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戦後のベビーブームに生まれ、日本の経済成長を支えてきた「団塊(だんかい)の世代」がオフィスから姿を消す日が近づいている。600万人を超すこの世代が、07年から相次いで60歳定年を迎えることによる「2007年問題」は、社会にどんな変化をもたらすのだろう。【大森泰貴】
●数のパワー
団塊世代は、戦後まもない1947〜49年の3年間に生まれた人たち。ピークの49年生まれは269万7000人で、少子化が進んだ2002年(115万4000人)の約2.3倍だ。3年間の総出生数は805万7000人。当時は乳幼児の死亡率も高く、50年には734万2000人まで減ったが、前後の世代を圧倒する“数のパワー”で、戦後の日本社会にさまざまな影響を与えてきた。
高校進学時には「15の春を泣かせまい」と学校新設が相次ぎ、教員も増員。卒業すれば逆に「教員過剰」が問題になった。「受験戦争」のピークを経験し、社会人になると「会社人間」として経済を支えたこの世代。00年の国勢調査では688万6000人を数え、全人口の5.4%を占めている。
財務省財務総合政策研究所の「団塊世代の退職と日本経済に関する研究会」が、今年6月にまとめた報告書によると、団塊世代を含む1945〜50年生まれが今後、10歳年上の世代と同ペースで退職した場合、2010年度に最大110万人の労働力人口が失われ、実質GDPで最大16兆円のマイナスになる。労働力が激減し、現在の過剰雇用から一気に人手不足に転じるというのだ。研究会の座長を務めた。樋口美雄(ひぐちよしお)・慶応義塾大学教授は「影響は雇用だけでなく、経営や不動産、消費などあらゆる方面に及ぶ。国や企業、個人が、これにうまく対処出来るかどうかが、本格的な高齢社会を迎える日本を占う試金石」と語る。
●技術職不足が深刻
「新卒採用計画が増えています。景気の回復もありますが、明らかに団塊世代の大量退職に備えた動きです」というのは、第一生命経済研究所の永濱利廣(ながはまとしひろ)主任エコノミスト。同研究所の試算では、07〜09年に雇用者数は105万3000人減少する。仮にこの穴をすべて新規採用で埋めると、若年労働者を中心に正社員65万1000人、パートで40万2000人の雇用が生まれる。このため、03年の15〜29歳の失業者数119万人は大幅に改善。高給の団塊世代が低賃金の若手社員やパートに置き換えられ、約2兆3000億円の人件費が削減されるという。
ただ、実際には若手が団塊世代の穴を埋めるのは容易でない。2007年問題が最初に話題になったIT業界では、ベテラン技術者が大挙して定年退職し、大型コンピューターの保守が出来なくなる危機が叫ばれた。技能・知識のマニュアル化、若手育成などが急務とされるが、他業界でも技術職場の現状は同様だ。団塊世代は高度成長期にメーカーなどに大量に就職。その後、石油ショックなどで企業が新規採用を手控えたこともあり、後輩世代との人数の差も大きい。企業内での技能の継承は共通の課題になっている。
●自治体でも
49兆7000億円。団塊世代を含む07〜11年の5年間の退職者(厚生年金被保険者のサラリーマン)に支払われる、退職一時金総額を大和総研の柏崎重人(かしわざきしげと)シニア・アナリストが試算した数字だ。その前5年間の総額32兆8000億円から急増する。企業側の負担は重く、「退職金による経営破たんさえ考えられる」と柏崎氏。給付抑制などの対策が必要だという。
企業ばかりではない。大分市は07年から10年間、退職者が急増する。同市の推計では、06年の退職者は79人で退職金総額は約27億円だが、以後増え続け、17年までの約1400人が退職し、退職金総額は416億円に上る。同市では「早期退職や新規採用減で人件費を抑え、一般会計を出来るだけ圧縮するしかない」と苦慮している。
●丸ビル21棟分消滅
団塊世代の約7割は東京・大阪・名古屋の三大都市圏以外の出身だが、進学や就職に伴う移動で、最近はほぼ半数が三大都市圏に居住・勤務している。このため、07年以降は都心のオフィスワーカーの激減が予想される。ニッセイ基礎研究所の松村徹(まつむらとおる)・上席主任研究員は「東京23区では00〜10年に15万8000人が減り、丸ビル21棟分に当たるオフィス需要が消える」と見る。
都内では03年に総床面積200万平方メートルの、史上最大規模のオフィスビル供給があったばかり。今後も毎年100万平方メートルが増える見通しだけに、「都心の一等地の優良物件に需要が集中し、競争力のないビル、特に老朽化したビルは敬遠されるでしょう」と松村氏。不動産業界での生き残りも激化しそうだ。
●今後の動向にも注目
「07年は日本の人口がピークを過ぎ、減少に転じる歴史的転換の年です」と樋口教授。それまでに団塊世代の退職によるマイナスの影響をいかに小さくするかが重要だという。
今年6月には改正高年齢者雇用安定法が成立し、企業は今後、段階的に65歳までの雇用延長を義務づけられる。企業側の60代活用への意欲はまだまだ低いのが実情だが、樋口教授は「雇用延長や再雇用で多くの人が現役にとどまれる環境を作ったり、フルに働いても年金給付額が減らないようにするなど、働きたい人は働けるようにすることが、企業の技能継承などの面からも有効です」と指摘する。
さらに将来的には、退職後の団塊世代のライフスタイルが消費動向のカギを握るとみられる。「レジャーなど時間消費型の市場が拡大する一方、過去の預貯金などを取り崩して生活や娯楽に充てる世帯が増えることも予想される」(樋口教授)。彼らが一斉に「第二の人生」を歩み始れば、国内の個人の貯蓄が大きく目減りし、金融市場に影響する可能性もあるという。
戦後日本を背負い、引っ張ってきた団塊世代。働き続けてリタイアしても、その動向からは当分目が離せないようだ。
毎日新聞 2004年9月29日 15時18分
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/news/20040929k0000e020080000c.html