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【イントロダクション】
これは下記の一連のものの続きです。シリーズとして通し番号を付けることにいたしました。これ以外のもありますが、それはこの一番下に載せておきました。
(1)▼あの戦争賛美の歴史教科書が、養護学校に、3年前に押し付けられたことついて
http://www.asyura2.com/0406/war60/msg/376.html
(2)▼「青い芝の会」1970年代・障害者解放運動のビデオと、反戦運動と、「ゆきゆきて、神軍」
http://www.asyura2.com/0406/bd37/msg/501.html
(3)▼青い芝の会「茨城青い芝・里内龍史会長『私の障害者運動史』」1999&「戦争と障害者運動について」平島武文2004
http://www.asyura2.com/0406/bd37/msg/990.html
(4)▼健全者幻想〜「未完の〈障害者文化〉─横塚晃一の思想と身体」より/&【大お詫び】
http://www.asyura2.com/0406/bd37/msg/1002.html
(5)▼青い芝の会と、反・優生思想…ゆえに「愛と正義を否定する」…健康の欺瞞性
http://www.asyura2.com/0406/health9/msg/349.html
(6)▼生身のヘレン・ケラー〜【T】社会主義者・急進論者・反戦 /【U】性衝動と未婚の苦悩
http://www.asyura2.com/0406/health9/msg/354.html
以下、今回の本文。
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さて、ここまで来たところで、優生思想、社会ダーウィニズムとは何か、という基礎を踏まえておきましょう。それは、決して過去のものでもなく、ある特定の集団の思想や時代の状況のものでもない、現代の日常の大衆の常識の無意識下に、潜在的にこびりついている問題なのだ。それを踏まえておかねば、反戦運動を中心として、障害者運動や労働運動や部落差別問題やその他あらゆる社会運動や政治問題などに対処するとき、体制側の思う壺にはまってしまうと思います。「健康」とか「不安」とか「愛と正義」とか「世間の空気」とか「精神的去勢」とかの根底には、こういうことがあるということ。以下、引用。「青い芝の会」の活躍も出てきます。―――――
■「多様性を基盤とした共生社会の創出に向けて―生物学的観点からの考察」本間篤
(『21世紀社会デザイン研究』2003 No.2)より。(部分抜粋。全文は下記URL)
http://www.rikkyo.ne.jp/~z3000268/journalsd/no2/no2_thesis14.pdf
1.はじめに
…21世紀の真に共生的な社会を構築していく上で、私たちは進化論や優生学等の概念を生み
出した生物学の近年の歴史を振り返り、社会がどのような影響を受けてきたのかを知る必要
がある。…【※さらに、私は「精神的なこと・心理学・哲学・宗教的なこと・社会○○学」
などの人文系諸学問も必要だと思いますヨーダ。(浦辺粂子、じゃない、手ポリオ近藤)】
2.優生思想と差別、社会的排除
(1)ダーウィンの進化論と優生学の誕生
…生物学者であったダーウィンは『種の起源』(1859)において、「生命は自然淘汰を繰り
返して、環境に適応したものだけが生き残っていく」と述べ、これがいわゆる適者生存説と
呼ばれる進化論の由来であるとされている。それと同時にダーウィンは自身の書である『人
間の由来』(1871)の中で、「文明社会は、福祉政策の整備や医療技術の進歩によって、そ
の「虚弱な構成員」の生命を維持するよう努めているが、それは人間という種の「変質」(
退化 de-generation)を加速させることになっている」とも主張した。
ダーウィンのこれら一連の提唱を発端として、19世紀末以降ヨーロッパでは医療技術や公衆
衛生の発達による人間の質の低下について語られるようになり、こうした中で優生学という
概念が提唱されるようになる。
優生学(eugenics)とは、人間のさまざまな身体的精神的特徴に優劣をつけ、生殖への人為
的介入によって、「優れた者」の出生を奨励し、「劣った者」の出生を防止することを目指
す理論と定義される。自然淘汰という行為を失った人間が進化論に基づいて人間の質を向上
させる為には、その生殖に人間自身が介入し管理する必要があるという理論は、19世紀末か
ら急速に欧米中に広がるようになり、こうした背景を基に優生学という概念は世界的に普及
することになる。…【※たかだか130年程度のことなのだ!マルクスなどもほぼその時代な
のだ。ヘレン・ケラーはその次の時代。ちょうど優生学がアメリカで広まりだした時代。】
(2)優生思想とホロコースト
…ナチスドイツでは優生学の普及と共に「民族浄化」「優生化の促進」というスローガンを
