現在地 HOME > 掲示板 > Ψ空耳の丘Ψ37 > 1249.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
障害を個性に自己表現
お笑いで心通わせ
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20041125/mng_____thatu___000.shtml
漫才コンビのように笑わせる脳性マヒの木原大吾さん(左)と周佐則雄さん
引きこもり、アルコール依存症、摂食障害、うつ病…。さまざまな障害を自分の個性として表現しようというユニークなイベント「こわれ者の祭典」が二十一日、東京・歌舞伎町の新宿ロフトプラスワンで開かれた。主催は「新潟お笑い集団NAMARA」。どんな集会なのか参加してみた。
「病気だよ、全員集合!」
出演者七人と観客約百五十人が一斉にシュプレヒコールを上げ、威勢よくイベントが始まり、出演者の紹介が始まった。
「幼少期から妄想に悩まされているアイコ(21)。脳性マヒの木原大吾(31)と周佐則雄(29)。摂食障害、引きこもり五年のKacco=カッコ=(37)。アルコール依存症、引きこもり四年の月乃光司(39)。そう病の近藤洋一(40)」。その様子を司会のNAMARA代表江口歩さん(39)が見守る。
皆個性的なファッション。女装した人や、パジャマ姿のメンバーも。それぞれが自作の詩や映像、イラストなどの特技をステージで発表する。
「みなさん、コンニチワー。お便りが来ているので、読みまーす」と周佐さんがDJスタイルで登場した。新潟のコミュニティーFMラジオで実際にDJを務めている。
続いて登場したアイコさんは、窓辺やドアなど心象風景をテーマにした写真をスライドで映しながら「透明色」と題した詩を朗読。キーボードで自作の曲も演奏した。
司会の江口歩さん(39)は達者なトークで会場を沸かせた。事故で骨折した足に後遺症が残り、五級の障害者手帳を持つ。
「五級だと同伴者も映画館に千円で入れるし、高速道路の料金も半額です。僕と一緒に遊びに行きましょう」とステージで明るく語る。言葉遣いは乱暴だが、なぜかユーモアにあふれている。
髪が薄いのを気にする月乃さんに「はげの具合はどう?」と話しかけ、脳性マヒで言葉が聞き取りにくい木原さんには「お前、何言ってるか分かんない」と突っ込む。
やりとりは容赦ないが、愛情が感じられ、そこに笑いが生まれる。タレントの毒蝮(どくまむし)三太夫さんが、お年寄りに語りかける姿をほうふつとさせる。
江口さんは「障害者を笑ってはいけないという風潮は、逆に差別につながると思う。障害者との接し方が分からない人はユーモアを持って普通に話せばいい」と提案する。
方言の「なまら」(すごい)にちなんだNAMARAは一九九七年、「地方発のお笑いを作ろう」と江口さんが設立。スタッフを含めると約五十人の大所帯。地元新潟を中心にライブやテレビ、ラジオで活動しているが、二年半前に障害のあるメンバー中心に「こわれ者の祭典」を始めた。
江口さんは「障害者の表現は笑いに転化しやすい。一緒に笑うことで理解が深まるメリットもある」と企画意図を語る。
評判が広まり、今や全国の自治体やPTAから声がかかる。東京で開くのは昨年に続き二回目。
「回数を重ね、自分も出たいという人が増えた。病気ゆえに味わい深い天然ボケを備えた人もいる。笑いは、障害者と健常者の間で通訳のような役割も果たすのです」(江口さん)
イベントの最後は月乃さんが詩を朗読した。
「全国百万人の引きこもりの皆様、二百万人のアルコール依存症の皆々様。僕の仲間だ。仲間…。人が怖い。孤独に苦しんでいた。僕と同じ心を持つ人たちがいることに気づいた。生き生きと、共に分かち合っていこう。仲間がいれば、僕は生きていける」
観客の一人、世田谷区の看護師、西代嘉子さん(32)は「自己表現することで、病気がよくなる人もいる。いろいろな人と知り合うチャンスでもあり、いいイベントだと思う」。自分も神経症だという千葉市の男子学生(19)は感動して泣いていた。「自分にも生きる場所がある。生きてていいんだと勇気がわいてきた」
文・吉岡逸夫/写真・嶋邦夫
◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。