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産経新聞社が実施した主要企業百十一社のアンケートで、デフレを克服しつつある企業の自信が浮き彫りになった。厳しいコスト削減やリストラで体質強化を図ってきた企業に明るさが戻り、それが業績改善や景気拡大につながっている。一方、日本経済にとっての不安要因としては、７４・８％の企業が「米景気の減速」を指摘。次いで「中国経済の腰折れ」が３２・４％と、日本経済の牽引（けんいん）車となっている米中経済の動向に注目が集まった。
◇
≪景気・業績≫
■「拡大は長期」半数超す
景気拡大を認識している企業は、すべての業種に及んでいる。「横ばい状態」と答えたのは、電機、流通、食品の四社だけ。このうち二社は上半期の売上高を「減収」としたが、最終利益については四社とも「増益」を予想している。
景気拡大が続く期間の見通しについては、「今後一年以上」が３８・５％、「二−三年程度」が１６・７％と、半数以上が楽観的な見通しを示している。“長期派”の中でも「拡大は続くが、テンポは鈍化する」（金融機関）と慎重な見方もあるものの、「平成二十年以降も続く」などと日本経済が中期的な成長軌道に入ったとの強気の予測も出ている。
その一方で「秋まで」が一社、「年末まで」が十五社と計１６・６％が景気は踊り場にさしかかりつつあると認識している。とくに素材産業や関西地区の企業に多く、今春から顕著になっている「原油・素材価格の高騰によるコスト増」に懸念を示す声が強い。
こうした景気認識は、足元の企業業績見通しに裏付けられている。
売上高では「増収」の見通しの企業が上半期の５４・１％に対して下半期は６０・４％に増加。最終利益も「増益」見通しが上半期の６２・２％に対して下期は６４・０％と、いずれも年度後半に業績が伸びると予想している。
強気の見方を背景に、平成十七年三月末の日経平均株価終値についても「一万一〇〇〇−一万二〇〇〇円台」とする予想が７１・１％に上る（二十日の終値は一万〇八八九円一四銭）。前回の年末調査でこの範囲を予想したのは５０・１％で、株式市場の回復にも力強い足取りを感じていることがわかる。
◇
≪デフレ≫
■楽観・悲観ほぼ同数
今回のアンケートではデフレに対する企業の認識が変わってきたことが分かった。業種によって異なるものの、コスト削減努力などを続け、デフレ下でも企業業績を回復させてきた自信がその背景にありそうだ。
「すでにデフレが終息した」あるいは、「年内に終息する」と答えた企業は、運輸、流通、建設、電機・通信、消費財の十一社。９・９％を占めた。うち五社は、大規模なリストラを乗り越えて業績を急回復している企業で、新たな経営基盤を確立した自信の裏返しとみられる。「一年程度で終息」を合わせると、計４３・２％が終息に向かっていると認識している。
その理由としては、「為替レートが一ドル＝一一〇円程度の安定した水準を保っており、原油・素材価格の高騰が消費者物価に影響する」（電機メーカー）との見方が多い。
ただ原油・素材価格の高騰については、値上がり分を製品・サービス価格に「転嫁しない・できない」と答えた企業も３８・７％に上った。「競争激化で加工品の価格下落が止まらない」（他の電機メーカー）とする声も依然残っている。
このため、３４・２％の企業は「デフレの終息には二−三年かかる」と答えた。「終息のメドはつかない」の８・１％と合わせると、楽観的な見方を示す企業とほぼ同数の四割以上がデフレの終息には悲観的だ。
製造業からは「供給能力に過剰感の残る分野が見られる」「消費者の価格に対する意識に変化はみられない」といった声も寄せられた。
また、「来年度に景気調整局面を迎える公算が大きく、デフレの完全終息は次回の景気回復局面に持ち越される」（エネルギー業界）との分析もある。
◇
≪米国経済≫
■消費減退やイラク懸念 「踊り場」の認識強める
米国経済の不安材料として、住宅投資にかげりが見え始めるなど「個人消費の減退」を懸念する声が５５・０％に上った。次いで「イラク情勢」（２７・０％）と「テロの脅威」（２６・１％）など国際情勢の緊迫化に伴うリスクを懸念する声が多いほか、景気過熱に伴うインフレや金利上昇への警戒も寄せられた。