掲げた。その施策の一つとして、障害者の大量安楽死行為を開始する。一般的にナチスドイ
ツの行った大量虐殺行為(ホロコースト)は主にユダヤ人に対するものが広く知られている
が、ナチスドイツが最初に虐殺の対象としたのは障害者であり、数多くの障害者が大量虐殺
された。…
(3)日本における優生思想と障害者差別
…日本では1996年まで優生保護法という法律が存在していた。“民族的優生”というかつて
のナチスドイツで行われた施策と目的を同一にした法律がつい最近までわが国に存在してい
たことを、私たちは意外に知らないのではないだろうか。優生保護法の第一条には「優生上
の見地から不良な子孫の出生を予防するとともに、母性の生命健康を保護することを目的と
する」と記載されていたように、本法の本質的な意義として優生学の概念と優生思想が根底
に据えられており、これまでに公式統計上で約84万5千件もの不妊手術が実施された。(ち
なみに今日では母体保護法と名称を変えた。)
…ハンセン病患者に関しては、優生保護法よりも厳しい「らい予防法」という法律に基づき
施設への強制隔離と強制的な断種が実施された。
…障害者やハンセン病患者に対する断種という措置などには優生思想が根底にあった。…
3.科学技術の発展と優生思想の復活
(1)出生前診断技術
…日本でもかつて「障害者の発生予防」「不幸な子供を生まない為に」との発想の下で、か
つて1970年代には羊水検査の奨励と実施が盛んに行われていた。そして羊水検査によって胎
児に障害の可能性があると診断された女性は、自己決定権という名の下で胎児の中絶を選択
した。そしてこれらの施策には、優生保護法の存在が大きく影響していた。
こうした施策に対して待ったをかけたのが、脳性マヒの子を持つ親の会「青い芝の会」だっ
た。【※親の会というのは間違い。脳性マヒ当事者の会だ】彼らは羊水検査による障害児の
出生予防は、障害者の存在が社会にとって不必要な存在だと示しているようなものであり、
これはナチスドイツがおこなった障害者の大量殺りくと全く同じであると訴えた。“障害者
は社会にとってはいらない、迷惑をかける存在ではある。そういうことによって、端的に言
えば殺されてもよいのか”との彼らの主張は、最終的に羊水検査を中止へと追い込んでいく
。こうした運動がきっかけとなって、今日日本では欧米と異なり羊水検査の実施は10%以下
に過ぎない。…
(2)科学技術が可能にする優生思想の実現
…遺伝子の最先端の研究…未来人類「デザイナー・チャイルド」…ヒトゲノム計画…
4.真の共生社会を実現するために〜生物の多様性というヒント〜
(1)生物学的多様性という概念
…このように考えると、ダーウィンの進化論がきっかけとなってもたらされた優生学や優生
思想は、人間に優劣をつけ区別するという点で本質的に共生という理念と真っ向から対立す
るものであり、差別や社会的排除を生み出す本質であると言えるだろう。…優生学や優生思
想だけでなく、ダーウィンが提唱した進化論自体に対する批判の目を向ける必要がある。進
化論を克服して初めて共生という概念を実現化できるのではないか。…
…DNA研究が進むにつれ、生物が過去から現在にいたるまでどのようにな生存戦略をとっ
てきたのかが解明され、その中で生物は多様性を維持するようにそのDNAを変化させるの
だという事が明らかになってきた。ここに、共生社会を実現するヒントがある。
…例えば黒人に多く見られる鎌状赤血球貧血症という…貧血になってしまう疾患…。
…が、現在では人類の歴史によって本遺伝子の由来が明らかになった。かつてアフリカのケ
ニアでは蚊を媒介としたマラリア原虫感染が人の血液から血液と移り、それが人々に死の危
険性をもたらしていた。しかし鎌状赤血球遺伝子を持つ人々はマラリア原虫に対して抵抗性
を持つ為、多様な子孫の中から本遺伝子を持った人々が比較的多く生存する事ができた。こ
のように今日病因遺伝子とみなされているものであっても、地球上での人類の歴史という観
点から捉えると、実はそれが人類の生存に必須だった事例が多々あるのである。…
(2)多様性を基盤とした共生的な社会の実現に向けて
…「社会にとって悪い遺伝子などはあってはいけない。もし悪いというのなら、それは社会
が悪いという事。社会全体がハンディキャップを支えあっていくという姿勢が必要であり、
真剣に考える必要がある。」(NHKスペシャル『遺伝子〜DNA〜』作家の柳沢桂子氏よ
り)
…真の共生社会を実現する上で、私たちは最初に、私たちが多様な子孫を作り出すことで環
境変化に適応しようとした人間の子孫なのである事を理解し、多様な人々の存在こそが人間
が人間たる所以なのだという事を理解する必要がある。私たち人間は他の動植物と共に多様
な生物社会を構成する一員であり、人間を含む他のあらゆる生物の存在無くしては生きる事
のできない存在なのだと認識しなければならない。
…人間社会に限って言えば多様な人々がいるという事、そして彼らの存在なくして今の自己
