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米国情勢異常あり!!
「9・11」再発はあるか?
6月28日、予定より2日早まった形でイラクの主権委譲が完了した。反米武装勢力によるテロを恐れて2日早められたと伝えられる。イラクは今後、暫定政府主導で平和への道程を歩みだすのか、あるいはさらなる混乱が内戦を拡大させていくのか――。いっぽう、イラクの「今後」を考えるうえで最も重要な立場にある米国は、今後どう変わっていくのだろうか。
主権委譲は、米国の担当セクションが「国防省」から「国務省」へ移管することでもある。主権委譲式典の前倒しを事前に知らされていなかった国防総省とホワイトハウスの確執は、今後どうなるのだろうか。
チャラビーとテネットの更迭劇
5月末、バグダッド市内のチャラビーの自宅等が家宅捜索を受けた。
チャラビーはイラク統治評議会の最重要メンバーであり、ネオコン勢力が強力に後押しをしていた人物である。米『ニューズウィーク』紙はチャラビーについて、「不確実な情報によりイラク戦を仕掛けた希代の詐欺師」と酷評しているが、事実チャラビーはかつて隣国ヨルダンで銀行詐欺事件を起こし国外退去命令を食らったという曰く付きの人物。同紙はチャラビーがリチャード・パールと組んで米国がイラク戦に突入するようなでっち上げ情報操作を行ったとしている。R・パールと言えばネオコンの中心人物の一人。今年2月までは米国防総省付属の国防政策委員会委員であり、いっぽうでは「暗黒の王子」とも呼ばれる男だった。
さらに6月に入ってすぐ、CIAのテネット長官が辞表を提出。ブッシュ大統領がこれを受理したことが伝えられた。
ブッシュは4年前の大統領選で激戦の末勝利を収めた。ブッシュの前の8年間は民主党クリントン政権で、この時代に米国国権の中枢はユダヤ系に収奪されたと言って良い。とくにCIAの変貌は凄まじく、その実体について本紙はたびたび記事にしてきた。
大統領就任直後には、ユダヤ系の影響力を極力排除しようとする組閣を行ったブッシュだったが、CIA長官を更迭することはできなかった。ユダヤ系を米国権中枢から排除しておきながらCIA長官をクビにできなかったことが、後に「9・11」テロを引き起こしたと言える。事実、パウエル国務長官は「9・11の悲劇を招いた元凶はCIAの忠誠心の問題だった」と、間接的な言い回しでCIAに対する憤りを述べている。
ブッシュの「変身」
極めて大雑把にブッシュ政権の変身ぶりを眺めてみよう。
まず、就任直後にユダヤ系を排除する方向の組閣を行った。だが就任9カ月目に「9・11」テロが勃発。このテロを契機にブッシュは、国防総省やネオコンに一気に傾き、アフガンのタリバーン政権を叩き潰し、ついにはイラク戦争に突入する。その結果、拡大イスラエル主義を唱えるイスラエルの思惑通り中東全域に危険な臭いが立ち籠めていった。その間、国防総省やネオコンと対立するパウエル国務長官は孤立状態に追いやられ、辞任の噂まで流れ出ていた。
だが、イラク戦争の勝利宣言の後に事態は変わっていく。
米国に対する抵抗運動は過激さ、熾烈さをきわめ、周辺諸国に「反米」機運が高まっていく。また世界は米国の一国超大国主義を許さず、とくに米国とEUとの間には溝が生まれ対立が高まる。
EUを初めとする世界の圧力だけではなく、イラク戦後の抵抗運動、あるいは捕虜虐待事件等によりブッシュは政策変換を迫られる。しかし米国防省は世論も抵抗運動もいっさい無視して我が道を突き進む。そこでブッシュはイラクの戦後処理を国防省からホワイトハウス主導へと方向変換することにした。ラムズフェルド国防長官が「チャラビーの自宅強制捜査」をまったく知らず、報道陣から聞いて仰天したことを見ても、ブッシュが国防省を見限ったという政策転換が見てとれる。
変身ブッシュへの「ひと言」
最近になって大きく変身したブッシュ。彼のイラク政策に関してのさまざまな意見を以下に並べてみよう。現在の米国が見えてくるかもしれない。
R・パール(チャラビーの盟友/元国防政策委員会委員/ネオコン)
「サダム・フセイン打倒は間違いなくイラクに解放をもたらした。だがその後の統治戦略の拙さで米国は出口を見失ってしまった。米国は早期に主権委譲を行うべきだった」(チャラビーを主軸にしたイラク暫定政府を早期に立ち上げるべきだった。)
