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「いい医療」金次第、政府方針の「混合診療」 (しんぶん赤旗) 米国の実態は―
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投稿者 月読 日時 2004 年 9 月 21 日 14:55:13:ydTjEPNqYTX5.
 

「いい医療」金次第
政府方針の「混合診療」 2004年9月21日(しんぶん赤旗)(1面)

 保険証一枚あればだれでも、どこでも平等な医療が受けられる―そんな日本の皆保険制度が「混合診療」の解禁でくずされようとしています。小泉首相は十日、経済財政諮問会議で「年内に解禁の方向で結論をだしてほしい」と指示。同会議で竹中金融相も年内解禁の方向性を示しました。坂口厚労相は十四日、「一つのルールを作って、一定の範囲内で認めていく」とのべています。

 混合診療は、公的保険がきく診療と、先端技術など公的保険のきかない診療(自由診療)を併用するものです。政府は公的保険を縮小することで、保険の財源となる国庫負担を減らすことができます。一方、自由診療が普及・拡大すれば私的保険の市場拡大になります。これは財界がかねがねねらっていたもの。行き着く先は、市場原理が強くはたらく不平等な「アメリカ型医療」です。

 八月三日には、政府の規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)が年末答申の「中間とりまとめ」に「今年度中の全面解禁」を明記しました。

 混合診療の解禁には多くの医療団体が反対しています。

 日本医師会は、混合診療を認めれば、現在公的保険でみている療養までも、保険から自由診療へと外される危険性を指摘しています。自由診療を受けるには多額の費用が必要です。お金持ちほど「いい医療」が受けられ、お金のあるなしによって治療の内容に格差が生まれます。

 日本病院会など病院四団体も混合診療解禁の阻止に向けた運動を起こしています。全国保険医団体連合会は一貫して反対。中央社会保障推進協議会は、高齢者、健保本人の医療費窓口負担を軽減する要求とともに、混合診療解禁に反対する学習と署名運動にとりくんでいます。

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米国の実態は(記事3面)

 民間の医療保険が主流で、市場原理が貫かれているアメリカの医療。日本の政府・財界が構造改革で導入をねらうモデルがあります。しかし、そこでは、受けられる医療の制限や、負担の逆進性など、深刻な問題が起きています。その実態に詳しい李啓充(り・けいじゅう)前ハーバード大医学部助教授にインタビューしました。

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政府・財界が狙う 市場原理の導入
医療に何をもたらす
アメリカの実態から考える=上=
前ハーバード大医学部助教授 李 啓充氏に聞く  2004年9月21日(しんぶん赤旗)(3面)

 政府・財界は、医療分野を「構造改革」の最大のターゲットの一つとして、「市場原理・競争原理の導入」や、公的保険の利く診療と保険外の診療を組み合わせる「混合診療の全面解禁」「医療経営への株式会社の参入」などを、医療制度改革のなかですすめようとしています。これら「改革」が何をもたらすか。そのモデルともいえるアメリカの医療制度の現状にくわしい李啓充(り・けいじゅう)前ハーバード大医学部助教授に聞きました。聞き手・内藤真己子記者
 
 
二つの動き

 日本の医療制度改革の論議のなかで二つの大きな動きがあります。

 ひとつはビジネスチャンスの創出を目指す勢力による動きで、代表するグループは「総合規制改革会議」やこれを引き継いだ「規制改革・民間開放推進会議」です。同会議は規制改革の意義を「ビジネスチャンスの創出」にあると明言しています。その彼らがいっているのが「市場原理・競争原理の導入」や「株式会社による病院経営」「混合診療の解禁」です。

 もうひとつの勢力は、公的医療費抑制を最優先とする財務省や、企業の保険料負担が限界にきているといっている財界です。彼らは「保険者機能の強化」や、高齢者の終末期医療をムダ遣いだとする乱暴な主張をしています。

 この二つは矛盾するようですが、公的医療保険でカバーする「公」を減らし、公的保険の利かない「民」を増やして「民」の部分で企業にもうけさせろという構図では一致しています。この二つが同時に達成されると、アメリカ型の医療制度が日本にできてしまうことになります。
 
 
狭まる患者の選択権

七人に一人

 こうした医療が何をもたらすでしょうか。アメリカはずっと市場原理で医療を運営してきました。

 医療保険は保険会社が売り出す民間の保険が中心です。しかし市場原理で運営されると、お金のない人がこぼれ落ちるので、救済のために一九六〇年代に二つの公的医療保険が導入されました。しかし無保険者が約四千万人もいます。莫大(ばくだい)な税金を投入しているのに、国民の七人に一人が無保険というのが市場原理のアメリカの医療の現状です。
 
 
会社の介入

 アメリカの民間の医療保険会社は「マネジドケア」という仕組みを導入しています。保険会社が患者の医療へのアクセスや医療サービスの内容を管理・制限し、医療費の抑制を図る保険の仕組みです。日本で「保険者機能の強化」といっているのは、これといっしょで、保険者・保険組合が医療へのアクセスや内容に介入したいのです。

 保険会社は低価格の保険料を設定することで大口の顧客を募ります。低価格の保険料で、もうけようと思うときに一番手っ取り早い方法は病人を入れないことです。

 保険料を納めてくれる人が病気をしなければ保険会社は集めた保険料を全部懐に入れることができます。そのため大企業を相手に大口の契約を取ることを目指します。大企業で働いている人は健康な人が多いからです。
 
 
囲いこまれ

 低価格を実現するもう一つの手段は、医師や病院など医療サービス供給者に診療報酬の大幅な値下げを迫ることです。そのためネットワークをつくり、保険会社が認める医師、病院しか、患者はかかれないようにします。ネットワークの外に出ると保険が利かない、全額自己負担という形になります。

 ネットワークには、診療報酬の六割、八割は当たり前という値引きに同意した医師や病院だけを入れます。これで医療機関への支払いを大幅に減らせます。

 市場原理を入れると患者の選択の幅が広がるといいますが、患者の選択の幅は狭まります。ネットワークの中から主治医を選ばなければならないし、さらに専門医の受診や入院は主治医の許可がないとできません。

 また患者本人が保険会社を選ぶことができません。勤め先の企業が契約する保険会社を変えるとネットワークも変わり、主治医を変えなければならないなど不便なことが起こります。
 
 
入院も制限

 マネジドケアでアメリカの医療費の伸びにブレーキがかかったので、これはすばらしいと日本がアメリカ型を目指す根拠の一つとなっています。しかしその影響は国民にとって過酷です。

 マネジドケアでは保険会社が医療サービスの内容をこまかく規制し、病名に応じて標準入院期間を細かく定めています。

 たとえば乳がん手術だと入院期間は二日が相場です。しかし二日で退院すると、患者は手術後、炎症によって出るいろいろな液を体外に出す管を体に入れたまま退院することになります。

 訪問看護師が一日に一、二回来てガーゼの交換などをしますが二十四時間のケアは受けられません。患者が無理やり早く退院させられるのがマネジドケアのやり口です。

 実はマネジドケアで医療費を抑えることができたのは九六年までで、これを境にアメリカの医療費は伸び続けています。それは診療報酬の六―八割の値引きは当たり前という医療機関への大幅な値引きは、一回しかできないからです。(つづく)

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 り・けいじゅう 一九八〇年京都大学医学部卒。同大学院を経て、九〇年より米マサチューセッツ総合病院(ハーバード大学医学部)で骨代謝研究に従事、ハーバード大学医学部助教授を経て、二〇〇二年より文筆業に専念。著書に『市場原理に揺れるアメリカの医療』『アメリカ医療の光と影』。ボストン在住。

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