ペセック・ジュニア氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Ichiro, Godzilla Offer Japan Economic Lesson: William Pesek Jr. (抜粋) {NXTW NSN I3QOKA07NBB6 }

更新日時 : 2004/09/09 13:46 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html

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