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カトリックの反撃:バチカンはサパテロを「スペインの歴史に対する攻撃」「世俗原理主義」と非難
ブッシュの「シカト攻撃」に加え、ローマ教会がスペインのサパテロ政権に対する攻撃を再開し、アスナールやラホイといった「虎の威を借る狐」どもが大喜びしています。
●11月13日付の日刊紙ABC(電子版)によりますと、ホモの結婚の合法化や安楽死、学校教育から宗教の時間を無くす、人間のクローン実験の承認などの政策を採ろうとしているスペイン社会労働者党政府に対して、バチカンが厳しい非難を再開しました。
今回のバチカンの非難は、ドイツ人の枢機卿ワルター・カスパー教皇庁教会統一促進会議議長が先頭に立っているもので、彼によりますと「サパテロ政権はスペインのカトリック文化と歴史を拒否している」ということで、「このような重大な無理解を解決するために方策を見出すことは難しい」と嘆いています。
さらに数日前には枢機卿ジュリアン・ヘランス「法案のための教皇庁委員会」委員長が、スペインの社労党政権を「世俗原理主義(fundamentalismo laicista)」という言葉で非難の声をあげています。特に彼はホモの結婚問題と学校からの宗教教育の撤退問題を取り上げて「夫婦と家族、および青少年の教育に対して非常に有害な影響をもたらすだろう」と攻撃しています。ヘランスは、全ヨーロッパに「世俗原理主義の大波」が押し寄せており、「我々は、国家の世俗的な性格と世俗主義とが混同され、不可知論と道徳面での相対主義が拡大するだけでなく、他のどのような選択をも政治的に不適切と見なされる時代に生きているのだ。」と強調しています。
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『バチカンは「スペインの歴史に対して攻撃」と政府を批判』(ABC:11月13日)
http://www.abc.es/abc/pg041113/prensa/noticias/Sociedad/Religion/200411/13/NAC-SOC-092.asp
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●16世紀のヨーロッパで、プロテスタント宗教改革の波に危機感を高まらせたカトリックは、イエズス会のような戦闘的なセクト集団、またスペイン国王を兼任する神聖ローマ帝国カール5世の覇権主義を生み出しました。そして米国の新教キリスト教原理主義の気違いじみた台頭ぶりに刺激されたのでしょうか、カトリック「解放派」の頭目であるはずのワルター・カスパーが異例の手厳しい非難を表明しています。
カスパーは教会エキュメリズム、つまり全キリスト教会統一を促進する立場ですから、当然、ブッシュ再選の母胎となった米国の福音主義を強く意識しているでしょう。ブッシュ再選の合言葉の一つが「ホモの結婚を許すな」だったのです。
それにしても、このカスパーは「ユダヤ人との和解」にも熱心なのですが、カトリックによるスペイン統一と共に、ユダヤ人追放、イスラム教徒追放、異端審問等々のスペイン・カトリックの歴史をどのように見ているのでしょうか。また「世俗原理主義」とは面白い表現だ。そのうち「世俗原理主義テロリスト」なんてのも現われるかもしれない。
●で、スペインでは、「化け猿の威を借る狐」アスナールに続いて、国民党党首のマリアノ・ラホイが、このバチカンの「怒り」をバックにして大張り切りでサパテロ非難に精を出しています。ラホイは、社労党政権と閣外協力を組む統一左翼連合、カタルーニャ左翼共和党を「俗悪」とののしり、サパテロに「一緒になって愚かさに陥る」ことの無いように忠告しています。また驚いたことに、モラティノス外相に対して「米国に対するおべっか使い」という表現で嫌味を垂れています。(アレ?逆じゃないのか?)
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『ラホイはサパテロに、俗悪な仲間と一緒に「愚かさ」に陥らないように訴える』(ABC:11月13日)
http://www.abc.es/abc/pg041113/prensa/noticias/Nacional/Politica/200411/13/NAC-NAC-027.asp
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このラホイというオッサンは、アスナールと同様に、デタラメと非難と嫌味と皮肉(笑うにしては余りに下劣過ぎる)しか言えない性格の人間ですが、これは今の国民党幹部にほぼ共通して見られる現象です。彼らの大部分はオプス・デイの会員か有力シンパで、このセクトは人間の性格を限りなくゆがめる特徴を持っているようです。何せ、オプス・デイは社会的エリートしか相手にしない、貧乏人は搾り取る対象としか見ず鼻も引っ掛けない、といったやっかいな思想集団ですから。
●それはともかくも、ヨーロッパではイスラム教とともに「世俗原理主義」が新たな「魔女狩り」の対象となってきそうです。こんな坊主どもの動きなど知らん振りしていれば良いのでしょうが、次のようなニュースもあります。
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『宗教の授業は「評価すべきで学校教育に入れるべきだ」と、百万人以上が署名』(ABC:11月13日)
http://www.abc.es/abc/pg041113/prensa/noticias/Sociedad/Religion/200411/13/NAC-SOC-093.asp
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実はスペインでは、現在、民間の「反世俗主義」キャンペーンが大々的に繰り広げられ、宗教教育の廃止反対が特に強く叫ばれています。もちろん教会と国民党筋が音頭をとっているのですが、政府としても決して無視できない厄介な動きです。革命と反動の繰り返しを経たフランスと異なり、スペインやラテンアメリカでは「カトリック教会に逆らう政府は長続きしない」というのが伝統になっているのです。サパテロの先輩であるフェリペ・ゴンサレスも、ポルノ解禁、離婚の合法化、麻薬の使用合法化は行いましたが、基本的な路線としては教会に逆らうことには慎重でした。
さて、サパテロ政権が「教会に逆らって長続きした始めての政権」となるのでしょうか。これはヨーロッパ全体の問題、ひいては世界全体に影響を及ぼす問題でもあるでしょう。