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9月2日(ブルームバーグ):日本銀行の福井俊彦総裁は2日午後、大阪市内で記者会見し、4−6月の実質国内総生産(GDP)伸び率が1.7%にとどまったことについて「景気回復が遠のいたという印象はまったく持っていない。最近まで出ている数字だけで経済が再び暗闇のなかに向かって進んでいくという判断は、いささかも持っていない。そういう意味では強気だ」と述べた。
福井総裁は「率直に言って、日本のGDP統計は四半期ごとの振れが少し大きいという印象を皆さんも共通して持っていると思う。その意味では、ある程度それを均(なら)して実勢をつかむ努力が必要だと思う」と指摘。
さらに「昨年10−12月と今年1−3月のGDP統計は事前の予想より高かったし、もしかしたら経済の実勢よりも少し高めの数字かもしれない。逆に4−6月の数字は事前の予想より低かったが、経済の実勢から見ても少し低かったかもしれない」と述べた。
福井総裁はそのうえで「全体として前向きの循環メカニズムは、やはり明確化している形で動き続けているということではないかと思っている」と語った。
主な一問一答は以下の通りです。
――4−6月の成長率は前期比年率1.7%と事前の予想を下回った。これをどう判断するか。
「率直に言って、日本のGDP統計は四半期ごとの振れが少し大きいという印象を皆さんも共通して持っていると思う。その意味では、ある程度それを均して実勢をつかむ努力が必要だと思う。それを前提に考えると、昨年10−12月と今年1−3月のGDP統計は事前の予想より高かったし、もしかしたら経済の実勢よりも少し高めの数字かもしれない。逆に4−6月の数字は事前の予想より低かったが、経済の実勢から見ても少し低かったかもしれない」
「(われわれは)このように思っているので、均してみる場合、経済の動きを形付けているメカニズムの方から理解した場合、引き続き輸出が堅調に増加し、設備投資や生産も増加を続けている。家計部門にも少なくとも雇用面には好影響が及んできている。個人所得はまだしっかりしてはいないが、個人消費もやや強めの動きを続けている。全体として前向きの循環メカニズムは、やはり明確化している形で動き続けているということではないかと思っている」
「したがって、われわれの判断は、昨年10−12月、今年1−3月の高成長の反動もあって、4−6月のGDP成長率の表面的な数字は減速したが、均してみれば、今の動きは将来の持続的な成長軌道への復帰につながる回復過程をたどりつつあると評価している」
「ただ、物価面での関連でいくと、引き続き消費者物価は小幅のマイナス基調と予想しているので、引き続き消費者物価指数に基づく明確な約束に沿ってしっかりと量的緩和政策を継続していくべき段階だ」
――この日の10年物国債利回りは1.5%を割り込んだ。景気が減速してきたのではないかという見方が背景にあると思うが、債券市場と日銀の景気認識の間にズレがあるとみているか。
「ズレがあるとは必ずしも思わない。ただし、市場関係者が経済全体を見るときに、毎日毎日出てくる指標に多少重きを置いて判断する場合と、指標には必ずしも現れないが、日本経済の底力みたいなものが時の経過とともにどれくらい強くなっているか、その基調的なトレンドに軸足を添えて判断するという時期もある。この両面からの判断が今後とも交錯しながら、まさに実勢に合った金利の形成が繰り返されていくだろう」
「私自身は、先ほども言った通り、日本のGDP統計は多少振れが大きい(とみている)。したがって、表面の計数だけで実勢をつかむのは率直に言ってちょっと難しいところがある。しかし、一方で、いろいろな情報を分析というまな板に乗せて、日本経済の基調的な強さがどれくらい高まりつつあるか、この作業も手法は違うが、各人がやっておられる。日銀も懸命になってやっている」
「これで行くと、潜在成長能力は生産性の向上を軸に、緩やかだが着実に既に上昇局面に入っている。表面的な成長率の波の底に、底力はゆっくり上を向いているということであれば、実際の成長率は長い目で見れば、そういう潜在成長能力に収斂(れん)していくので、表面的な成長率が一時的に下がったように見えても、ベースラインがしっかり上がっていくとすれば、弱気一方の心象形成は必ず修正される」
「しかし、そんなに一挙に実力が跳ね上がるものでもないことを考えれば、長い目でみれば、安定的な長期金利の形成という大きな軸のなかで動いていくだろうと思う」
――4−6月のGDPだけでなく、7月の鉱工業生産なども弱めの数字になった。それでも従来の景気認識に特に変化はないか。景気回復の局面が遠のいたという印象はないか。
