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【不健康板関連投稿】
糖尿病性足潰瘍の新治療法・ウジを這わせて壊疽を清浄、足を切らずに治す(MedWave)
http://www.asyura2.com/0401/health8/msg/900.html
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20041005306.html
Randy Dotinga
サンディエゴ発――ドナ・ノードクイストさんは、企業の管理職を引退し、63歳という年齢ながら壮健な女性だが、この春に自宅のベランダから落ちてできた足首の傷がなかなか治らなかった。しかし、ノードクイストさんはどうすればいいかよくわかっていた――治療のために傷口に挿入された数十匹のうじ虫に、「頑張って!」と言えばよいのだ。
しかし、ノードクイストさんは例外と考えるべきだ。9月下旬に2日間の「うじ虫療法」を受けたときのノードクイストさんほど、素直に状況を受け入れられる患者はほとんどいない。多くの患者は、うじ虫を自分に近づけると聞いただけで即座に拒絶する。たとえば、ビバリーヒルズに住む92歳の女性は、形成外科医のバリー・ハンドラー博士がうじ虫療法を提案したとき、悲鳴を上げて拒絶した。
「この女性はおそらく、人生の中でうじ虫を相手にする必要がなかったのだろう。今さらそれを経験することは望まなかった」とハンドラー博士は振り返る。
それでも、ローテクなうじ虫療法を支持する医師は米国だけで数百人にのぼる。また、米国最大手の医療用うじ虫の生産者は、米食品医薬品局(FDA)がうじ虫を医療用品に正式認可してから1年もたたないうちに、生産量の倍増を余儀なくされた。長い間医療の分野で無視されてきたうじ虫が、ついに甦ったようだ。
うじ虫の復活劇は1980年代前半に始まっていた。カリフォルニア大学アーバイン校の研究者ロナルド・シャーマン博士が、足や下肢などに傷を負った患者にうじ虫がどのような効果をもたらすかを研究しはじめたのだ。
うじ虫――クロバエの幼虫――は、気持ち悪くて不快というイメージがあるにもかかわらず、ほとんど害はない。彼らの一生はきわめて単純だ。まず、クロバエが腐りかけの肉を探し、卵を産み落とす。そこからうじ虫が孵化して、そばにある動物の死骸で数回の食事を楽しむ。その後さなぎの段階を経て、成虫のハエになる。そして、同じことが繰り返される。
もしクロバエとうじ虫が存在しなければ、腐敗が進行するにしても、その速度ははるかに遅くなるだろう。科学捜査専門の昆虫学者も、昆虫を使って殺人事件の被害者の死亡時刻を割り出す(日本語版記事)作業に、今よりずっと苦労するはずだ。
シャーマン博士によると、軍医は何世紀も前から、生きている人間の壊死した肉をうじ虫がうまく食べてくれることに気づいていたという。「戦場で負傷した兵士の傷口にうじ虫がわいた場合、そうでない兵士に比べて体調も傷の調子も良好だった」と、シャーマン博士は話す。
1920年代後半には、第1次世界大戦の元軍医がジョンズ・ホプキンズ大学でうじ虫を用いた治療を開始し、この療法はまもなく一般化した。ノードクイストさんの夫、ハーブ・ノードクイストさんは、60年前に細菌が入った足をうじ虫で治療されたことを覚えている。自宅近くの病院で、看護師が妻の傷口からうじ虫を取り除いたときも、「気分を害するようなことはなかった」と振り返る。「何が起こっているのか、まったくわからなかった」
抗生物質が脚光を浴び、医師たちがペニシリンなどの薬に目を向けるようになると、うじ虫はたちまち人気を失ったが、シャーマン博士の研究を機に見直されるようになった。シャーマン博士は15年前、「医療用うじ虫」の飼育施設を作った。えさは悪臭を放つレバーだ。
現在、シャーマン博士は夫人とともに、250〜500匹の消毒されたうじ虫――代金は70ドルと送料――を毎週35人もの医師に出荷している(肉を大量に食べる前のうじ虫は小さいため、1ヵ所の傷に数十匹のうじ虫を入れることができる)。シャーマン博士によると、ほんの6週間前には、1週間の出荷数が20件を超えることさえまれだったという。シャーマン博士は報道関係者の間で『ドクター・マゴット』(うじ虫博士)と呼ばれている。
しかし、いったいなぜうじ虫なのだろう? 傷の治りが悪い患者の場合、既存の技術や薬では役に立たないという問題がある。壊死した肉を取り除くことは、往々にして困難で痛みを伴う。またこの過程で、瘢痕(はんこん)組織を含む健康な皮膚まで除去せざるを得ないケースも生じる。だが、壊死した肉をそのままにしておくのは、やはりよいことではない。ノードクイストさんの治療に当たっているハンドラー博士は、「問題は正常な治癒が遅れることだ」と説明する。「壊死した組織の切り離しにも、体内のエネルギーが使われる。(その必要がなければ、)新たな瘢痕組織の形成や傷の治癒に使われるはずのエネルギーだ」
ここにうじ虫の効用がある。うじ虫は食欲旺盛だが、健康な組織に入り込まないかぎり、人体に大きなダメージを与えることはない。ハンドラー博士によると、うじ虫は細菌も殺すので、命にかかわるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など、抗生物質への耐性を持つ細菌に感染した患者にとっては、予想外の効果をもたらすかもしれないという。MRSAへの感染は麻薬中毒者の間でよく見られ、ここ数年間は、米国の同性愛の男性に蔓延している。
吸血動物として知られるヒルも診療に使われる。ヒルは吸い付いた動物の体内に血液の凝固を阻害する物質を注入する。ヒルのこうした働きは医療分野でも有益だ、とハンドラー博士は話す。はがれた皮膚や切断した指を再付着させたとき、身体が拒絶しにくくなるという。
ただし、ヒルは4時間か6時間ごとに取り除く必要がある。うじ虫による治療はもう少し時間がかかるが、さほど長期間患者の傷口に留まるわけでもなく、ヒルよりも扱いやすい。ノードクイストさんの治療例では、スクリプス記念病院ラホーヤ分院の看護師が9月21日(米国時間)にうじ虫を挿入して、逃げ出さないよう特殊な包帯を巻き、23日にまるまる太った状態で取り除いた。
その後うじ虫たちはあの世へ行き、路上で車にひかれたたくさんの小動物の死骸に群がっているはずだ。ノードクイストさんは、うじ虫が足首の傷の治癒を助けてくれたと信じて、メキシコのバハカリフォルニアにある自宅へと急いだ。
うじ虫の「不快な部分」に関して言えば、ノードクイストさんは間違いなく騎兵のように勇敢だ。「傷口にいるうじ虫とごみ箱から出てくるうじ虫の違いを知っていれば、ずいぶん気分が楽になる」と、ノードクイストさんは話す。また、うじ虫の存在を自分の足に感じている間も、ノードクイストさんはまったく動じなかった。「うじ虫がぴくぴく、くねくねと動き回っているのはわかっていた。それでも言わせてもらうと、足の傷をそのまま放っておけば、地獄のような痛みを味わっていたはず」
さらにノードクイストさんは、うじ虫は他の患者たちにも受け入れられると考えている。「うじ虫はそれほど長く苦痛を与えるわけではない。痛むところがあれば、そこに飛びつくだけだ」
[日本語版:米井香織/高森郁哉]
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