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パブリックコメントって何?
ソフトバンク“総動員”で注目
携帯電話の電波の規制方針で、総務省が行ったパブリックコメント(意見提出手続き)に対し、異例の三万通もの意見が殺到した。携帯電話への新規参入を狙うソフトバンクBBの孫正義社長が「携帯電話の料金が高いのは同省の規制のためだ」として同省に意見を送るよう、全国の約四百万人以上のユーザーにメールを配信したからだ。にわかに脚光を浴びた形のパブリックコメント制度って一体何? (大村 歩)
■異例の3万通モノ申す
孫社長のメールの内容は要約するとこうだった。
「日本の携帯電話料金が世界一高いのは携帯電話事業への参入企業が限られており自由競争がないことが原因」で、同社が事業に参入したくても「総務省から出された電波の再編案では、携帯電話に最適な電波帯をNTTドコモとKDDIの二社が再編後も引き続き割り当てを受けるため、事業への参入は極めて困難」。料金を安くするためにソフトバンクが参入可能な電波の割り当てをするよう同省に意見を送ってほしい、というものだ。
■携帯参入規制、総務省を批判
ソフトバンクBBが運営するインターネット接続サービス「ヤフーBB」の加入者は、単独のADSL(非対称デジタル加入者線)としては国内最大の約四百四十万人で、「その大部分にメールを送った」(ソフトバンクBB広報部)。いわば国内最大規模の“動員”をかけた形だ。さらに同社は六日、本紙を含む主要日刊紙六紙にメールと同趣旨の意見広告を掲載。孫社長は記者会見で「パブリックコメントは形がい化している。募集したと言って、一カ月後に意見だけは聞きましたと総務省の勝手な都合で決められる。国民的議論になっていない」と徹底批判した。
こうした攻勢が功を奏したのか、六日の募集締め切りまでに同省には三万通ものメールが殺到した。
担当の同省移動通信課は「孫社長のメールが発送された三日になって爆発的にメールが来た。数千通のウイルスメールも含まれているようだ。まだ全部見終わらず職員が手分けしてやっている。はっきり言って大変だ」と困惑している。
では、“けんか”を売られた形のパブリックコメントとは何だろうか。
同制度は、一九九九年に政府が閣議決定した「規制の設定または改廃にかかわる意見提出手続き」が正式名称だ。法律と違い、政省令、規則、基準、ガイドラインなどは従来、中央省庁が行政立法として一方的に決めてきた。このため官僚や特定利益団体の思惑が入り込む余地があり、「裁量行政」の弊害も指摘されてきた。パブリックコメント制度はこれを改め、政省令などの「案」の段階で国民に提示して妥当性を問い、その意見を考慮して案を決定する仕組みとされている。
国の場合、匿名、架空の人物・団体でない限り誰でも意見を提出できる。企業や団体はもちろん外国政府でもいい。これまでにも米政府やEU代表などが日本の中央省庁に意見を提出しているが、意見としては一国民と同列に扱われる。
■でも『不満のガス抜き』
「これだけ聞くと、国民は国が何かわれわれの意見を考慮してくれるんじゃないかという感じを受けるかもしれないが、現実にはそうでない」と、幻想を打ち消すのは南山大学の榊原秀訓教授(行政法)だ。「どの意見を採用するかの基準はない。役人にとって都合の悪い意見は採用しないという傾向は変わっていないし、不満のガス抜きに使われているという意見もある」
実際、総務省行政手続室によると、二〇〇三年度に中央省庁が実施したパブリックコメント五百一件のうち、集まった意見を受け案を修正したのは九十件で、全体の18%にとどまる。
そもそもパブリックコメントの意見募集はネットによる場合が多く、よほど関心を持つ人以外には周知できていない。昨年度、五百通以上意見が集まったのは全体の1・6%にすぎず、一通もなかったケースは三割を超えた。
多くても数千通、一万通を超えれば大反響だ。今回の「三万通」は呼び掛けに応えて各個人が個別に意見を出したケースとしては異例中の異例なのだ。
行政手続室の明渡将副管理官は「意見に対し行政の考えを提示して透明性を確保することがこの制度のメリットで、修正率の高低は問題ではない。むしろ高いと案がいいかげんだったのかということになる。意見の数もゼロというのは寂しいが、それも国民の意思と受け止めている」とする。
ということは孫社長のように多数を頼むやり方では、意味はないのか。
旧郵政省や米国の同省にあたる連邦通信委員会(FCC)に在籍したコンサルティング会社「風雲友」社長の田中良拓氏は「総務省はこうしたやり方は正攻法ではないと嫌がるだろうが、アメリカでは当たり前のことだ」と解説する。
■米国では100万通 議会も取り上げ
一例として挙げるのは、一昨年から今年にかけ、FCCがマスメディアの規制緩和方針を打ち出したケースだ。FCCの案は、ABCなど既存の三大ネットワークテレビ局などがよりいっそう寡占化することを容認する内容で、消費者団体などが報道の偏向化を懸念。FCCのパブリックコメントに対し意見を出すよう求めた結果、百万通もの意見が寄せられた。議会で問題となったほか、連邦高裁でも争われた。
田中氏は「今回の孫社長はいわば実験として呼び掛けたのだと思うが、多数の意見が出れば社会的影響力を持つ。特に政治家が取り上げれば、政治問題化することで行政の思い通りにさせないということもできる」とメリットを指摘する。
一方で、「多数決原理ではなく意見の質を競うのがパブリックコメント制度の原則」と指摘するのは、総務省の諮問機関「行政手続法検討会」委員で学習院大の常岡孝好教授(行政法)だ。「むしろ制度をセレモニーにしてしまわないためには、官僚が意見を無視したり、合理的な理由がないのに意見を採用しなかったケースについて正式に行政の決定を是正させるシステムをつくるかどうかが問題だ」という。
■問われる“お上”任せ体質
検討会は、同制度を行政手続法の中に明文化することを目指し、行政立法に対する不服申立制度の法制化や、義務的にパブリックコメントを募集する範囲を審議会の答申などに広げる案などについて議論。早ければ次期通常国会に同法改正案が提出される見込みだ。
ただ、これまでパブリックコメントを受けて案が大幅にひっくり返るようなケースはなく、行政側も「それが起きないようにすべき」(総務省幹部)との立場で、法制化されても変化が起きるかは微妙だ。
田中氏はこう指摘する。「米国では国民が意見を出すから役人はその論点をまとめろという認識がある。行政を信用しない発想で“お上”は存在しない。日本はいまだ“お上”が健在で、役人は自分が正しいと思っており、パブリックコメントにしても物事が決まった後に、まあ他の意見も聞いてやるかという態度だ。と言って役人が悪いというのではない。結局はそれで構わないとして勉強せず意見を言わない国民の側に問題がある」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040926/mng_____tokuho__000.shtml