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ＵＦＪ強制捜査へ…東京地検、金融庁告発待ち --- 岡崎前副頭取ら数人対象
ＵＦＪ銀行（沖原隆宗頭取）が金融庁検査の際、組織ぐるみで大口融資先の関連資料を隠すなどした検査妨害疑惑で、金融庁が今月中にも銀行法違反（検査忌避）の罪で元首脳ら当時の審査担当役員数人と法人としてのＵＦＪ銀を東京地検に刑事告発する見通しとなったことが２日、分かった。検査妨害を裏付ける資料の提出をすでに受けている東京地検特捜部は告発を受け、元首脳らの強制捜査に乗り出すもようだ。三菱東京フィナンシャル・グループとの経営統合を進めるＵＦＪグループだが、傘下のメガバンクを舞台にした異例の刑事事件に発展する可能性が強まった。
【組織的隠蔽】
検査妨害は昨年１０月上旬、通常検査と並行して行われた特別検査の過程で発覚。東京・大手町のＵＦＪ銀東京本部内から、検査官に提示した正式の資料よりも財務内容が悪い大口融資先の資料が詰まった段ボール箱が１００箱以上も見つかった。
このため、金融庁は今年６月、ＵＦＪ銀が昨年８月から始まった検査の際、多数の役職員が組織的に（１）融資関連資料を隠蔽（いんぺい）（２）大口融資先に対し旧経営陣が行った審査に関する議事録を改竄（かいざん）（３）債務者の財務内容について検査官に虚偽の説明−などをしたとして、銀行法に基づく業務改善命令を出した。
【全面謝罪も…】
ＵＦＪ銀は当初、隠蔽した資料を「景気の見通しに応じてシミュレーションしたもので正式資料ではない」「検査妨害は意図的ではない」と違法性を否定した。
だが、業務改善命令を受けたため、弁護士らでつくる調査委員会で再調査を実施。７月末に沖原隆宗頭取（５３）は一転して、「担当部長が指示し、担当役員が容認した」と組織的関与を公式に認め、全面謝罪した。
そのうえで、すでに辞任していた岡崎和美前副頭取（５６）、早川潜前常務（５４）、稲葉誠之前執行役員（５１）を「直接検査を担当していた」として、退職慰労金が支払われない「解任」に切り替えるなど１００人規模の役職員を処分した。
【容赦なし】
複数の関係者によると、こうした妨害行為は金融庁の検査が始まる前から準備が進められ、一部の部長が部内会議のたびに職員に指示。役員が了承し、実行されたという。
ＵＦＪは表向き反省の意を示すことで、刑事告発という最悪のシナリオを逃れる計算だった。
だが、金融庁は今回の検査妨害は組織ぐるみのうえ、大規模に実行されたことを「金融システム安定化への重大な挑戦だ」として、「悪質」と判断。東京地検に検査妨害を裏付ける資料を任意提出するなど刑事告発への準備を進めていた。
竹中平蔵金融・経済財政担当担当相も「法令にのっとって、しっかりと対応する」と容赦ない姿勢を示していた。
【寺西ライン】
解任された検査担当役員は、いずれも旧三和銀行出身。不良債権処理の遅れや、今年３月の期末決算での４０２８億円もの巨額赤字の責任を取って、５月に退任した寺西正司前頭取（５７）の息のかかった人物だった。
岡崎前副頭取は、不良債権処理の最高責任者。退任後は日本信販会長への就任が内定していたが、内外の批判が強く辞退。だが、その後もグループ企業顧問への“天下り”が取りざたされる。
早川前常務は検査にあたり、ことごとく金融庁と対峙（たいじ）したことで知られ、「ＵＦＪを追い込む結果となった張本人」といわれる。退任後は岩谷産業監査役に就任した。
稲葉前執行役員は、金融庁検査の「直接のターゲット」となっている大口融資先の総合商社・双日やダイエーを抱える審査第５部担当だった。
【みせしめ】
金融庁は刑事告発に向け、すでに事務的作業を終え、「あとは竹中担当相の腹一つ」（金融庁関係者）の段階だという。
金融庁が刑事告発を決断したことについて、司法関係者は解説する。
「ＵＦＪ告発で懸念された金融システム不安が、三菱東京や三井住友フィナンシャルグループとの経営統合が浮上してきたことで、回避できる見通しが立ったことがある。ＵＦＪ側が検査忌避の組織的関与を認めたことも決め手になった」
金融庁は先月末から大手銀行に対し、平成１６年９月中間決算を対象とした特別検査に着手したばかり。金融行政に真っ向から逆らい、大アマ査定で問題企業の処理を先送りし続けたＵＦＪに対して、「みせしめのためにも刑事告発は避けられない」（金融筋）との見方も強まっていた。
【統合に影響は】
ＵＦＪ側は三菱東京との全面統合で基本合意。ＵＦＪ信託銀行の交渉差し止めの仮処分を求めた住友信託銀行との法廷闘争にも勝利するなど、生き残りを図っている。
三菱東京側も、ＵＦＪとの経営統合を決めた時点で刑事告発リスクをすでに織り込んでおり、告発されても統合の方針は変えないとしている。
「旧三和銀から続く側近による『お庭番政治』に捜査のメスが入ることで、むしろ三菱東京主導の統合がスムーズになる」（金融アナリスト）との見方が広がる。
その一方で、「銀行内部や顧客に動揺が広がった場合、三菱東京がどこまでガマンできるかは不透明だ。捜査の過程で新たな“爆弾”が出てくれば、統合が空中分解することもありうる」（大手銀幹部）との声も一部に出ている。
三井住友も、「敵対的ＴＯＢ」（株式公開買い付け）の準備を進めているとされ、いまだ統合をあきらめていない。
ＵＦＪへの強制捜査がどんな影響を与えるのか、予断を許さない。
■検査忌避 金融庁の検査の際、金融庁職員の質問に答えなかったり虚偽の答弁をするなど検査を拒み、妨げ、忌避する行為。銀行法では、個人に１年以下の懲役または３００万円以下の罰金、法人に罰金２億円以下の罰則が定められている。平成９年に総会屋への利益供与を隠した旧第一勧業銀行（現みずほ銀行）が初の適用例。当時は個人・法人ともに罰金５０万円以下で、同事件を機に罰則が強化された。
ZAKZAK 2004/09/02
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。