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【パリ=山口昌子】欧州連合(EU)の行政府である欧州委員会のバローゾ次期委員長は二十日、二十四人の次期委員をブリュッセルの本部に集め、初会合を開いた。新委員会は十月に欧州議会での承認を経て、十一月一日から発足するが、同日付の欧州各紙は新委員会での「フランスの影響力の失墜」(英フィナンシャル・タイムズ)をいっせいに指摘した。
初会合では各委員とその報道官の国籍を変えることや欧州議会の公聴会に関する準備などを行った。委員会はEUのいわば政府で、委員は閣僚に相当するが、主要ポストとしては通商担当に英国出身のマンデルソン氏、経済・通貨担当はスペインのアルムニア氏、司法・治安担当はイタリアのブティリョネ氏、競争担当はオランダのクルス氏、域内市場担当はアイルランドのマクリービー氏などだ。
シラク仏大統領はフランス出身のバロ氏のポストとして競争担当か域内市場担当を希望したと伝えられるが、「マイナー」(ルモンド紙)な運輸担当だ。
こうした顔ぶれからまず、新委員会の性格をアングロサクソン型の「純粋で厳格な自由経済主義」(仏元欧州問題相のモスコビシ氏)と分析し、共通農業政策に代表されるようなフランス式の国家支援型経済がEU内ではますます通用しにくくなるとの警戒感が仏内では強まっている。
バロ氏は英語が苦手で欧州問題の専門家でもないので、バロ氏を送り込んだシラク仏大統領ら仏指導部が「EU機関の重要性を十分に認識していない」(フォンテーヌ前欧州議会議長)との批判も聞かれる。
バローゾ氏はポルトガル首相時代、イラク戦争に賛成を表明し、開戦直前にブッシュ米大統領、ブレア英首相、当時のスペインのアスナール首相の三首脳会談をポルトガル領で開催した経緯から、イラク参戦組を優遇し、仏独の非参戦組を冷遇したとの指摘もされている。ドイツは当初、スーパー経済委員の創設を主張していたが、フェアホイゲン氏は新設の企業・産業担当だ。
これに対し、バローゾ氏は二十日付の仏フィガロ紙で、「思想的に極めて均衡が取れている」と反論。仏冷遇との見方は「フランスの内政問題」と一蹴(いっしゅう)している。
拡大EU前に英仏独伊の主要国は欧州委員に二人を出していたが、拡大後は二十五カ国が平等に一カ国一委員制になり、主要国の影響は相対的に弱まっている。
いずれにせよ、八〇年から九〇年代半ばまでのフランス出身のドロール委員長時代に比較すると、仏独中軸の時代から「集団統治時代」(EU筋)に移行しつつあるといえそうだ。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/21int003.htm