私は、ある時、採用試験の面接で、「将来どんな人になりたいか」と尋ねらられ、「精神病患者になりたい」と答えました。
　面接官が一瞬、変な顔をしたので、「自分からサン・レミの精神病院への入院を希望し、病院の庭のアイリスを描いたゴッホのように、魂の浄化によって不朽のものを残せる人になりたい」と、補足しました。
　面接官の顔から心配そうな表情が消えました。
　そして、私は採用試験に合格しました。

　私は、その時、奇を衒って面接官のウケを狙ったわけではなく、思ったことを正直に言ったまでですが、面接官が別の人であれば、不合格だったことは想像に難くありません。後から考えるに、その時の私は、面接官に対するリトマス試験紙のつもりでこの言葉を使ったと思える節もありましたが。

　古来よりの日本の諺に、「天才と気違いは紙一重」というものがあります。

　何らかの社会的なシガラミの中に埋没して「良い子」を演じていては、達成できないこともあり、人がシガラミを吹っ切った時、他人はその人を「気違い」と呼ぶのではないでしょうか？

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