というものを肯定できないという事を受け入れて初めて、真の共生社会を実現する事が可能
になる。…
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【関連資料】
■現在の「母体保護法」の問題点と欺瞞性 http://www.soshiren.org/shiryou/19990929.html
優生思想のからむその他の法律の問題点 http://www.soshiren.org/soshiren_toha.html#
〜「SOSHIREN・女(わたし)のからだから」(最初は「82優生保護法改悪阻止連絡会」略称「ソシレン」)という団体のページより。
http://www.soshiren.org/shiryou/shiryou.html
【本の紹介】
■『優生保護法が犯した罪−子どもをもつことを奪われた人々の証言』優生手術に対する謝罪を求める会編・現代書館・本体価格2400円・2003年9月1日発行 http://www.soshiren.org/oshirase/book/book_04.html
■『《障害》にころされた人びと』生瀬克己(著) 千書房 1993/10 価格¥3007(悪税込)
第1章:障害の者の生とその空間/第2章:〈ころし〉の情況と構図/第3章:〈健全者〉幻想のくずれるとき―自殺と心中/第4章:おんな・はは・かいご者/第5章:判決の構造/第6章:〈被差別〉の暴発/終章:資本制社会の人間配置と障害の者―一つの理論的想定として/付論:軍人の時代と病弱者
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4787300210/qid%3D1097644644/250-2276401-7280230
■ナチス・ドイツ関連文献・大リスト
http://www.aichi-gakuin.ac.jp/~gotoh/Semi03-Literatur.html
特に今は「3 ヴァイマル共和国(1918−1933年) 」
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【次回予告】シリーズ・現代の優生思想との対決(8)優生学の歴史と今日の問題
・・・フランシス・ゴルトン(チャールズ・ダーウィンのいとこ)…「自然淘汰」や「適者生存」の考え方を、人間や社会の分析に持ち込んだ男、ほか。(つづく)
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【なお、下記は、このページの一番上に載せたもの以外の、このシリーズの関連のもの。】
(0−1)▼【本の紹介】戦争を生き抜いた肢体障害者たちの証言
http://www.asyura2.com/0406/war58/msg/656.html
(0−2)▼イラクで478人の米兵が、気がふれて本国送還 米兵の自殺や精神異常の多発http://www.asyura2.com/0406/war58/msg/1197.html
(0−2)▼障害者の介助ヘルパー「セックスボランティア」
http://www.asyura2.com/0401/health8/msg/801.html
(0−3)▼戦争と精神障害者(身体障害者の記述も含む)
http://www.asyura2.com/0406/war60/msg/404.html
(0−4)▼ウンコ世界との対決…または、ある両手ポリオの身障者&精神病者の反戦運動
http://www.asyura2.com/0406/health9/msg/122.html
(0−5)▼私は貝になりたいと今の反戦運動とひきこもりと怒りをうたえ
http://www.asyura2.com/0406/health9/msg/154.html
(番外1−1)▼善意の人による高みからみおろす自己満足の反戦運動または障害者福祉運動
http://www.asyura2.com/0411/senkyo6/msg/517.html
(番外1−2)▼イラクも、地震も、台風も、政治的な争点と対決する危機感と緊張感のある状況を作り出すことが重要
http://www.asyura2.com/0411/senkyo6/msg/542.html
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【前回の下記の投稿の、誤字訂正と資料追加】
「生身(なまみ)のヘレン・ケラー〜【T】社会主義者・急進論者・反戦 /【U】性衝動と未婚の苦悩」
http://www.asyura2.com/0406/health9/msg/354.html
◇誤字訂正
※【手ポリオ近藤・付記】の始めのほうの次の部分。
反戦・版優生思想の運動へとつながらなければ成らない。→反戦・反優生思想の運動へとつながらなければならない。
