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景気拡大３０カ月連続 デジタル牽引、神武に迫る 中国特需、五輪後押し
足元の景気拡大が、戦後復興を確かなものにした「神武景気」（昭和二十九年十一月から三十一カ月）に匹敵する拡大を続けている。デジタル家電が引っ張る今回の景気拡大も、アテネ五輪が終わって薄型テレビなどに一服感がみられ、どこまで続くか予断を許さない。予算編成や税制改正の動きが年末に向けて動き出す中、政府の政策判断は緻密（ちみつ）なかじ取りを求められそうだ。（比嘉一隆）
≪１４年１月から≫
平成十四年一月を景気の「谷」とし、その時点から始まった今回の拡大期は、今年七月で三十カ月に達したとみられる。景気は右肩上がりで回復し、ピークの「山」にたどりつくと、今度は「谷」に向けて下っていく。景気は必ずこの「循環」を繰り返す。戦後から数えて十三回の循環が繰り返され、今回は十四回目となる。
内閣府が来月七日に発表する八月の景気動向指数（一致指数）で、景気の善しあしの分かれ目となる５０％を超えれば戦後五番目の長さの「神武景気」に並び、その後は「岩戸景気」の四十二カ月間に挑むことになる。
戦後最長の「いざなぎ景気」（五十七カ月間）などと呼ばれるそれぞれの景気の名称は、政府が決めるのでなく、エコノミストらが景気に寄与した社会現象などから命名、定着した。では、今の景気は何と呼ばれるか。
第一生命経済研究所の永濱利廣主任エコノミストは「デジタル家電景気」と言い切る。「景気回復を実感していない人は多い。実感はデジタル家電にかかわる大企業・製造業の従業員らに限られている」と、景気の特徴を指摘する。労働力人口約六千六百万人のうち、大企業・製造業で働く人は４・６％で三百万人程度。完全失業者数も三百万人程度でほぼ拮抗（きっこう）した状態が続き、デジタル家電関連の大企業・製造業に偏った景気拡大ともいえる。
日本総合研究所の高橋進理事は「構造調整景気ともいえるが、やはりデジタル家電景気だろう」という。バブル崩壊後、企業は設備や雇用のリストラを進め、収益体質に「構造調整」してきた。それがようやく設備投資に開花。デジタルカメラ、ＤＶＤ、薄型テレビの「新三種の神器」の本格的な市場投入を可能にし、景気を引っ張った。
中島厚志・みずほ総合研究所チーフエコノミストも基本的には「デジタル家電景気」というが、「中国特需景気といえなくもない」という。平成十五年のアジア向け輸出額は過去最大に達し、特に映像機器部品を中心に対中輸出が３３・２％増と大幅に拡大した。日中の経済関係の深まりを今回の特徴にあげている。
≪４年ごとの波≫
景気拡大を支えた背後に、四年ごとに循環する波もかかわっている。
オリンピックはその最大のものだ。テレビや録画機器などは五輪開催年によく売れるため、各メーカーも新商品を投入、設備投資や生産が増える。また、世界的に半導体などＩＴ関連財も、五輪と同じ四年に一度の浮沈をみせる「シリコンサイクル」（新製品登場→大型設備投資→供給過剰→値崩れ）を繰り返すとされる。四年サイクルの米大統領選挙も、市場では「大統領選サイクル」と呼ばれる。大統領選をにらんで時の政権は景気対策を取りがちで、ブッシュ政権も大型減税を実施した。日本も恩恵を受け、デジタル家電製品の対米輸出が増えた。オリンピック、シリコンサイクル、大統領選サイクルの三つの波が、日本経済の拡大に相乗効果を発揮してきた可能性は強い。
ただ、こうした効果は長続きせず、逆に懸念材料はめじろ押しだ。米国経済は減税効果が剥落（はくらく）して消費に一服感がみえ、日本からのデジタル家電輸出も伸びが鈍化。米大統領選で保護主義色の濃い通商政策を唱える民主党ケリー候補が勝てば、日本の景気に悪影響を与えかねない。原油価格の高止まりで中国経済が落ち込む恐れもある。外需頼みの日本経済は、世界経済の浮き沈みに影響を受けやすい。
≪心もとない内需≫
一方、内需に力強さがあれば、足腰の強い景気拡大が可能だが、その点も心もとない。来年度予算で政府の財政支出は望み薄。企業収益の改善も十分に給与に還元されないまま、十月から厚生年金保険料の引き上げ、配偶者特別控除の縮減など、国民の懐を直撃する負担増が待ち受ける。定率減税の廃止・縮減の検討も始まる。政策運営のかじ取りが景気の持続を大きく左右しそうだ。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/20kei001.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。