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サーミル・ガドバン・イラク石油相が語るイラク石油産業の現状と展望
(2004年9月2日掲載)
イラクのアル・シャルキーヤ・テレビが2004年8月28日、同国のサーミル・ガドバン石油相へのインタビューを放映した。同インタビューでガドバン石油相は昨年から続く石油施設への破壊攻撃で約70億ドルが失われたことや、盛んに噂されるイスラエルのハイファ港向けの石油パイプラインの再開はありえないこと等を改めて明らかにしている。以下では、同インタビューの要点を紹介することとしたい。
1.イラク石油施設への破壊活動の状況?
(1) 既に1年以上続いているが、状況は最近になっていっそう悪化している。これまでにあらゆる石油施設が対象となり、攻撃され破壊された。当初は密輸目的の泥棒による事件が多かった。
(2) その後、武装勢力による攻撃が始まり、パイプラインや石油貯蔵施設が攻撃された。最悪は昨年も今年も発生している油井の爆破である。例えば、「ハイファ2」油井が吹き飛ばされ、今でも復旧作業が続けられている。
(3) また石油製品の運送トラックも標的とされ、マシンガンや手榴弾等で攻撃された。残念なことに石油省の運転手や助手も殉教者となったし、負傷者も出ている。
(4) 輸出用石油パイプラインも標的となり、北部或いは南部のこれらパイプラインが攻撃されない週はないほどである。これらの攻撃は重大な収入の損失を招いた。
(5) さらに製油所向け、特にアル・ドーラ製油所向けのパイプラインも標的とされ燃料不足を引き起こした。そのため石油製品の輸入を余儀なくされた。石油製品の輸入額は月間2億ドル超にも達している。
(6) これらの資金は本来、学校や病院、大学、道路の建設に使われるべきものであった。ということで財政的・人的損失も挙げねばならない。私はある時の記者会見で、昨年来の損失は70億ドルにものぼったと述べている。
2.新規石油パイプラインの敷設計画はあるのでしょうか?
(1)
我々はアラビア湾経由の輸出能力を高めようと計画している。それには新パイプラインの敷設とファオ沿岸沿いの石油貯蔵所の復旧が必要になってくるし、アル・アマヤ港の再建も不可欠である。
(2)
将来計画では近隣諸国経由の輸出増もある。だがこれは石油生産量・輸出量の拡大計画と密接に関係してくるし、大規模な油田開発も必要になってくる。安定化すれば油田が開発され、製油所が建設され、ガスが開発され近隣諸国やトルコ、欧州に輸出されることになる。
3.イラク・サウジ間の戦略石油パイプラインの復旧はいつからでしょうか?
(1) これはイラクとサウジアラビアの両国間の問題である。
(2)
姉妹国である両国の利益に適う形で将来協議される事項である。
4.キルクーク・ハイファ・パイプラインは再開するのでしょうか?
(1) このような名称のパイプラインは最早存在していない。パイプラインの作業も1948年に停止されている。
(2)
パイプラインンの大部分は撤去されその他の目的のために流用された。例えば、ポンピング・ステーションはスクラップ化され存在していない。
(3)
また我々はこのパイプラインを再開させようとの意思も持っていない。
5.現在の高油価をどう思いますか?
(1)
ロシアのユコス問題、ベネズエラの政情不安、米国のガソリン不足等の多くの要因が重なり合ったものだが、それらの中でも特に中東、それも湾岸の政治動向が供給不安を生んでいる。
(2)
OPECは長年に亘り安定価格の維持に努めてきたし、消費国に必要とされる石油を供給してきた。また、OPECは消費国との良好な関係作りも欲している。
(3)
OPECとしては公正な価格を望むが、同時に消費国に代替エネルギーを求めさせるような水準の価格であってはならないとも思う。
6.イラクの新規油田開発の進捗状況はどうなっているのでしょうか?
