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ライブドアの近鉄買収表明を受けて、混沌の模様を示している近鉄・オリックス合併問題。
古田敦也プロ野球選手会会長が、「1リーグ制」ありきの拙速な議論に異議を唱える。
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プレジデント http://www.president.co.jp/pre/20040802/002.html
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古田敦也 = 談
Atsuya Furuta
ふるた・あつや●1965年、兵庫県生まれ。川西明峰高校、立命館大学、トヨタ自動車を経て90年、ドラフト2位でヤクルトに入団。チームの司令塔として5回のリーグ優勝、4回の日本一に貢献する。98年、日本プロ野球選手会会長に就任。
福井盛太 = 構成
text by Seita Fukui
立木義浩 = 撮影
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「プロ野球の命運」を
短期間で決めていいのか
去る6月上旬、近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブの合併交渉が、両球団首脳の間で協議・進行中と発表されました。年間40億円もの赤字を計上し続けるチームを、親会社である近鉄単体では保有し続けられないというのが合併の理由のようです。
もしも両球団の合併が成立した場合、パ・リーグの球団数は5球団に減少します。そうすると、パ・リーグの年間試合総数が減少するのは勿論、連戦ごとに、1チームだけ対戦相手がいなくなって浮いてしまうなど数々の問題が生じてきます。つまり、パ・リーグを5球団で維持するのは難しいかもしれない。であるなら、いっそのことセ・リーグとパ・リーグを引っ付けてJリーグのような1リーグ総当たり制にしたほうが、新しい対戦カードが増えて球界が活性化、野球の人気低迷に歯止めがかかるだろう……最近のプロ野球界で活発に言われている「球団合併→1リーグ制」という言葉は、このような背景の下に誕生してきたようです。
これは、プロ野球発足70年の歴史の中でも、とても大きく重要な出来事です。「プロ野球の命運」そのものを決めかねない。私はプロ野球選手会の会長として、そして、一人の野球ファンとして、1リーグ制には反対です。ただし、絶対的に「1リーグ制」に反対しているわけではありません。なぜ反対を表明しているのかというと、これほど重要なことを2〜3週間という短期間のうちに、まるで既成事実のように、各球団上層部の方たちの話し合いの中だけで進めていることに、強い不信感を覚えるからなのです。
実際「なぜ、1リーグ制がよいのか」という根拠も曖昧で、球団オーナーやプロ野球機構側から選手に対してはもちろん、ファンに向けても具体的な説明はありません。これでは、“プロ野球市場が縮小しているから、いままで12球団で分けていた物を、今後は10球団で分けましょう。そうすれば、1球団あたりの取り分は減りませんよ”という後ろ向きな改革と受け止められてもしようがないと思います。
12球団による2リーグ制維持に私が賛成するのは、球界改革のプロセスに不信感を持つからだけではありません。実際1リーグ制、2リーグ制のメリット、デメリットを挙げて検討した場合、2リーグ制維持のほうがプロ野球界全体の発展にとっては、まだまだメリットが大きいのです。以下にメリット、デメリットを列記してみます。
1リーグ制のメリット
・巨人対ダイエー、阪神対西武など、対戦カードが多様になる。
・もっともテレビ放映権料の高い巨人戦を全球団が行えることで、パ・リーグ各球団は収入増につながる。
1リーグ制のデメリット
・球団数の減少はプロ野球ファンの減少に直結する。これまで近鉄を応援していた人が、新球団や阪神、他ファンになるとは考えられない。
・もっともスポンサー収入が多く、注目度も高い日本シリーズ、オールスターゲームがなくなるか、もしくは陳腐化する。
・優勝に関係ない球団同士の戦い=消化試合が増える。
