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2004.9.22
Q君への手紙(PART3[53])
「地方自治体の職員の給与や退職金は高い」というのは一昔前までのことです。いまは地方公務員は冬の時代を迎えています
「世の中は三日見ぬ間に桜かな」(大島蓼太) (世の中は変転が常。絶えず変化している−の意。地方公務員の状況も変わりました)
Q君。最近、私の言論(公共事業必要論)に関して、多くの方々から賛否両論、数々の意見をいただきました。ありがたいことです。私への批判のなかで最も多いのは[森田さん、あなたは官を擁護するのか]というものです。国民の間に「官」に対する根強い反感があるという事実は認めざるを得ません。過去の長い間の「官尊民卑」の伝統への反発があるのだと思います。
小泉構造改革は、国民の「官」への反感をうまく利用していると思います。一部の官庁(たとえば財務省)も、地方自治体への補助金削減や公共事業費削減のために、この国民反「官」感情をうまく利用しています。このような策略的なやり方は、政治権力は慎まなければなりません。困ったことです。
Q君。いま一番苦しいのは地方です。地方経済は依然として低迷をつづけています。地方自治体は予算を組むことができません。地方公務員の労働条件がよかったのは昔の話です。これからさらに悪化することは避けられない状況です。
Q君。小泉首相は「官から民へ、民間にまかせるべきことは民間へ」と言いつづけてきました。マスコミも小泉首相を支持しています。最近は行き過ぎてきて、「官」よりも「民」が上だという空気になってきています。かつては「官尊民卑」でした。いま、小泉政権のもとで日本社会の空気は「民尊官卑」という方向に変わってきています。「中庸」がよいのですが、マスコミは「民尊官卑」派です。
もちろん中央官庁は依然として強力な力をもっています。財務省も金融庁も大権力です。このような強い官庁に対してはマスコミは批判しません。それどころか、マスコミは強い官庁と手を結んで弱い官庁を叩いているのです。それに、財務省や金融庁は、マスコミから少しぐらいこき下ろされた程度では、傾くことはありません。強者連合をつくり、弱者をいじめているのです。
いま、いじめられているのが地方自治体で、政府と中央官庁から地方は切り捨てられました。三位一体改革で地方公務員の人員削減はかなり急激です。労働条件も劣悪化しています。賃金もどんどん切り下げられています。
Q君。大事なことは、これらの地方公務員には自己主張の機会がないのです。一方的に叩かれるだけです。「昔よかった」というだけで、叩かれつづけているのです。誰かが、恵まれざる地方公務員の代弁者にならなければいけません。
Q君。9月7日、Aさんから次のようなご意見をいただきました。友情ある批判的意見をいただき感謝します。最近は「批判」というより「非難」「弾劾」という性格のご意見もあり、どう返事したらよいか、困ることもしばしばあります。そんななかでAさんの穏やかな「批判」はありがたいと思います。
Q君。まずAさんのご意見の全文を紹介します。
《はじめまして 普通の一般人であるAといいます。森田さんのHP掲載の時代を斬るを読んで個人的な感想を述べたくメールします。
緊縮財政路線に伴う地方の疲弊について書かれていると思いますが、地方公務員の人件費については、どのように感じておられるでしょうか? 私の個人的な意見として、現状、厳しい地方自治体の財政状況なのに巨額の退職金や民間でいうところの賞与を微々たる削減で済ませて、自治体の予算を圧迫していると感じます。
人件費を大幅に削れば、その他の分野に予算が回せます。厳しいようですが市町村合併を推進するのも手です。地方公務員は、通常解雇がないわけですので、多額の退職金や多額の賞与は必要ありません。民間は明日にでも解雇される可能性もあり退職金をもらえない人も数多くいます。
森田さんの言われている国の地方への財政政策の批判もわかりますが、現実に日々生活している市民のことを考えれば国の政策転換を待っている時間があるのでしょうか? 地方公務員の退職金、賞与は大幅に削減して、その浮いた金を他の事業に回すべきです。これは地方自治体が直ぐにできることです。被災者の中には厳しい生活を強いられている人もいるでしょう。地方自治体は人件費を大幅削減するべきです。その上で国や都道府県にたいして財政政策転換を訴えていくべきです。》
