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10月7日(木)
旅行中に読んだ2冊の本
真っ青な空に爽やかな風が吹き抜ける気持ちの良い1日でした。「秋晴れ」とはこういう日のことを言うのでしょうか。
政治学会出席のための北海道旅行の最中に、空港での待ち時間や飛行機の中などで2冊の本を読みました。1冊は、関岡英之『拒否できない日本−アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書)であり、もう1冊は、尹戴善『韓国の軍隊』(中公新書)です。
いずれも、教えられるところの多い本でした。感想は沢山ありますが、印象に残った部分だけを紹介することにしましょう。
「日本の法制度や制度改革の決定プロセスには、アメリカの介入を許すようなメカニズムが存在しているのかもしれない。そしてどうやらわたしたち一般の国民は、そのことをきちんと知らされているわけではないらしい」という関岡さんの本には、ビックリするようなことが沢山出てきます。日本の改革は“アメリカ起源”で、日本政府はそれを「拒否できない」と言うのですから……。
アメリカには「数年後の日本を知る必読の文献」があるとして、関本さんは次のように書いています。
これから数年後の日本に何が起きているか。それを知りたいと思ったとき、必読の文献がある。アメリカ政府が毎年十月に日本政府に突きつけてくる『年次改革要望書』である。日本の産業の分野ごとに、アメリカ政府の日本政府に対する規制緩和や構造改革などの要求事項がびっしりと書き並べられた文書である。(50頁)
このような「恒常的な内政干渉としか表現しようのない」『年次改革要望書』の提出は、1993年7月の宮沢・クリントン首脳会談で決まったものです。そのルーツは1984年2月に設置された「日米円ドル委員会」だというのが、関本さんの解釈です。
アメリカがいかに強く日本に干渉しているか、それによってどのような形で「構造改革」が強いられているのかが、大変良く分かるものです。本書は、小泉「構造改革」の背景を知る上での必読文献だと言えるでしょう。
もう1冊の本は、韓国陸軍の予備役少佐で、韓国では行政学博士を、日本の九州大学では韓国人初の法学博士号を取得した異色の経歴を持つ尹さんという方の書かれたものです。全く知らない徴兵制の実状や軍事訓練の実態などが紹介され、「韓国の軍隊」についての興味深い入門書になっています。
しかし、だからといって、尹さんはこのような軍隊やそれによって生まれる「軍事文化」をそのまま肯定しているわけではありません。「韓国が半世紀にわたり軍事文化を育ててこなければならなかった現実とその痛みを、日本のみなさんに知っていただきたい」と書いているように、韓国をめぐる複雑な国際関係や政治・軍事情勢についてもきちんとした目配りがなされています。
とくに、本書を読んで深い感銘を受けたのは、最後の部分です。そこで、尹さんは次のように書いています。
韓国と日本と中国はアジアに位置し、長い歴史を通じて交流してきた近い国である。特に韓国と日本は仲の良かった時期が仲の良くなかった時期より長かった歴史を持っている。国際化がますます進む時代のなかで、統一韓国と日本と中国が手を結び、軍隊のないアジア平和時代をつくるというのは夢にすぎないだろうか。帝国主義時代の私たちの先祖は軍事力による侵略と戦争という歴史を描いてきたが、現代の指導者たちは経済力で自国の国力を誇示している。しかし、普通の人々はお互いに傷つけず、手を握り合って平和のために祈っているのである。国際化時代を迎えたからこそ、軍隊のない社会という普通の人々の夢を現実にしていけるのだと信じたい。(258〜259頁)
「軍隊のないアジア平和時代をつくる」――何という、素晴らしく美しい「夢」でしょうか。「韓国の軍隊」について書かれた本の最後で、「軍隊のない社会という普通の人々の夢を現実にしていけるのだと信じたい」というメッセージを受け取るとは、それこそ「夢」にも思いませんでした。
尹さんは「夢」と仰っていますが、これこそ21世紀のアジアが目指すべき「目標」でしょう。そこにしか、アジアの未来はありません。その同じ未来を夢見ている方がここにおられるということを知って私がどれほど嬉しく思ったか、ご想像できますでしょうか。
日本でも、いずれは「軍隊のない社会」を作らなければなりません。それは21世紀における平和の目標です。
そしてここにこそ、「平和憲法」の価値と生命力があるのだと思います。今世紀の遅くない時期に「軍隊のないアジア平和時代をつくる」ためにも、「平和憲法」を守り通さなければなりません。
それは、このような「夢」を抱いているアジアの人々に対する日本人の国際的な責務ではないでしょうか。
などということを考えながら、夜になってから西国分寺まで行ってきました。講演を頼まれていたからです。「いずみホール」というところで、JMIUという労働組合の西部地協秋季年末闘争決起集会に呼ばれ、200人ほどの人を前に話をしてきました。
論攷でも講演でも、頼まれれば何でも引き受けるというのが私の基本姿勢です。ですから、注文に応じて家を建てる「注文建築屋」だと、私は自称(自嘲?)しています。
とはいうものの、守備範囲は一応政治と労働で、「何でもござれ」というわけではありません。そこで何を書いたり話したりするかは、このHPの読者であれば大体の見当がつくことでしょう。
まして今日の講演は、JMIUの委員長で全労連の副議長をしている生熊茂実さんから直接頼まれましたので、断るわけにはいきません。生熊さんは、私の都立大学時代の塩田庄兵衛ゼミの先輩ですから……。
学生時代には、生熊さんにも、まだ結婚していませんでしたがその奥さんにも、大変お世話になりました。学生運動の仲間が、その志を貫いて労働運動の世界に飛び込み、運動家として信頼され、リーダーシップを発揮している姿を見るのは嬉しいものです。
集会が終わってから交流会があり、久しぶりに旧交を温めることができました。その後、八王子まで戻り、近くにお住まいの方々とカラオケを歌いまくってしまいました。
なお、明日(8日)も、講演のために盛岡市近郊の「つなぎ温泉」に出かけます。嬉しいことに、講演の後、そこで1泊させていただくことになりました。
翌日は、そのまま研究会に出席し、帰宅は夜になるでしょう。ということで、明日のHPもお休みさせていただきます。ご了承下さい。
http://sp.mt.tama.hosei.ac.jp/users/igajin/home2.htm