・セ・リーグ球団は巨人戦が減ることで、放映権収入が減少する。
2リーグ制のメリット
・日本シリーズが維持できる。
・近鉄ファンを喪失しないですむ。
・球界の縮小均衡に頼るのではなく、各球団に経営の自助努力を促すきっかけづくりをすることができる。
2リーグ制のデメリット
・パ・リーグ各球団が巨人戦を行えないことによる収入機会の損失。
以上を列記した場合、1リーグ制のデメリットが目立ちます。さらに言うなら、1リーグ制で享受されるメリットは、現行2リーグ制の下での改革で十分に享受可能なものばかりです。
例えば、対戦カードを増やすことは、米国のメジャーリーグ(MLB)のように交流戦(リーグの違う球団同士が、ペナントレース中に対戦する。例えばア・リーグのヤンキースとナ・リーグのメッツが対戦できるのは、この制度のお陰。対戦成績は年間勝敗数に入れられる)を設けることで可能です。
また、テレビ放映権にしても、各球団が独自にテレビ局と契約を結ぶ方式をやめ、各テレビ局との契約窓口を日本プロ野球機構に一本化、収入を順位や視聴率に応じて分配するという方法が考えられます。そのようにすれば、たとえ巨人戦がなくても、パ・リーグの各球団は現状のような窮状から一時脱却できます。もちろんこのような方式に変更するためには、球界の番人としてのプロ野球コミッショナーの権限をMLB並みに強化する必要があります。加えて、現状のように経営者の集まりである「オーナー会議」で物事が決められるのではなく、プロ野球を大局的に見るためのプロ野球機構「実行委員会」等で物事が決まるようにしていくべきでしょう。
さらに、プロ野球ほど観客動員力がなくても経営的に成り立っているJリーグの「経営資本方式」を参考にするとか、MLBの「ラグジュアリータックス制」(選手年俸の多い球団が、少ない球団に対し金銭を分配する方式)を採り入れるなどすれば、「赤字になりました。じゃあ合併です」という安易なことにはならないはずです。もっと簡易な方法としては、今年初めに近鉄が提案したことでも知られるネーミングライツ売却だけでも認められれば、経営が成り立つ球団は複数あります。
これらのことは、あくまで一案ですが、「現状の2リーグ制の下での球界改革、健全化を図るための選択肢は、まだまだある」ということがおわかりいただけると思います。選択肢がまだあることは明らかなのに、全然議論が尽くされていない。議論が尽くされたうえで、「やはり1リーグ」というのなら仕方がないのですが、現実ではそうではない。何度も申し上げるようですが、そこに私は違和感を覚えます。
Jリーグの横浜マリノスと横浜フリューゲルスが合併して横浜F・マリノスとなった件と、一見類似しているようですが、プロ野球の今回のケースとでは少々次元が異なるようです。サッカーの場合は、合併はあっても、全国でのクラブ数を増やし続けた。決して縮小均衡ではなかったのです。しかし今回の場合は純減、です。プロ野球選手は勿論、チームで働くピッチングコーチやトレーナーなど裏方さんが減るだけでなく、ファンの数も減る。加えて現在は、「プロ野球予備軍」を支えていたノンプロ(職業野球チーム)も減り続けていますから、明らかに“トップレベルの野球人を吸収する場所”の数が足りなくなってゆくわけです。
球団経営がビジネスだということは十分に理解できます。ただし、これだけの歴史と伝統が存在し、ファンの人気に支えられているプロ野球は、半ば公共的な存在であることも事実です。であれば「儲からないから、やめた。合併」などと簡単に考えられないはずです。1球団を消滅させることは、選手やスタッフはもちろん、ファンの人生をも変えかねない。ですから、安易に合併という結論など出さずに、買い手がいるのなら球団を売却し、そのうえでチームや球界の改革を施す。このようなソフトランディング路線を選択することがよいのではないでしょうか。
先日、テレビ番組で近鉄の野球帽を被った子供たちが「(合併は)困るよ。僕らがプロ野球選手になったときバファローズに入れないってことでしょ?」と言っていました。プロ野球は、将来を担う子供たちに「夢」を売っているのです。大人たちが安易に「夢」を潰してはいけないと思います。
http://www.president.co.jp/pre/20040802/002.html