米国の景気拡大が続く時期については、国内景気の拡大持続時期より早く減速するとの見方が強い。十一月の米大統領選が景気動向を占うものとして注目されているが、３６・９％が「大統領選終了まで」から「年末まで」に景気拡大が終息すると予測。「来春まで」を含めても５２・２％と半数以上に上っており、企業は米国経済が踊り場にさしかかっているとの見方を強めている。
◇
≪政治≫
■首相支持率大きく低下 「二大政党に期待」５５％
今回の調査では、小泉純一郎首相の支持率が大きく低下した。
支持率は３９・６％で、昨年末調査の４６・６％から７・０ポイント、昨年夏の４４・０％から４・４ポイントそれぞれ低くなった。不支持の企業では、「構造改革の姿勢に妥協が感じられる」「改革の具体性とスピードに欠けている」などと構造改革路線の実績に不満を示す声が多い。
一方、支持企業では「構造改革の推進を期待する」との声が依然根強いが、「他に適任者が見当たらない」などと消極的な支持派も多い。
七月の参院選で民主党が躍進したことによる自民党との二大政党を期待する声は５５・９％。ただ、「現在の民主党では二大政党制になり得ない」など、政策に幅のある民主党の党内事情に不満を示す声もあった。
また、参院選や昨年の総選挙で各党が掲げたマニフェスト（政権公約）の政策項目で、早期の実現を求める政策としては（１）年金制度改革（２）規制緩和（３）税制改正−の「経済界三大要望」が上位を占めた。十位外では郵政民営化や憲法改正のほか、外国人労働者の受け入れなどもあった。
◇
≪質問項目≫
【１】景気の現状をどう認識しますか
【２】（【１】で「拡大している」「穏やかに拡大している」と答えた企業に）景気拡大はいつまで続くと予想しますか
【３】景気に不安材料があるとすれば、どんな点を懸念しますか（２つまで複数回答可）
【４】今年度上期の企業業績見通しについて
【５】今年度下期の企業業績見通しについて
【６】平成１７年３月末の日経平均株価はどの程度と予測しますか
【７】米国の景気拡大はいつまで続くと予想しますか
【８】米国経済の不安材料は（２つまで複数回答可）
【９】デフレの終息時期は
【１０】原油・素材価格や海運料の高騰が、企業経営にどのような影響を与えますか
【１１】小泉純一郎首相を支持しますか
【１２】郵政民営化に賛成ですか、反対ですか
【１３】日本郵政公社を民営化する場合、いずれの方式が好ましいですか
【１４】郵政民営化後に窓口機能を活用した新事業が考えられています。望ましいサービスは
【１５】７月の参院選で民主党が議席を伸ばしましたが、二大政党制についてどう考えますか
【１６】各党が掲げたマニフェスト（政権公約）で、とくに早期実現を要望するものは（３つまで複数回答可）
◇
≪回答企業≫
旭化成▽旭硝子▽アサヒビール▽味の素▽イオン▽石川島播磨重工業▽出光興産▽伊藤忠商事▽イトーヨーカ堂▽ＮＥＣ▽ＮＴＴコミュニケーションズ▽ＮＴＴドコモ▽ＮＴＴ東日本▽王子製紙▽大阪ガス▽花王▽鹿島▽川崎重工業▽関西電力▽キッコーマン▽キヤノン▽九州電力▽京セラ▽キリンビール▽近畿日本鉄道▽ＫＤＤＩ▽コスモ石油▽コマツ▽サッポロビール▽サントリー▽三洋電機▽ＪＲ東海▽ＪＲ西日本▽ＪＲ東日本▽ＪＦＥホールディングス▽ＪＴＢ▽四国電力▽資生堂▽清水建設▽シャープ▽商船三井▽新日本製鉄▽新日本石油▽住友金属工業▽住友商事▽住友信託銀行▽積水ハウス▽セブン−イレブン・ジャパン▽全日本空輸▽ソニー▽損保ジャパン▽第一生命▽ダイエー▽大成建設▽大日本印刷▽大和証券グループ本社▽大和ハウス工業▽高島屋▽武田薬品工業▽中国電力▽中部電力▽帝人▽東京ガス▽東京海上火災保険▽東京電力▽東京三菱銀行▽東芝▽東北電力▽東レ▽凸版印刷▽トヨタ自動車▽日興コーディアルグループ▽日産自動車▽日本ＩＢＭ▽日本航空▽日本水産▽日本生命▽日本ハム▽日本マクドナルドホールディングス▽日本郵船▽野村証券▽長谷工コーポレーション▽阪急電鉄▽日立製作所▽ファミリーマート▽富士写真フイルム▽富士通▽ブリヂストン▽北陸電力▽北海道電力▽ホンダ▽松下電器産業▽マツダ▽丸紅▽みずほ銀行▽三井住友海上火災保険▽三井住友フィナンシャルグループ▽三井物産▽三井不動産▽三越▽三菱化学▽三菱地所▽三菱自動車工業▽三菱重工業▽三菱商事▽三菱信託銀行▽三菱電機▽三菱マテリアル▽ユニ・チャーム▽リコー▽ワコール（五十音順）
http://www.sankei.co.jp/news/morning/22kei001.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。