P・ウォルフォウイッツ(国防副長官/ネオコンの筆頭格)
「イラク復興に関しては控えめに言っても成功しているとは言えない。見通しの甘さに基づく政策ミスが重なった」(R・パールの失策を認めざるを得ない厳しい立場。)
W・クリストル(ウイークリー・スタンダード誌編集長/ネオコンの論客)
「イラクに対する武力行使は正しかったが戦後統治戦略を誤った。その間違いの責任は明らかにブッシュ政権にある。米国は今、すでに敗北したか敗北の瀬戸際にある」(ネオコンの主張を全面的に受け入れなかったブッシュが悪い。今後もネオコンの主張を入れない場合には、敗北するだろう。)
W・オドム(元中将/旧・安保担当の保守派/非ネオコンでネオコン新派)
「米国が半年後に撤退すると宣言すれば、これまでは米主導を嫌っていた国連や独仏といった欧州勢などもイラクへの関与をせざるを得ない。そうすればブッシュと米兵は救済される」(米国内に今後起きるかもしれない「文明内戦」と、それが起こす国家の変貌を危惧。)
A・ジンニ(元海兵隊大将/反ネオコンで反ブッシュ派)
「国防総省がイラク人亡命組織の情報に踊らされてイラク戦を開始した。占領統治計画は杜撰であり、必要な兵力を投入しなかった」(ブッシュがネオコンに引きづられて悲劇をもたらした。=ネオコン及びブッシュを強烈に批判。)
イラク暫定政権の誕生
ネオコンは当初、イラク統治評議会のチャラビーを暫定政府首相に据える予定だった。ところが国防省とホワイトハウス(ブッシュ大統領)との駆け引きの結果――というか、ブッシュが国防省をイラク統治から外したことで、チャラビー首相構想は頓挫した。
そして5月初旬、暫定政府誕生に向けて国連のブラヒミ事務総長特別顧問がバクダッド入りして協議を行っている最中に統治評議会のムハンド議長が爆殺されるという事件が起きた。
「ムハンド議長がテロの対象者だったことはわかりきっていたのに、米軍は適切な対応をしなかった」――。米国から見放されたチャラビーは、こう言って米政府を糾弾した。実際のところ、チャラビーは、自分が首相になれないのなら後継者のムハンド議長を首相にしよう、と考えていたはずで、その思惑ごと爆殺されたわけだ。いやもっと明確に言うなら、チャラビーの後継者だから殺されたと米政府を責めたのだ。
暫定政府首相を誰にするのか? 混迷混乱のなかアヤトラ・アラウィが首相に選出された。
アラウィはシーア派の裕福な家庭に生まれたが、フセインが実権を握った時に英国に亡命した。英国では1980年代に反フセイン組織「INA(イラク国民合意)」を結成。この組織誕生には英諜報機関MI6が絡んでいる。そして1991年の湾岸戦争後にはINA・アラウィは米CIAと緊密な関係を構築。ワシントン政界にも人脈を作り、また権益拡大に向けて米英両国を舞台に活発な活動を展開してきた。
イラク戦の勝利宣言後、国防省はINC(イラク国民会議=INAと対立)のチャラビーを重用してきた。だが、ブッシュが国防省との緊密な関係に見切りをつけチャラビー放逐に向かったところで急浮上してきたのがアラウィであった。
結果として、今後のイラク問題を仕切るのは国防省ではなくCIAになったと言える。暫定政府首相は閣僚の任命権、罷免権を握っているから絶大な力を持っているのだ。
アラウィが首相に決定したところで統治評議会が必死の巻き返しを図った。その駆け引きの末、ヤワル統治評議会議長(スンニ派)が大統領に決定した。ヤワルは4月の米軍によるファルージャ掃討作戦に厳しい抗議を行い、反米的な発言を繰り返していたが、最後には掃討戦終結に向けての仲介役を買って出た人物。イラク内の反米勢力を懐柔できる唯一の人材であり、またイラク国民の支持を取り付けられる人物でもあった。
2人の副大統領にはシーア派とクルド人がなった。閣僚36人のうち女性は6人。この暫定政府は正直なところ、これまで存在した統治評議会の拡大版でしかない。
イラクの国民大衆にとっては、統治評議会が名を変えただけで、権力のたらい回しとしか思えないだろう。「イラク占領抵抗運動」を名乗る組織が「主権委譲は形骸に過ぎず暫定政府は米軍の傀儡である。我々は必ずイラクを武力によって解放する」と宣言したのは当然のことだ。だが、現実のところ、大衆のほとんどは政治には無関心だ。治安の回復と生活の復興こそが大衆の求めるものなのだ。