(1)
イラクは数年以内に新規油田開発によって最低でも300万b/dの生産が可能となる。しかし、それには第一段階だけでも150億ドルもの投資が必要になってくる。この段階が8年ほど続こう。我々は新石油政策が承認され次第、この計画を実行に移す。
(2)
石油省は現在、この計画の最終調整を行っている。それが済み次第、同計画は検討のために最高石油ガス委員会に回付される。
(3)
このほか、石油省は既存の生産能力を維持し開発しようともしている。それには次の二つが考えられている。第一は自立と節約であり、現在実行しつつある。第二は巨額の投資を通じた能力拡大である。我々はこの第二点については、イラクとアラブ、その他外国との協力によって達成したいと考えている。
7.イラク石油の確認及び未確認埋蔵量はどの程度なのでしょうか?
(1) 石油の確認埋蔵量は最小1150億バレルである。未確認及び潜在埋蔵量は2000億バレル超であるが、石油省は2140億バレルとしている。
(2) とりわけ西部砂漠地帯は有望で、軽質の石油・ガス資源が特に古い岩石の中に溜まっている。
8.外国企業選定のメカニズムは出来ているのでしょうか?
(1) メカニズムはまだ出来上がっていない。それよりもまず最も重要なことは、(基本となる)石油政策を採択することである。
(2) 勿論そうはいっても、メカニズムは幾つかの原則を踏まえたものになる。原則の第一は、イラク国民のためになる最善のものを選択することであり、最大の石油収入を上げることを考える。
(3) 同時に、我々の外国の取引相手を多角化する戦略が必要である。これにより最新の技術の導入を図りたい。
(4) さらに、外国の石油企業には重質油、中質油、軽質油をそれぞれ市場に販売してもらう政策を求めたい。
9.イラクの石油はどのように国民のために活用されるのでしょうか?
(1) 過去、原油輸出で得られた収入は国民の繁栄をもたらすようには使われず、様々な目的に費消されてきた。
(2) 石油省の責務は、石油生産量・輸出量の増加によって石油収入を増大させ、炭化水素資源の富を(国民のために)活用することである。
(3) 石油収入は、国民の生活水準を引き上げ、医療を供与し、大学教育を施し、より良い道路・鉄道・地下鉄や社会保障等を与えるために、使われなければならない。そうなればイラク国民の繁栄が達成される。
10.石油製品不足はどうして起きたのでしょうか?
(1) イラク戦争前には需給が均衡していたので危機は起きなかったが、イラク戦争中に石油製品在庫の大半が爆撃又は火災で失われてしまった。市民の略奪もあったし、製油所の操業停止も起きた。
(2) ようやく製油所が徐々に稼動を開始したと思ったら、我々は大量の自動車の海外からの流入という新しい事態に見舞われることとなった。
(3) 国民が車を持つことに異議はないが、問題はガソリン消費量が戦前の1日当たり1500リッターから2100リッターに激増したことである。石油省には不足分の1日当たり600リッターを調達しなければならない圧力が加わった。
(4) 他方、製油所の生産はパイプラインでの原油供給が度々攻撃されたため、イラク戦争前の水準に依然回復していない。しかも部品の不足から維持・補修が十分行われなかった。
(5) 問題を解決するには、まず消費を合理化する必要がある。我々は今でもとても安い価格でガソリンを販売している。バグダッドのガソリン・スタンドで売られているガソリンの輸入価格は1リッター650ディナールだが、公式販売価格は僅か50ディナールに過ぎない。燃料価格を徐々に引き上げねばならない。
(6) 今ひとつ、全面的な維持・補修作業を行って製油所の効率を引き上げねばならない。だがこれは時間と費用のかかる作業である。
(7) 第三は製油所の開発であるが、これも時間を必要とする。
(8) そして、第四は需給不均衡を解消するための新規製油所の建設である。
(エネルギー・環境室長/主任研究員 畑中美樹<はたなか・よしき>)
http://www.idcj.or.jp/1DS/11ee_josei040902_2.htm