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問題点は? 自由度増す巨大郵貯マネー
「第4のメガバンクにも」
郵政民営化の方向性が固まり、今後、法案化に向け具体的な準備作業に入る。しかし、純粋持ち株会社の形式で発足させ、最終的に郵便貯金と簡易保険を独立させ、完全民営化することには肥大化懸念もあり、基本方針に対する反発も根強い。これから郵政事業はどう変わり、どのような問題点が生まれるのか、検証する。(谷口正晃)
≪採算性疑問≫
「窓口ネットは事業として成り立つのか」という声は絶えない。
窓口ネットワーク会社は約二万五千局ある郵便局網を引き継ぐが、維持コストは膨大になる。現在でも郵便事業は約二兆二千億円の運営費がかかるのに対して、経常収益は一兆九千七百億円。その採算性が疑問視されるのも無理はない。
平成十五年度の郵便事業は二百三十六億円の最終黒字を確保したが、これは郵便貯金と簡易保険が職員の人件費を負担しているためだ。一人の職員が郵便、郵貯、簡保と複数業務をこなす小規模の特定郵便局では、人件費の七割が金融事業の収益で賄われている。
窓口ネット会社は金融会社からの受託手数料に加え、市町村役場からの事務受託やコンビニエンスストアへの場所貸しに頼る計画だが、最大委託元の郵貯の手数料収入ですら九百億円に満たない。ユニバーサルサービス(全国一律サービス)維持のカギを握っているため、その採算性には注目が集まっている。
政府の郵政民営化準備室内に設置した有識者会議は、黒字運営が十分可能との試算を発表したが、根拠となる条件などが明らかでなく、日本郵政公社の生田正治総裁ですら「全く説得力がない数字」と不安を隠さない。基本方針が閣議決定された現在も、明確な回答は示されていない。
≪全国均一維持≫
「お年寄りや足の不自由な人は、郵便局員におろした預金を届けてもらったりしているが、そうしたサービスは民営化後も維持されるのか」
八月末に長野県上田市で開催された政府主催の郵政民営化タウンミーティングでは、サービス低下への懸念が相次いだ。竹中平蔵金融・経済財政担当相は「ユニバーサルサービスは低下しない」と明言したが、民営化後の収支によっては郵便、郵貯、簡保のすべてを扱う普通局や特定局が、サービスが限定される簡易局に取って代わられる可能性はぬぐえない。「全国くまなく」は守られるが、「全国均一」ではなくなるわけだ。
生田総裁は「地方の方々が本当に欲しいと感じているのは郵貯、簡保のサービス」と語るが、郵貯、簡保のユニバーサルサービスは義務化されない。また、大手都銀の行員は、「預貯金を引き出して、契約者の自宅までもってゆくようなサービスが民営化後もできるのか」と興味津々だ。
効率化のために郵便業務の外部委託は進むとみられるが、統廃合が日常茶飯事のコンビニへの依存度を高めた場合、ある日突然、ネットワークに穴があくという事態にもなりかねない。
民営化の成功例とされるドイツでも、経営効率重視のためフルサービスの直営局が減り、サービスを限定した委託局が増えた。ドイツポスト労働組合代表のロルフ・ビュットナー氏は、「郵便局数の減少はサービス低下にほかならない。市民にとって民営化でプラスになったことは何もなかった」と振り返る。
現在のドイツポストは民営化開始から十三年を経て経営が軌道に乗り、二〇〇三年に局数は増加に転じた。ユニバーサルサービスが量・質ともに維持できるかどうかは、民営化後の業績がカギを握りそうだ。
≪金融肥大化≫
「民営化して郵貯事業が破綻(はたん)したら貯金はどうなるのか」
福岡市のタウンミーティングでの質問に竹中担当相は「政府保証がある民間金融機関はない。破綻しない経営をしてもらうのが大切だが、金融当局も監督してゆく」と、民間金融機関と同等であることを強調した。
十九年四月の民営化までに契約した定額貯金や簡保は、万一、破綻してもこれまで通り政府保証がつくが、民営化後の契約については政府保証はなくなる。
このため、金融事業の将来性に対する関心は高いが、破綻懸念は少ないといわれる。
政府が株式を完全放出するまでは“国営”ということで事実上の政府保証がつき、完全分離してからは巨大な郵貯マネーの自由度が増し、住宅ローンなどの新分野にも進出することができるためだ。「第四のメガバンク化になるのでは」(大手銀行幹部)との見方すらある。
◇
【郵便局】郵便、郵便貯金、簡易保険などサービス全般の窓口として、全国に2万4715局(今年3月末現在)ある。内訳は普通郵便局が1310局、特定郵便局が1万8935局、簡易郵便局が4470局。普通局は、局舎が公設で比較的規模が大きく、局長は職員からの昇任により任用され、人事異動もある。特定局は局長の私有建物を局舎として活用しているケースが多く、局長は生涯転勤しない。簡易局は窓口業務を市町村や農協などに委託する形で開設されている。
【ユニバーサルサービス】全国一律で受けられるサービスを指す。郵政事業の公社化に関する研究会が平成14年8月にまとめた最終報告では、(1)手紙・はがきの均一料金(2)ポスト投函(とうかん)制(3)全国あまねく公平なサービス提供(4)継続的なサービス提供−の4つの要素で構成されると定義。万国郵便条約では郵便の全国一律サービス確保を義務付けている。日本郵政公社は、郵便貯金や簡易保険も全国一律サービスの対象ととらえている。
【政府保証】日本郵政公社の郵便貯金業務について郵便貯金法では、不測の事態が起きた場合、貯金については「国が(全額)払い戻しと利子を保証する」ことが明記されている。この仕組みが「政府保証」。簡易保険も同様に、何があっても国が保険金の支払いを保証する。郵貯、簡保には「政府保証がある」という安心感が「肥大化と民業圧迫につながっている」という指摘がある。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/11kei003.htm