つまり、「版優生思想」→「反優生思想」 「成らない」→「ならない」へ訂正。
※ヘレン・アダムス・ケラー→ヘレン・アダムズ・ケラー 「ス」に「 ゛」を付ける。母の旧姓がアダムズ。アダムズ・ファミリー?。♪いじわるが 好き、とても大好き、一度やったら・・・
※記録英画『我が生涯』→記録映画『我が生涯』
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◇生身のヘレン・ケラー〜資料追加
■記録映画『ヘレン・ケラー我が生涯』“Helen Keller in Her Story”1955年アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞
VHSビデオ発売中。英語版。アメリカのアマゾン・ドット・コムのページ http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/B000007T1B/harapanmediatech/104-7226877-4484756
■ヘレン・ケラーのアメリカのドキュメンタリー映画多数のビデオや英語の本の大リストのページ(すべて英語版、日本語字幕なし。) http://www.harapan.co.jp/Books/E_Books/B_nonfic_Keller_j.htm
■[マンガの中の聴覚障害者]若林泰志さん(ご自身が耳の聞こえない人)(日本ろう者漫画倶楽部)のサイトより。
ヘレン・ケラーのマンガいろいろ。 http://www001.upp.so-net.ne.jp/wakan/Biography/HelenKeller.html
「奇跡の人」とは、誰のことをさしているか?ほとんどの人は、ヘレン・ケラーのことだと思いこんでいる。間違いだ。正解は、アン・サリバンなのだ。これは原題"The Miracle Worker"を見れば、意味がよりはっきりする。意訳すれば「奇跡をもたらした人」ということになろうか。決して、「奇跡が起きた人」という意味ではない。これが「奇跡の人」と訳されたばかりに、このへんの区別があいまいになってしまい、ヘレン・ケラーを指しているという誤解になってしまったのだろう。
〈蛇足〉手塚治虫「どろろ」の『百鬼丸』は48の障害・・・四十八重苦。(でも彼はESPERだからねえ。)
■本『マンガの中の障害者たち』永井哲・著、資料提供・若林泰志(解放出版社)1900円+悪税
http://www001.upp.so-net.ne.jp/wakan/BookGuide.html
(※目の見えない人には、マンガとかアニメとか特撮とかも、普通の実写や小説やラジオと変わらないのか?)
■サリバン先生の関連
『ヘレン・ケラーはどう教育されたか―サリバン先生の記録』アニー・サリバン著 明治図書出版 1995/04(73年刊の改版)1491円(悪税込) http://www.meijitosho.co.jp/shoseki/shosai.html?bango=4-18-118809-4
『愛とまごころの指―サリバン女史の手紙』アン・マンスフィールド・サリバン(著),ジョン・A・メーシィ(編さん),現代教養文庫 社会思想社 1973/01 489円(悪税込) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4390107976/qid%3D1101102791/249-7647952-3686754
…アン・マンスフィールド・サリバンはマサチューセッツ州スプリングフィールド生まれ。両親がわからず、弟と二人で救貧院に入れられる。貧困のための栄養失調で目が見えなくなり、14才頃まで全盲に近く、パーキンス盲学校に学ぶ。救貧院というところは、病気もあるし、不潔であるし、大変だったみたいで、弟はそこで亡くなってしまう。幸いにその後いくらか見えるようになり、寮母で親友のホプキンスに詳細な手紙を書き、それがレポートとして発表され反響を呼び、アナグノス校長からケラー大尉の家の家庭教師の仕事を紹介される。
■作・松兼功(脳性マヒ)――舞台演劇『ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち』東京演劇集団「風」
http://www.kaze-net.org/helen.html http://www.asahi-net.or.jp/~jh2i-ymgc/29401.html
同「ヘレン・ケラーという芝居作り」北岡賢剛(日本障害者文化協会事務局長・信楽青年寮副寮長)「ノーマライゼーション 障害者の福祉」1996年4月号 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n177/n177_076.htm
…この物語をただのサクセスストーリーにしてしまうことそのものが、片寄った価値観を生み出していくのだという赤信号を発するとともに、もっと多様で個別な人と人の出会いを描けたらと思う。