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http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20041117i106.htm
精神科に入院中、身体を縛られた患者が突然死するケースが、東京都内で過去5年間に4件あったことが17日、都監察医務院の調べで明らかになった。
死因はエコノミークラス症候群とも呼ばれる肺塞栓(そくせん)症で、長時間の「身体拘束」によって血流が滞り、血栓が肺動脈に詰まったことが原因とみられる。精神科医療では、こうした身体拘束は広く行われているが、安全面の対策が問われそうだ。
4人は30―40歳代の男女で、いずれも統合失調症のため、都内の別々の病院に入院していた1999年から昨年までの間に死亡、病院からの届け出で行政解剖が行われた。
このうち49歳の男性は、ベッドに縛られる拘束を7日間にわたって受け、拘束が解かれた10分後、歩いて別の部屋に移動する際に心停止を起こした。
39歳の男性は同様に6日間、43歳の女性は1日半にわたり、それぞれ身体拘束されている間に突然死した。また、31歳の男性は4日間にわたる拘束を解かれた数時間後に入浴、直後に心停止した。
これらのケースを今月、専門医で作る肺塞栓症研究会で報告した呂彩子・非常勤監察医(慶応大法医学教室)によると、解剖の結果、いずれも肺動脈や足の静脈に血栓があり、身体拘束が引き金である可能性が高いとみられる。
精神科医療では、統合失調症、そう病、アルコール中毒などで患者が他者や自らを傷つける恐れがある場合、「抑制帯」と呼ばれる布製バンドなどで胴体や手足をベッドに縛る「身体拘束」が行われている。
肺塞栓症は、身体を長時間動かさないと起きやすく、手術後に多いほか、マイカーで避難生活をしていた新潟県中越地震の被災者にも続出した。肺塞栓症研究会など関連学会は今年、手術時には血流を良くする医療用ストッキングや足を圧迫するポンプを使用するなどの予防指針を定めたが、精神疾患は対象になっておらず、精神科では普及していない。
身体拘束に関する厚生労働省研究班長を務めた浅井邦彦・浅井病院(千葉県)理事長の話「これまで身体拘束中の突然死の報告がほとんどなく、予防策がとられてこなかった。今後、対策を講じる必要がある」
(2004/11/17/14:44 読売新聞 無断転載禁止)