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004.9.16
Q君への手紙(PART3[50])
デービット・カラハン著『「うそつき病」がはびこるアメリカ』を読む
「嘘つき=自由旅行ならぬ自由悪口の権限を与えられている弁護士。ジャーナリスト、その従事する職業、商売、ないし天職が何であれ」(ピアス『悪魔の辞典』)
Q君。9月14日、品川駅の書店で『「うそつき病」がはびこるアメリカ』(デービット・カラハン著、小林由香利訳、NHK出版、2004年8月25日第一刷発行)を買い、品川−新神戸往復の新幹線車中で読みました。一読の価値ある本だと思います。著者のデービット・カラハンは1965年生まれ、ニューヨーク在住のジャーナリストです。
Q君。冒頭にピアス(1842-1914ころ、米国の小説家)の『悪魔の辞典』の「嘘つき」の項を引用しましたが、これは1911年、ほぼ100年前の言葉です。100年前のアメリカは今よりはるかに健全な社会だったのでしょう。「嘘つき」が特定の職業の人に限られていて、一般人は正直だったことをピアスの言葉は感じさせます。しかし、カラハンの著書は「嘘つき病」がアメリカ国民全体に広がっていることを教えています。この翻訳書の「帯」にはこう書かれています――「公平さも誠実さもなくしてしまった。もうこの国では正直者は生き残れない」、と。
本の背表紙には「行き過ぎた市場主義がもたらしたもの」がサブタイトル的に記されています。裏表紙には四つの新聞の書評が並べられています。本を持てばすべて知ることができることですが、その四つの言葉を紹介します。
「かたずをのんで読んだ。本来アメリカにはなかった腐敗が、どのように私たちの文化をむしばんでいったのかがわかる」(ロサンゼルスタイムズ)
「市民意識の高い作品。読むと動揺せずにはいられないデータやエピソードばかりだ」(ニューヨークタイムズ)
「『なぜアメリカ人は不正をするのか』という疑問に向き合うきっかけを与えてくれる」(シアトルタイムズ)
「この現象に取り組んだ本はたくさんあるが。これほど憤りと気迫、そして説得力があるものは他にない」(ボルチモア・サン)
Q君。長い引用になってしまいましたが、実は上記の引用文は、私がこの本を読み終えてから見ました。私の読後感にピッタリの言葉が並んでいるのに驚いたくらいです。
Q君。おそろしいのは、権力を有している者たちが重い「嘘つき病」に罹っていることです。われわれ国民は、一刻も早くこのことに気づかなければなりません。Q君、この本をぜひとも読んでください。そして周辺の人々にこの本を読むことを勧めてください。
Q君。『「うそつき病」がはびこるアメリカ』を買ったあと、別の書籍コーナーに行ったところ、『経済財政白書』(縮刷版、平成16年版)が目にとまり、買って読みました。副題は「改革なくして成長なしW」――これは嘘の見本のような言葉です。多くの国民は小泉首相が呼号した「改革なくして成長なし」の言葉にだまされてしまいました。しかし結果はどうでしょう。小泉構造改革は日本を破壊し、日本経済成長の芽を摘んでしまっています。
『経済財政白書』には嘘ばかりが書かれています。「嘘八百」というのはこういうことをいうのでしょう。冒頭には竹中平蔵経済財政政策担当大臣の「平成16年度年次経済財政報告公表にあたって」の一文が掲載されていますが、第一行目から嘘が書かれています――「日本経済は投資や消費を中心とする民間需要主導の景気回復を続けています。景気回復局面に入って2年半が経過し、その間の平均成長率は3%に達するなど、先進国の中では日本の回復の着実さは際立っています」。
こういうのを「ヌケヌケとした嘘」というのでしょう。国民経済全体を見れば、竹中氏の判断は大間違いです。とんでもない大嘘です。日本経済は依然としてデフレ不況のさなかにおかれています。それも政府による「不況長期化」政策の結果です。
Q君。20年ほど前までは、エリート官僚や学者、新聞記者、そして政治家は、今よりずっと正直でした。誠実でした。80年代から指導層が本来もつべきモラルが指導層から失われ始めました。頽廃が進みました。90年代を通じて指導層のモラルは崩壊し、21世紀に入っては「嘘つき病」が異常なこととは感じられなくなりました。嘘が当たり前になってしまいました。このままでは日本のモラルは崩壊してしまいます。おそろしいことです。Q君、ではまた。