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ジョセフ・S・ナイ(著) 「ソフト・パワー」 「信頼性こそがソフトパワーの源泉である」
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投稿者 TORA 日時 2004 年 10 月 08 日 16:41:25:CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu80.htm

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ジョセフ・S・ナイ(著) 「ソフト・パワー」
「信頼性こそがソフトパワーの源泉である」

2004年10月8日 金曜日

◆ソフト・パワー 国際政治の方程式を解く ジョセフ・S・ナイ(著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532164753/249-1387014-7875523

◆情報時代の広報外交

自国の良いイメージを広める活動はとくに新しいものではないが、ソフト・パワーを活用する際の環境は過去何年かに劇的に変わっている。ひとつには、世界の半分近くの国がいまでは民主主義国になっている。冷戦の時代とは違って、二つの政治・社会体制の競争という観点は、広報外交の指針としての重要性を失っている。

ミャンマーやシリアのように、政府が情報を管理している国に対しては、いまでも国民に正確な情報を提供する必要があるが、メキシコやトルコのように、議会が政策決定に影響を与えられるようになった国に対して、自国に好意的な世論を作りだす必要が新たに生まれている。

イラク戦争にあたってアメリカがこれらの国の支持を求めたとき、ブッシュ政権がソフト・パワーに打撃を与えていたために、これらの国の政府がアメリカを支持できるどころか、支持できない状況になっていた。

独裁政権が崩壊し、民主主義の政権ができた国では、世論の形成がさらに重要である。政治指導者が親米的であっても、世論と議会がアメリカとその政策を否定的にみていれば、政治指導者がアメリカ支持の政策をとる余地がかぎられる場合もある。

こうした状況では、外国の世論にはたらきかける外交が、政府首脳の間でかわされる秘密の外交的なやりとりと変わらぬほど重要な影響を与えることがある。

情報は力であり、いまでは世界の人口のなかで情報という力を行使できる人の比率が以前よりはるかに高まっている。「海外に勤務するアメリカ政府の何人かの職員がジープを運転し、中南米など、世界各地の奥地を巡回して、世界から隔絶した地域に住む人たちに映画をみせる」時代は、はるか以前に終わっている。

技術の進歩によって、情報を処理し伝えるコストが劇的に低下した。その結果、情報の爆発が起こり、「豊富さの逆説」が生まれている。情報が豊富になったために、注意が不足する結果になったのだ。

情報の量の多さに圧倒されるようになって、何に注意すべきかをみきわめるのが難しくなっている。このため、情報ではなく注意が希少な資源になり、無意味な雑音のなかから価値の高い情報を選びだす能力をもつものが力を獲得するようになった。

編集者と解説者への需要が高まっており、どこに注目すべきかを教えてくれる人たちがカを得るようになっている。さらに、大衆は宣伝に警戒し、敏感になった。編集者と解説者にとっては、信頼性が決定的な資源であり、ソフト・パワーの重要な源泉である。

信頼性に関する世評は以前よりもさらに重要になっており、信頼性の構築と破壊をめぐって政治的な戦いが繰り広げられている。各国政府は、他国の政府との間で信頼性を競っているだけでなく、ニュース・メディア、企業、非政府組織、国際機関、科学者のネットワークなど、幅広い参加者とも信頼性を競っている。

政治は信頼性をめぐる戦いになった。いわゆる権力政治の世界では、軍事力と経済力の勝負になるのが通常である。これに対して情報時代の政治は、「最終的に誰の説明が受け入れられるかになる可能性がある」とランド研究所の政治と情報の二人の専門家が論じている。

各国政府は他国の政府や他の組織との間で、みずからの信頼性を高め、反対勢力の信頼性を弱めるために戦っている。たとえば、セルビアと北大西洋条約機構(NATO)が一九九九年にコソボ紛争の解釈をめぐって、翌年にセルビアでの事態の解釈をめぐって戦った。

二〇〇〇年十月にミロシェビツチ大統領を辞任に追い込んだ抗議行動が起こる前、セルビアの成人の四五パーセントが自由ヨーロッパ放送とVOAを聞いており、国営のラジオ・ベオグラードを聞いていたのは三一パーセントにすぎなかった。

