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国内で初めて人への感染が確実となった鳥インフルエンザ。ウイルスへの抗体が検出された5人のうち、感染したとみられる男性を含む4人は浅田農産船井農場の元従業員で、発覚を遅らせた同養鶏場の隠ぺい行為が感染を招いた可能性がある。周囲への感染の恐れはないものの、検査開始から公表までに9カ月かかるなど検査方法の確立にも課題を残した。【山本建、江口一、横田美晴、佐藤丈一】
◆防護策を講じない作業で感染か?
ウイルス感染を証明するには、ウイルスそのものを分離したり、ウイルスの遺伝子を検出する方法のほか、体内でウイルスと闘った免疫反応である「抗体」を検出する方法がある。今回はウイルスやその遺伝子の検出はできなかったため、抗体の有無で感染していたかどうかを調べた。
国立感染症研究所によると、ウイルスが体内に侵入してから血液中で抗体が増えるには時間がかかるため、抗体検査法の中では、一定期間を置いて血清を2回採取して抗体値を比較する「ペア血清法」の確度が高い。
感染が確実となった元従業員はこの方法で検査し、1回目は陰性、2回目は陽性だった。しかも2回目の抗体値は1回目の2倍以上に上昇したため、「感染の可能性が高い」と判断された。
同研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「2回目の採取までに1カ月間という抗体反応に十分な期間があった。感染の確率はかなり高い」と分析する。
他の4人は1回しか血清を採取できなかったため、弱い陽性反応が出たものの、「誤った反応」などの可能性を捨てきれないという。
厚労省は今回の検査結果の公表に発生から9カ月以上経過したことについて、「鳥インフルエンザは人での抗体の検出方法が確立されておらず、確認作業が必要だった。公衆衛生上の問題はないが、社会的なインパクトは大きいので、慎重に作業を進めた」と話す。
元従業員は発生後、全身を覆う防疫服やマスクの着用などの防護策を講じないまま、死んだ鶏の処理などをしていた。浅田農産から京都府への通報が遅れた間に感染した可能性がある。
牛尾光宏・結核感染症課長は「防護をしないまま作業しており、感染していたとしても不思議ではない。十分な対策をとった京都府職員からは1人しか抗体が検出されなかったことを考えると、治療薬の服用や防疫服の着用などの対策は一定の効果がある」と話している。
◆人から人に感染する新型の発生を警戒
検査結果について、厚生労働省は「今後発症する恐れはなく、他人に感染させる恐れもない」との認識を示す。しかし、鳥インフルエンザは、人から人に感染する新型インフルエンザに変異する恐れがあるため、厚労省は専門家の協力を得て、対策を進めている。
鳥インフルエンザは鳥には病原性が強いが、人へは感染しにくく、感染しても発症しないことが多い。ただし、鳥と人のインフルエンザが人などに同時感染して遺伝子が組み換わったり、鳥インフルエンザそのものが人の体内で変異すると、強力な新型インフルエンザが発生する恐れがある。
1918年から流行した「スペイン風邪」など過去の新型インフルエンザは鳥インフルエンザに由来しているとされている。今回のケースは既に終息しており、新型が生まれる可能性はないが、今冬以降、鳥インフルエンザが再発し、防護体制が不十分な場合、新型インフルエンザが生まれる可能性も捨てきれない。
人は新型インフルエンザへの免疫力がない。厚労省の専門家会合は8月、国内で流行すると全人口の約25%が感染し、約7万〜17万人が死亡する可能性があるとの報告書をまとめた。
国内のワクチンメーカーは国立感染症研究所などと共同で、新型への予防ワクチンの開発に着手したが、安全性確認などを経て国の認可を得るには3〜5年かかる見通しだ。来年にも試作ワクチンで、初期段階の臨床試験を開始する。一方、国は既存のインフルエンザ治療薬のタミフルを約2500万人分、備蓄することも決定した。
新型インフルエンザに備えるためにも、鳥インフルエンザの人での感染事例を調査することは科学的に重要で、今回の検査結果について岡部センター長は「世界的にも注目されるだろう」と指摘している。
◆京都府や山口県、大分県が情報収集
京都府は抗体検出が明らかになった18日、地上進・保健福祉部長らが厚労省を訪ね、担当課長らと面談。事実関係を確認した。また、浅田農産船井農場の元従業員らに「陽性反応が出たとしても今後発症する恐れはない」などと説明した。
一方、浅田秀明・浅田農産元社長(42)は兵庫県姫路市で毎日新聞の取材に応じ「5人に大変申し訳ない。事件発覚当時は『人に感染しない』と聞いていたので、時間がたってから抗体検出を聞くと正直戸惑う。今回の抗体検出を踏まえ、今後、埋却処分での装備を十分考えてほしい」などと訴えた。
また、今年1月に感染が確認された山口県も情報収集に追われた。発生当時、現場の「ウイン−ウイン・ファーム山口農場」(阿東町)では、従業員ら延べ539人を検査、すべて陰性だった。元農場長の男性(64)は「鶏舎内でウイルスを吸い込まないことは考えられないので、自分にも抗体ぐらいはあったのかなと思った」と明かした。
大分県九重町では今年2月、愛玩用に飼育されていたチャボが感染。抗体検出を受けて県は、関係者の健康調査をする。
■国内の鳥インフルエンザを巡る主な経緯■
1月12日 農水省と山口県が阿東町の「ウイン−ウイン・ファーム山口農場」で鳥インフルエンザ発生を発表。国内では79年ぶり
2月17日 農水省と大分県が九重町の鶏愛好家が飼育していたチャボが感染と発表
18日 山口県が終息宣言、半径30キロで設定していた卵と鶏の移動制限区域を解除
20日 京都府丹波町の浅田農産船井農場で、鶏が約1000羽死ぬ
27日 匿名電話を受け、京都府が船井農場に立ち入り検査、感染判明
29日 京都府が浅田農産に約20万羽の殺処分命令
3月8日 浅田農産の浅田会長と妻が自殺
10日 大分県が終息宣言
13日 船井農場で鶏約22万5000羽や卵などを隣接地に堀った穴に埋める作業完了
31日 京都府警が浅田農産社長らを家畜伝染病予防法(患畜の届け出義務)違反容疑で逮捕
4月13日 京都府が終息宣言
5月28日 国内のメーカーが予防ワクチンの開発着手明らかに
6月30日 農水省の専門家会合が「渡り鳥を介して朝鮮半島からウイルスが入り込んだ可能性高い」と報告書
8月10日 浅田農産社長に懲役1年、執行猶予3年、同社に罰金50万円の判決
31日 鳥インフルエンザなどが変異して人間に感染する新型インフルエンザに備え、厚労省が治療薬2500万人分備蓄決定
毎日新聞 2004年12月18日 21時59分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20041219k0000m040101000c.html