現在地 HOME > 掲示板 > 不安と不健康9 > 421.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
異常気象 植物の変
異形のタンポポ 遅れる紅葉 冬越すキウイ…
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041204/mng_____tokuho__000.shtml
猛暑に台風、長雨など「異常気象」の影響が、植物界にも表れている。猛暑の影響で、来春のスギ花粉の飛散量は今春の三十倍ともいわれ、ヒノキ花粉と合わせると過去最多という恐ろしい予測も。さらに、スギヒラタケが原因とみられる急性脳症の死者はすでに十七人、これも長雨による豊作が要因のひとつという。異常気象による植物の奇形を指摘する専門家もいる。植物界に何が−。
■花粉飛散最多 今春の30倍に
「もう花粉が飛んでいるのを体で感じる。例年よりかなり早い。目がしょぼしょぼしてほっぺたも荒れ、鼻が詰まって夜眠れない。来春の大量の花粉で、オンエア中に声が出なくなったらどうしよう」
気象予報士の森田正光氏は、来春への恐怖をひどい鼻声で訴えた。
通称・ハクション議連(自民党花粉症等アレルギー症対策議員連盟)事務局長の小野晋也衆院議員も「症状がかなりひどくて、鼻水がたれて頭がボーとして大変なんだから」と、こちらも戦々恐々といった様子だ。同議連には衆参五十二人が参加している。
「来春、花粉症患者が激増して二、三千万人になったら、『国は何をやっているんだ』と革命が起きるよ。研究機関に頑張ってもらって、免疫ワクチンの完成を急がないと」
森田氏が“体感”したように、スギの多い地域では、すでに飛散は始まっているようだ。全国有数のスギ産地の一つ、静岡県内では、先月から花粉症コーナーを設けた薬局も多い。
同県内に八十八店舗を展開する高田薬局(静岡市)は「十月末から点鼻薬や内服薬などが例年の二倍も売れて、先月中旬から急きょ、花粉症コーナーをつくった。今春は花粉症関連の新商品が多数出たのに、花粉量が少なくて売れなかった。来春に向けて今春の在庫がさばけそう」と皮算用する。
来春の花粉量は記録的な数値になりそうだ。気象業務支援センターの村山貢司専任主任技師は「一九六五年の観測開始以来、飛散量最多は九五年春だったが、それを上回る可能性が高い。飛散量が少なかった今春の十−三十倍になる」と分析する。「九五年は前年が猛暑、その前の年が冷夏で、今回とそっくりだった。前年の猛暑を比べると、九四年夏の最高気温三九・一度(東京)に比べ、〇四年は三九・五度(同)と高い。さらにヒノキの花芽数は、今年の方が断然多い。来春は史上最多になるだろう」
■苦しい期間も長くなりそう
来春は飛散期間も長そうだ。村山氏は「ヒノキはスギより一カ月遅れて飛散が始まり、飛散が終わるのも一カ月遅れの五月上旬だ。大量の花粉が長期間飛散することになる。これまで花粉症にならなかった人でも発症する可能性が高い」と警告する。「現在、国内の花粉症患者は全人口の約13%、約一千五百万人だが、一度発症するとずっと症状が続く例が多い。一気に大量の花粉が飛散する前に、予防措置を取ることを勧めたい」
花粉大量発生のメカニズムはどうなっているのか。
村山氏は「スギ、ヒノキはストレスを感じると花を大量に付け、花粉も必然的に多くなる」と解説する。「もっともストレスを感じるのは、極端に日照時間が長く降雨量が少ない天候だ。本能的に生命の危機を感じて子孫を増やそうとするのだろう」
■林業の衰退で間伐が不十分
この“種の保存”に関連して、「実はスギ花粉増加にはもっと深刻な状況が背景にある」と指摘するのは、愛知教育大学の渡辺幹男助教授(植物分子系統学)だ。「戦後、全国の山地にスギは大量に植林されたが、林業の衰退で十分な間伐が行われず、わずか数十年でほとんどが寿命を迎えつつある。種の生存のため雄花を大量に咲かせ、空中に放出しようとしている」
■スギヒラタケ 遺伝子レベルで毒性?
一方で、今年全国で急性脳症の被害が相次ぎ、その“犯人”と目されるスギヒラタケも、異常気象との関連が疑われている。
高崎健康福祉大学の江口文陽教授(キノコ学)は「今年突出して豊作だったかは野生のものなので統計がなく不明だが、山に入った印象では、多雨と猛暑の影響で一カ所に数多くあり、成長して太いものが多かった」と指摘する。
毒性については「増殖したスギヒラタケによるマウス実験では異常は認められなかった」としたうえで、「ただ今回の異常気象で、遺伝子レベルで毒性を持ったスギヒラタケが発生した可能性もある。今後、解析を進めたい」と強調する。
渡辺氏も「スギ花粉被害も特定のアレルギーに反応する人たちに被害を与えており、異常気象で大量繁殖した植物が人に影響を与える面で共通している」と指摘する。
こうした異常気象による植物界の“異変”は、奇形という形でも表れている。
渡辺氏は温暖化などの異常気象で生態が変化しつつある代表的な植物として、「タンポポが最も顕著」と挙げ、こう説明する。
「通常十年以上生きる生命力があるが、特に北海道や東京都内の墨田、北区などで茎が異常に太くなったり、一つの茎に複数の花が咲く“奇形タンポポ”が出現している。こうした異形のタンポポは開花した年に枯れてしまう。原因として温暖化や土壌汚染などが想定されるが周辺環境の変化によるストレスが要因になっていることは間違いない」
約七百種類の植物を管理する国立科学博物館付属自然教育園(東京都港区)の萩原信介主任研究官も「三十年以上勤務しているが、年々温暖化やヒートアイランド現象が悪化していることは植生の変化で実感できる。今年はまだ紅葉が始まったばかりで、極めて異常。冬が短くなり園内の植生も北方を中心に育つシラカバが、南方系のシイノキに押されている状況」と説明しながら、こう明かす。
「実は最近、キウイフルーツが鳥などのフンで種が運ばれて育っている。本来なら冬が越せないこの植物は数年以内に実をつけるだろう。野生のキウイを見ることで、ここを訪れる人たちは都心の温暖化の深刻さが分かるのではないか」
今年は観測史上最多の台風上陸があるなど異常気象が続いたが、来年以降はどうなるのか。
■来春の次は2009年に
前出の森田氏は「来年からエルニーニョ現象が始まる可能性が高い。その結果、二〇〇六、〇七年にかけて冷夏になり、〇八年に猛暑になる。次の花粉大量飛散は〇九年」と大胆に予想する。続けて「九五年、〇五年とデータ的に十年ごとの大量飛散の傾向が出ているが異常気象の影響で、インターバルは今後短くなっていくのではないか」
花粉症に関しては、早めの予防で対策を講じるしかなさそうだ。後は神頼みか。今年二月、千葉市の幕張メッセで花粉症軽減祈願祭を行った、全国でただ一つのスギの精霊を祭る杉神社(鳥取県智頭町)の坂出邦宣宮司はこう願う。「年末年始には、全国のスギ花粉がひどくならないよう一心にお祈りするつもりです」