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1班bグループ研究会報告
「中央アジアにおける国際関係」研究会
日時:2001年11月2日(金) 16:00-18:00
場所:日本国際問題研究所大会議室
(1班bグループと財団法人日本国際問題研究所の共催)
報告者:シン・グアンチェン Xing Guangcheng
(中国社会科学院東欧中亜研究所副所長、
北海道大学スラブ研究センター外国人研究員)
報告:「中国の対中央アジア戦略と外交政策」
概要:
中国の対中央アジア外交は、(1)善隣友好・平和共存、(2)相互に利益となる経済協力、(3)内政不干渉、(4)独立・主権の尊重と地域の安定促進、を原則としている。中国は中央アジアに独占的な影響を持つ力がないことを自覚し、他の大国を刺激しないよう控えめな政策を取っており、この地域への特別な利益を表明することを避けてきた。
しかしながら、中国と長い国境を接する地域に、今のところ脅威とならない独立諸国が誕生したのは、中国にとって歴史的チャンスである。特にカザフスタンは、ロシアと中国の間の戦略的な空間として、モンゴルと並んで重要な意味を持っている。エネルギー資源の不足に悩む中国はまた、カザフスタンの石油に大きな関心を持つと共に、それをアジア太平洋地域に搬出する運河の役割を果たしたいと考えている。
分離主義、過激主義、テロリズムという「3つの勢力」との闘いを課題にしている中国にとって、安全保障面での協力は極めて重要である。「上海ファイブ」から発展して今年設立された「上海協力機構」(中国、ロシアと中央アジア4カ国が形成)にも、その文脈での機能が期待される。中央アジアの新独立諸国はイスラーム過激主義を抑える力が弱く、中国など諸外国が協力する必要がある。アフガニスタンの戦争とタジキスタンの混乱がカザフスタンとクルグズスタンに拡大し、中国に否定的な影響を及ぼす可能性は、中国が特に危惧するところである。
中央アジアをめぐる大国間の関係は時に対立的な性格を持つ。エネルギー資源をめぐって争い、自らの価値観や発展モデルを押しつけようとする国や、イスラーム過激主義を広めようとする国もある。中国はこの地域の安定を望んでおり、また日本、韓国、インドがそれぞれの役割を果たして、発展するアジアの経済圏に中央アジアを引き入れることを期待している。アフガニスタン情勢の急変で、中央アジアにおけるアメリカ・ファクターの増大が予想される。中国としては、アメリカ・ファクターとロシア・ファクターのバランスを取る役割を果たしたい(ロシアが中央アジアを裏庭と見なすことも是認しない)。
中国は中央アジア諸国に、第一に台湾問題での中国の立場を支持することと、第二に分離主義に反対することを望んでいる。中央アジアは、中国西北部の反乱を準備する基地ではなく、中国西北部の安定を後方から支援する場となるべきである。
中央アジア諸国の中ではカザフスタンを中国は最重視しているが、両国関係におけるさまざまな提案は、中国側よりもむしろカザフスタン側から出ているのが実情である。両国の間で今問題になっていることとしてイルティシュ川の水利問題があるが、中国が水を奪っているかのように書くカザフスタンのマスコミの情報は必ずしも正確でない。
所感:
報告者シン氏は、中国・中央アジア関係の研究では第一人者であり、中国の政策決定サークルにも近い。氏の報告は、一見建て前を並べているように聞こえる部分もあるが、よく聞くと中国の独自の立場がよく分かる奥深いもので、このような話を中国人研究者から直接聞く機会が少ないだけに貴重だった。報告から改めて確認されたのは、ウイグル人の独立運動(シン氏は「ウイグル」という言葉は一度も使わなかったが)が中国と中央アジアの関係にとって持つ重要性である(ただし、それでも台湾問題を「第一」と表現したことも、中国の外交政策全体の立場を示している)。アフガニスタン問題では、ウイグル問題ともつながる「反テロ」の姿勢でアメリカと協調し情報を提供する一方で、アメリカの中央アジアへの影響が強まりすぎることを危惧する中国のジレンマが浮き彫りにされた。聴衆の関心も高く、非常に多くの、内容の深い質問が出された。
(宇山 智彦)
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/IAS/Japanese/archives/1-han/2001/kenkyukai/011102.htm