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肉眼ではみえない微生物の秘められた大きな力を活用しようとバイオテクノロジーの研究員として第一線で活躍している。今取り組んでいるテーマは二つ。まず、二酸化炭素、水、光だけで糖類などを作り出す微生物の光合成を研究して食品の原料開発につなげること。もう一つは石油を原料とする樹脂を分解する生物の働きを調べてリサイクル技術に応用することだ。基礎分野の研究開発とあって派手さはないが、持ち前の根気と粘りで「十年後」の開花をにらんだ独創性のある技術開発を目指している。
微生物とのつきあいは学生時代にさかのぼる。岡山大薬学部の修士課程での論文のテーマは、がん細胞などの原因となる物質の解明だった。ヒトの遺伝情報を伝えるDNA(デオキシリボ核酸)を構成する塩基配列の異常が、がんなどを引き起こすメカニズムを微生物を使って検証した。
大学の先輩の薦めで平成元年四月にクラレに入社し、倉敷市の研究所に勤務。そこでもやはり微生物とのつながりは切れず、大腸菌などを使った創薬分野の研究にかかわった。
とくに、成果を得たのは微生物によって工場排水を浄化、リンや窒素を除く水処理技術の分野だった。クラレは石油からつくるポリビニルアルコール(PVA)を材料にした直径約四ミリのビース状の球に微生物を付着させ、汚水中のアンモニアなどを効率良く分解させるシステムを開発。
有機物の分解にはアンモニアを酸化させる菌や窒素を除去する菌など三種類の微生物がかかわっていることが知られていたが、岡さんらのグループは菌を取りこんだその球を約一ミクロンの薄さに切って電子顕微鏡でチェック。その結果、三種類の菌が協働して汚泥を分解している様子を写真に撮影できた。「三つの菌が層のように重なっている姿をみて感動しました。学会報告でも注目されましたね」。
昨年五月に現在所属する「ライフサイエンス研究開発グループ」のチームリーダーに。ここでは緑色の藻類が、光合成によって、健康に良いとされるカテキンなどを作り出す仕組みなどを研究している。「現状では天然のものから抽出して食品原料にしていますが、人工的に合成できれば効率良く生産ができます」と夢を語る。
最近は微生物の収集にご執心とか。研究所の近くの神社に参拝した際、手水をしようとふと水盤に目をやると緑色の藻が繁殖していた。その一部をちょっと失敬して研究所に持ち帰り、コレクションに加えた。地方に出張する同僚には「藻をみつけたらお願い」とビンとスポイドを渡している。
生き物が相手だけに苦労は絶えない。「微生物を育成するため水の管理やデータのチェックなどで土曜や日曜の出勤はざらですね。でも愛情を感じます」と目を細める。
「石油などの化石燃料はいつかはなくなります。生き物の力を生かした技術をもっと広めたい」と抱負を話す。あと三年以内に第一号の商品を世に出したい、と目を輝かせる。(左山広二)
http://www.sankei.co.jp/news/evening/31bus003.htm