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【食の政治学】ミーシアム
リー・クアンユー顧問相も「好物」、真意は…
シンガポールは「食の天国」だ。多民族国家だけあって、中華料理、マレー料理、インド料理とバラエティーに富んでいる。しかも安くてうまい。特に、団地や公園、路地裏など至るところにあるホーカーズと呼ばれる“屋台村”が有名だ。
チキンライス、ホッケンミー(福建麺)のような中華系や、サテー(くし焼き)、ミーゴレン(焼きそば)といったマレー系など、どれも二−三シンガポールドル(百三十−二百円)ぐらい。観光客というより、共働きで夕食を作る余裕がない庶民でいつもにぎわっている。
そんなホーカーズ料理の意外なファンが、建国の父、リー・クアンユー顧問相(元首相)だ。客家出身のリー氏が地元紙に「好きな食べ物」と答えたのが、豪勢な中華ではなくマレー系の庶民料理ミーシアムだった。
ビーフンにエビ、ゆで卵、もやしを乗せて食べる。エビペーストや唐辛子などを混ぜたスープは甘酸っぱくてスパイシーだ。もとはタイの料理といわれ、マレー半島を南下しながらさまざまな風味が加わっていった。
マレー半島の南端に位置するシンガポールは、食文化でマレーシアと密接につながっている。政治的にも第二次大戦後マレーシアの一州だったが、一九六五年に分離・独立した。というより、マレーシアに追い出されたといった方がいい。
当時、シンガポール州首相のリー氏は「マレー人、華人を含めたすべてのマレーシア人のマレーシア」を提唱したが、「マレー人のマレーシア」式統治を狙う中央政府と決定的に対立した。
リー氏が独立宣言後の会見で、感極まって泣き出した話は有名。独立に感激したのではなく、「マレー人の海に浮かぶ華人の島」(同氏)の行く末に思いをはせたのである。その後、「華人のシンガポール」ではなく、「華人、マレー人、インド人を含めたすべてのシンガポール人のシンガポール」を築き上げた。
リー氏も今年八十一歳。政府機関誌は記す。「リー氏は自分が何を食べるか、どれだけ食べるかに気を付ける。量は控えめでフルーツや野菜を多く取る」。だとしたら、脂っこいミーシアムが好物とは信じがたい。
リー氏がマレー系の料理を好物に挙げたのは、母国の多様性に気を配ったのか。それとも、結局マレー人優遇政策が行き詰まったマレーシアへの強烈な皮肉か。はたまた、超エリート一家の庶民性をアピールしたかったのか。何とも意味深長である。(シンガポール 藤本欣也)
http://www.sankei.co.jp/news/evening/28int003.htm