また、セルビア国内の独立系ラジオ局、B92は欧米のニュースを流していたが、政府が放送を中止させようとしたとき、インターネットを通じてニュースを提供しつづけた。世界政治では評判はこれまでつねに重要だったが、いまでは「豊富さの逆説」のために信頼性が力の源泉として一層重要になっている。

情報を提供しても、宣伝にすぎないと思われれば相手にされないだけでなく、それによって自国の信頼性に関する評判が悪化すれば、逆効果にすらなりかねない。

イラクのフセイン政権の大量破壊兵器とアル・カイダとのつながりに関する誇張した主張は、アメリカ国内でイラク戦争に対する支持率を高める点では役に立ったかもしれないが、その後に誇張していた事実があきらかになって、アメリカとイギリスの信頼性に大きな傷がついた。

さまざまな国の政府や組織がニュース提供で競い合う情報時代の状況では、強引な売り込みよりも控えめな売り込みの方が効果的になっていくともみられる。

◆広報外交の形態

一九六三年に、有名なニュース・キャスターでケネディ政権のUSIA局長になったエドワード・R・マローが、広報外交とは外国政府だけではなく、主に外国の民間人と民間組織を対象にした交流であり、政府の見方だけではなく、民間の多様な見方を伝える場合が多いものだと定義している。

イギリスの広報外交専門家のマーク・レナードが指摘しているように、「広報外交」という言葉を宣伝の椀曲表現にすぎないと考える人たちは、肝心な点をつかめていない。単純な宣伝は信頼性がない場合が多く、そのために広報外交としては逆効果になる。

また、広報外交は広報活動だけにかぎられるわけでもない。情報を伝え、良いイメージを売り込むことも広報外交の一部だが、それだけでなく、長期的な関係を築いて政府の政策を実行しやすい環境を作ることも、広報外交の一部である。

広報外交には三つの側面がある。三つはどれも重要であり、直接の政府情報と長期的な文化交流の比率がそれぞれ違っている。第一の側面は直接的なものであり、日々の情報提供である。国内政策と外交政策の決定の背景を説明する活動である。政府の高官は政策決定を下すたびに、マスコミに何をどのように伝えるかに十分に注意するのが通常だ。

だが一般に、こうした活動は国内のマスコミに焦点をあてており、広報外交の第一の側面では外国のマスコミをもっとも重要な標的にしなければならない。

レナードが警告している点だが、政府は国内政策の決定を国内のマスコミと国民だけに説明しようとする間違いをおかし、政府の行動とその説明が自国の国際的なイメージに与える影響に気づかない場合が少なくない。

マスコミの例をあげるなら、イギリスで鉄道事故が相次いだとき、イギリスの新聞が自国は「第三世界の国」だと自嘲する記事を書いた。外国の一部の新聞がこの言葉に飛びっき、どのような文脈で使われたのかを説明することなく、報道で繰り返し使った。その結果、イギリスが衰退しているとのイメージが強まることになった。

広報外交のうち日々の活動の側面では、危機に対応する準備を整えておかなければならない。素早く対応する能力があれば、事実に反する非難を受けた場合や、誤解を招く情報が流された場合に、すぐに反論できる。

たとえば、アルジャジーラが二〇〇一年十月七日にウサマ・ビン・ラディンのはじめてのビデオテープを放送したとき、アメリカ政府は当初、アルジャジーラとアメリカのネットワークがそのテーブを放送するのをやめさせようとした。

だが、いまの情報時代には、これは潮流を押し止めようとするような無駄な努力であるうえ、それを象徴する国になりたいとアメリカが望んでいる開放性の価値観に反することにもなる。

ウサマ・ビンニフディンの憎しみに満ちた演説に対抗するアメリカの声を、アルジャジーラなどの放送局に大量に送る準備を整える方が、はるかにすぐれた対応であった。カタールに本拠をおくアルジャジーラなど、外国のメディアは偏りがないわけではないが、放送するネタを必要としている。

実際にも、アルジャジーラのワシントン支局長は、「われわれの局に話しにきて、利用してほしい」と、アメリカ人に呼びかけている。

広報外交の第二の側面は戦略的情報提供である。これは選挙や広告のキャンペーンに似ており、いくつかの単純なテーマを設定する。一年のうちに何度か、象徴的なイベントや情報提供を計画し、中心的なテーマを印象づけるか、政府の具体的な政策を推進する。これは計画は簡単でも、実行が難しい場合もある。