Q君。このような意見をお持ちの方は多いと思います。しかし、私は最近、毎日のように地方にまいりますが、地方は自治体を含めて地方全体がたいへん暗くなっています。とくに市町村レベルがひどいです。自治体では大幅な人員削減が始まっています。給与も毎年下がっています。非常に悪化しているのが現実です。
Q君。少し実態をみてみましょう。ライパイレス指数という言葉をご記憶のことと思います。国家公務員と地方公務員の平均給与を比較する指数です。高度成長期に地方公務員の給与が国家公務員(100とする)に比べてかなり高くなったとき、地方公務員の高い給与を際立たせる道具としてマスコミでよく使われました。30年ほど前までは「ライパイレス指数110」などという数字が新聞によく出ていました。
しかし近年、地方公務員の給与は国家公務員に近づいています。1974年110.6、78年107.3、83年105.9、88年103.4、93年102.4、96年101.7、97年101.5、2003年100.1となっています。今はほとんど同水準になっていますが、2005年には逆転する可能性が高いと思います。国家公務員のほうが上になるでしょう。地方公務員の給与が国家公務員に比べて高いというのは過去のことです。2003年で見ると、国家公務員より低い地方自治体の数は約8割になります。
地方財政は、三位一体改革のなかで急激に悪化しています。各地方自治体は、いま、全力で給与削減に取り組んでいます。
地方公務員数も1954年から連続9年減少しています。この間の減少数は15万5000人を超えています。2003年4月1日現在の地方公務員の数は約311万人です。この地方公務員数は今後、三位一体改革のなかでかなり急激に減少することになるでしょう。
Q君。地方自治体はそのレベルによって5つに区分されます。都道府県、指定都市、市、町村、特別区(東京23区)です。このうち、最も低い水準なのが町村です(95.7)。下から二番目が市です(100.7)。最も高いのが指定都市です(102.2)。特別区は102.1で、指定都市と同水準です。都道府県が101.7です。大都市地域の地方公務員の給与が市町村、とくに町村よりかなり高いのです。町村の状況はきわめて深刻です。
国家公務員の給与は民間に準拠して決められています。地方公務員の水準は国家公務員に準拠しています。
Aさんは、“民間はきわめて厳しい状況にあり、それと比べて地方公務員の待遇はよいのではないか”といっています。しかし、民間準拠の基準はあくまで民間の平均値になります。平均値で比較するしか比較の方法はないと思います。退職金問題は改めて書きますが、官民格差の是正は進んでいるとみてよいと思います。
Q君。たしかに民間企業はすぐリストラします。しかし、これは民間企業がひどすぎるのではないでしょうか。雇用について、民間企業は国と地方自治体と同様に、もっと責任を持つべきです。経営が苦しくなったらすぐ解雇するという最近の米国流やり方は改めるべきです。ただ、よく調べてみると、従業員を大切にしている企業はまだかなり多く存在しています。そして業績もよいのです。リストラは必ずしもうまくいっていないことを、マスコミは報道すべきです。
Q君。「極端から極端へ」は大きな過ちです。かつて地方公務員の給与水準が高かったことは事実ですが、それは一昔前のことです。今は三位一体改革に伴う人員削減、賃金引き下げの荒波にされされています。むしろこのことが今もっとも深刻な問題なのです。
Q君。いま行われていることを一言で言えば、「弱肉強食」です。強い者が勝ち、弱い者がいじめられています。こんな社会はダメだと思います。“弱い”立場の者が声を挙げる必要があります。カール・マルクスが150年以上も前に「万国の労働者、団結せよ!」と叫んだように、私は、優勝劣敗の小泉構造改革に対して「弱者は団結せよ」と叫びたくなっています。「地方よ、決起せよ!」と叫び出したい心境です。
Q君。繰り返します。地方公務員は、恵まれた大都市地域を除いて、たいへん厳しい状況におかれています。とくに地方の町村が深刻です1。小泉内閣が推し進める三位一体改革でいじめられたうえ、誤解にもとづくマスコミの非難にさらされているのです。地方いじめの度が過ぎているように私は思うのです。義憤を感じます。マスコミには、いまの真実を伝えることをお願いします。
Q君。私がこのHP「時代を斬る」で繰り返し訴えていることは、日本の国にとって最も大切なのは地方だということです。地方の繁栄なくして日本の繁栄はないのです。先入観を排して、地方公務員の現状を正確にみることにしましょう。そして、一昔前の状況を前提にした地方公務員へのいわれなき非難はやめましょう。