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兵士の洗脳を描く『影なき狙撃者』のリメイク版が完成
Jason Silverman
2004年7月30日 2:00am PT メッセージを伝え続けることについて話をしよう。1960年代の映画『影なき狙撃者』のリメイク版には、数人の兵士がレイモンド・ショーという仲間の武勇伝を語る場面がある。湾岸戦争中に兵士たちがクウェートの砂漠で待ち伏せ攻撃に遭ったとき、命をかけて彼らを救ったのがショーだった。ショーは勇敢で、私心のない親切な男だと、兵士たちは口々に称賛する。
この兵士たちは全員、一語たりとも違わない同じ言葉を口にする。ショーは真の米国の英雄だと、彼らは証言する。ショーは素晴らしい大統領になるだろうと。
しかし、1つだけ問題がある。待ち伏せ攻撃など起こっていなかったのだ。この兵士たちはショーも含め、ハイテクを駆使した洗脳実験の被害者だった。
この筋書きは新しいものではない。『影なき狙撃者』の原作[邦訳早川書房刊]はリチャード・コンドン氏が1959年に書いたもので、1962年にはジョン・フランケンハイマー監督によって映画化された。今回のジョナサン・デミ監督によるリメイク版も、やはり不気味な作品に仕上がっている。
今回のリメイク版では、勲章を受けた退役軍人ベネット・マーコ陸軍少佐をデンゼル・ワシントン(写真)が演じている。マーコ元少佐は悪夢に悩まされており、かつての戦友アル・メルビン(ジェフリー・ライト)に打ち明けるまで、軍医の診断どおり湾岸戦争症候群だと信じていた。ところが、砂漠の刑務所で拷問を受けて洗脳されるというまったく同じ夢を、メルビンも見ていたのだ。
マーコ元少佐は、この夢は現実なのではないかとの疑念にとりつかれ、ショーがマーコ元少佐を含む仲間の兵士を救ったという、10年間語り続けてきた武勇伝が、作り話のように思えてくる。この武勇伝には細かい部分が欠けている。一方、ショーは副大統領に立候補し、戦歴のおかげで支持を伸ばしている。
兵士たちの記憶は改変されてしまったのだろうか? もしそうだとしたら、誰が何のために? そして、マーコ元少佐はどうすれば、精神異常者だと勘違いされずにショーを説得できるのだろう?
デミ監督は今回の作品で、フランケンハイマー監督とは異なるアプローチをとっている。フランケンハイマー監督の『影なき狙撃者』は暗示やほのめかしに満ちていた(このスタイルだけでも観客をぞっとさせた)。今回のリメイク版ははるかに明快で、オリジナル版の陰険な雰囲気は露骨さに変わっている。
デミ監督はリメイク版にグロテスクな描写を詰め込んでいる。ドリルがショーの頭蓋骨を貫通する場面では、粉々に砕けた骨が映し出される。デミ監督は見事な出来栄えの『羊たちの沈黙』(現代のホラー映画の中で、今も記者のお気に入りの作品)と同じように、アルフレッド・ヒッチコック顔負けの才能を発揮して、徐々にサスペンスを盛り上げている。
デミ監督はまた、兵士たちの肩に小さな物体が埋め込まれる場面や、空き部屋でショーの脳に素早く手術が施される場面などで、科学的な面もリアルに描いている。3人の主役からも素晴らしい演技を引き出している(リーブ・シュレイバー(写真)がショーを演じ、ショーの母親である上院議員をメリル・ストリープ(写真)が演じている)。ダレるところや途切れた感じの部分が少々と、現実味に欠ける場面が何ヵ所かあるものの、作品全体はスリラーらしさを維持している。
大統領選挙の年に公開されるこのリメイク版の最も注目すべき点は、臆面もなく破壊的な内容になっているところだ。ハリウッドから出てきた、大企業や米国の政治体制に対する批判としては、とりわけ激しいものだ。
デミ監督によるリメイク版は、民主主義が近いうちに、強欲によって完全に汚染されると予測している。その結果、起きる可能性があると考えられているのは、米国がインドネシアとベラルーシ、ギニアを侵略すること、巨大軍需産業が米国政府に貸し出すための軍隊を編成すること、そして、米国民が繰り返し、次なるテロ攻撃に備えるよう言い聞かされることだ。
リベラル派は喜んでこの作品とブッシュ政権を結びつけるだろう。ジョージ・W・ブッシュ大統領は大企業からプログラムを組み込まれた手先に、米ハリバートン社は映画に出てくる邪悪な企業、マンチュリアン・グローバル・コーポレーションになぞらえられるはずだ。
しかし、現代の政治プロセスに対するデミ監督の批判は、1つの政党に向けられたものではない。すべての人に罪があり、すべての人が関わっているのだ。
デミ監督のリメイク版で何よりもぞっとするのは、政治家の言葉と行動が食い違っている点で、ショーはその最たる例だ。演壇上で金権政治を非難するショーは、米民主党のジョン・ケリー議員とジョン・エドワーズ議員のコンビよりもずっと左寄りに見える。
しかし、指令者たちがショーの耳の奥で静かに話しはじめると、ショーは多国籍企業のために尽くす用意ができていることを示す。この映画の最も恐ろしい場面だ。このようなやり方は本当に効果があるのだろうか? 政治家たちの耳には、ささやき声の指令が届いているのだろうか?
[日本語版:米井香織/高森郁哉]
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