たとえば一九九〇年代にブリティッシュ・カウンシルは、現代的で、多民族社会で、創造性豊かな国というイギリスのイメージを広めようと懸命に努力したが、同じときに政府の別の機関、観光庁はイギリスの伝統、儀式、歴史を必死に広告していた。

さらに、何かの動きによってそうしたキャンペーンが頓挫することもある。たとえばイギリスは何年にもわたってEUの忠実な加盟国というテーマを強調してきたが、二〇〇三年にイギリスがフランス、ドイツと対立してイラク戦争でアメリカを支持した。この結果、多くの国でイギリスはアメリカの属国だとする好ましくないイメージが強まった。(P166〜P171)


(私のコメント)
私はこうして毎日「株式日記」を書いていますが、それは現在のマスコミが信頼のできるニュース解説を行っていないために、その穴を埋めるために書いている。大きな突発的な大事件が起きた時に、誰もがテレビにかじり付きますが、専門家をスタジオに呼び出しても、なかなか適切と思える解説を行っていない。

ジョゼフ・S・ナイの書いた「ソフトパワー」は情報が氾濫する中で、何に注目すべきかを選び出す有能な解説者の需要が高まっていると指摘している。ところが現在の日本のマスコミにはその解説者によって世論が動かされるような偉大な人物がいないのだ。解説者やコメンテーターや評論家はたくさんいますが、どれも国民の信頼を勝ち得てはいない。

しいて挙げれば世論を動かすパワーは石原慎太郎が一番あると思えるし、頭の切れで言えば久米宏が一番切れている。その他には分野を限れば信頼できる解説者はいるのだろうが、多くのジャーナリストや評論家には信頼性が欠けている。日本にはオピニオンリーダーが不在なのだ。

テレビでは田原総一郎や筑紫哲也ががんばっていますが、言うことがクルクル変わり、とても信頼されているとはいえない。その点は「株式日記」でも攻撃してきた。情報化社会でありながら、国民はかえって本当に必要とする情報を探し出せないで右往左往している。

経済問題にしても、日本は「失われた10年」と言われながら、誰もその原因と解決方法を見つけ出せないで来た。少なくとも「株式日記」はその課題に早くから取り組んできたし、いろいろその点に関しては書いてきた。最終的には私が指摘してきた事が正しかったと認められるだろう。

911テロ事件に対しても、いろいろ書いてきましたが、やはりこれも真相は時間が経てば、真相は明らかになるし、私の指摘が正しかったと証明できるだろう。当初は陰謀論とかデタラメと胡散臭く思われても、結果的にそれが正しければ信頼性も高まってくる。

「ソフト・パワー」とは文化的な面ばかりが強調されているようですが、むしろ情報や広報活動における信頼を勝ちうることのほうが重要であり、作為的な誤った情報の押し付けは逆効果であり、情報を遮断して政府の一方的なプロパガンダを流していれば、国民は誰も政府を信用しなくなる。

日本のマスコミも一方的な政治的な宣伝活動の行為が信頼性を失わせることを知らないのだろうか。例えばそれがスポンサーや広告代理店の圧力で一つの物事を煽っていれば、やがては国民はマスコミを信用しなくなるだろう。今までならマスコミが世論を作り出すことは簡単だった。しかし最近はネットが普及してきてマスコミのニュースよりもネット情報を信ずるようになって来ている。

昨日も朝日新聞と中国の関係について書きましたが、「南京大虐殺」のキャンペーン活動は中国のような情報が遮断されたところでは有効だろう。しかし日本のような情報がオープンなところでは、たちどころに情報の嘘が暴露されて、かえって朝日新聞の信頼性は低下して来ている。本多勝一氏も信頼がなくなった。

ジョセフ・S・ナイの「ソフトパワー」はそのような情報を扱う人にとっては必読の書であり、押し付けがましい情報はかえって信頼を獲得するには逆効果になることもある。2002年のワールドカップのテレビの「韓国を応援しよう」というキャンペーンもサッカーファンには反発を招いた。一度信頼を失えばその回復には長い期間を要するようになるだろう。

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