「景気回復が遠のいたという印象はまったく持っていない。先ほど言ったように、昨年10−12月と今年1−3月のGDP成長率は高めに出ていて、あのままの数字がずっと続くとわれわれは想定してなかったし、皆さんもあのまま行くと想定した方は多分1人もいないだろう」
「ある巡航速度に成長率は落ち着いていくだろう。その落ち着いた姿で持続性があるかどうかが問題だ。その場合に、経済の底力がずっと上がっていれば、巡航速度にストンとうまく収まって、ある安定的な成長が長く続くという形に持っていけるはずだ。そうした意味での回復パスは、引き続きその方向で進んでいると判断している。したがって、表面的な成長率が少し下がることはそれほど不自然なことではないと思っている」
「しかし、経済は生き物なので、上がるのも弾みが付き、下がるのにも弾みが付く。人々の心理的要因がそれを増幅するというリスクはいつもある。それはわれわれも非常に注意深く見ていく必要があると思うが、最近まで出ている数字だけで経済が再び暗闇のなかに向かって進んでいくという判断は、いささかも持っていない。そういう意味では強気だ」
――福井総裁は講演後の質疑応答で「潜在成長能力がずっと上がっていく過程で、ずっとゼロ金利を続けていると、最後に調整しなければならない幅は大きくなるという意味では、将来の金利調整にそれだけ困難さが加わるということになる」と述べた。その場合、日銀としてはどのように対応するのか。
「過去の過剰を解消し、規制緩和などで資源を有効に活用できるようになっていたり、技術革新によって付加価値を付けていく能力が上がっているというのは、明らかに潜在成長能力を上げる要因であり、生産性を恒常的に引き上げる要因だ。現に日本経済も、この恒常的な潜在成長能力を押し上げていく力が働き始めていると思う」
「その場合、潜在成長能力に見合って経済をバランスしていく金利の水準はそれだけ自然に高くなる。学者の方々はこれを自然利子率が上がると言う。自然利子率が上がれば、現実の金利もそれに見合って上がっていくというのが普通の姿だ」
「しかし、物価との関連で、グローバル化経済のもとで潜在成長能力が上がる形で景気が回復しても、従来に比べて物価の上昇テンポがちょっと遅れるということがあれば、特にデフレ脱却という最終目標実現のため、少し長く時間軸効果を効かせて短期金利水準を少し抑え、問題の解決を最終的に図るということになると、自然利子率の上昇に少し遅れてわれわれの金利の操作が始まるということだから、いわゆるビハインド・ザ・カーブの金融政策が少し長くなる」
「これは、最終的には自然利子率の上昇幅に見合った金利の調整が、早く金利操作に入った場合に比べれば、必要な調整幅が最後は大きくなる。どれくらい最後の調整の困難度合いが増すかというのは、質的な差があるわけではない。あくまで量的な程度問題だと思う」
「経済の潜在成長能力が上がり、現実の景気回復が進み、しかし、いつまで経っても同じ高さの生産性の上昇で、賃金の上昇がいつまで経っても追いつかないとか、物価の上昇がいつまで経っても置いてきぼりになるという経済を想定しているわけではない。時間的な距離にもある相対感を持ってみていく必要がある」
「結果として、そうでない場合に比べて最後の調整幅は多少大きくなるとしても、それは程度問題であり、市場の金利形成にどう働きかけていくかという、われわれの金融調節上の手腕に少し負担が重くなる、あるいは、われわれが市場の調節に当たって考えなければいけない方程式が少し複雑になり、少しそれだけ知恵が要るということだろうと思う」
「時間が余計かかれば、困難が増す。一方、時間が余計かかれば、われわれがサボらない限り、勉強の時間もある。難しい仕事だが、これはきちんと対応する。不良債権問題に苦しむというような後ろ向きの問題ではなく、将来展望は明るい話だから、しっかり勉強したいと思っている」
記事に関する記者への問い合わせ先:
大阪 日高正裕 Masahiro Hidaka mhidaka@bloomberg.net
記事に関するエディターへの問い合わせ先:
東京 沖本健四郎 Kenshiro Okimoto kokimoto@bloomberg.net
谷合 謙三 Kenzo Taniai ktaniai@bloomberg.net
Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時 : 2004/09/02 18:58 JST
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=ai3p8YrlFlb8&refer=jp_japan