米軍が多国籍軍に代わり、規模が縮小され、治安回復、生活安定の方向が見えてくれば直接選挙が成功する可能性もある。シスターニ師が暫定政府の人選を受け容れ、サドル派もその方向に向かっている。ヤワル大統領という手が功を奏し、イラクが暫定政府を受け入れ、アラブ諸国がこれを歓迎する可能性が高まってきている。
中東大混乱は避けられたのか
イラク暫定政府の誕生は明らかにブッシュ政権への追い風になった。以下、新聞報道からその様子を眺めてみよう。
「イラク主権移譲完了 米大統領『大きな希望の日』
米国のブッシュ大統領は二十八日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開かれているトルコ・イスタンブールでブレア英首相と会談後、共同記者会見し、イラクへの主権移譲が二日前倒しで実施されたことについて、『今日はイラクの人々にとって大きな希望の日となった』と歓迎、『テロリストの爆弾はイラクの自由を妨害することはできなかった』と強調した。
大統領は『われわれはイラクの人々に自由と新しい政府をもたらすという約束を守った』と語り、イラク側に主権が完全に移譲されたことを強調するとともに、『イラクは発展に向けて新しい局面に入った』と主権回復後のイラクの発展に期待を表明した。
(中略)
ブレア英首相も厳しい治安状況に言及し、『イラクの新政権が今後、自由を守るために、非常事態宣言などの措置に踏み切る可能性がある』と指摘。『ただし、これは人々から自由を奪うためではなく、自由の実現を助けるためのものだ』と述べ、主権を回復した暫定政府が治安回復のために厳しい措置を取ることを擁護した。」(6月29日「産経新聞」朝刊)
ただし独仏は手放しで暫定政府主権委譲に高評価を与えているわけではない。
「イラクへの前倒しの主権移譲に関し、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席中の英独など欧州の首脳は二十八日、『重要な一歩』(シュレーダー独首相)と歓迎の意向を表明した。
しかし、シラク仏大統領のコロナ報道官は同日、『一つの段階でしかない』と指摘、慎重な態度を示した。同報道官は『二〇〇五年まで移譲のプロセスは続く』とし、イラクで総選挙が実施された時点で主権が完全に移譲されるとの見方を示した。」(6月29日「産経新聞」朝刊)
イラクの今後はなお不透明である。一部の米諜報機関によって新たなテロリストが養成された可能性もある。
イラクがとりあえず中東世界に歓迎される形で自立したことは、かねてから恐れられていた「中東大戦争――最終戦争(ハルマゲドン)への道」が当面、避けられたと考えて良い。しかしそれは、危うさを伴っている。
まず最も恐れるべきは、ブッシュ政権から切り離されたネオコンの逆襲だ。もちろんそれはネオコンが攻撃するといったものではない。どんな形で出現するか予想もつかないのだが、最悪の場合、第二の「9・11」勃発という筋書きすら考えられる。
事実、5月末にアシュクロフト司法長官が衝撃的な会見を開いている。
アシュクロフトはテロ容疑者の顔写真入りの巨大なポスターの前に立ち、「この7人に注意してほしい。彼ら全員が米国に対する明白な脅威だ」と語ったのだ。さらに司法長官は、その場でアルカイーダの声明文を読み上げた。「……米国を直撃する」「テロ攻撃の準備は90%整った……」。
司法長官がこんな警告を発するとは、明らかに異常である。
イラクのアブグレイブ刑務所で捕虜虐待が行われていたことが世界中に公表されたが、この虐待を指揮したのは国防総省直轄の諜報機関だとされる。しかもそこでは、ダビストック研究所(英)を凌ぐ強烈な人体実験、心理実験――洗脳――が行われていたことが明らかになりつつある。いったい何のための洗脳なのか?
もし元イラク人捕虜が米国に対して自爆テロ攻撃を行った場合、誰が彼らを疑うだろうか。
最悪の場合、第二の「9・11」が起きる。マンハッタンが再び崩れ落ちる可能性がある。
しかしその可能性は極めて少ないと考えて良い。むしろ本当に怖いのは、2〜3年後に起きるであろうユーラシア大陸大騒乱だ。
中東大戦争――ハルマゲドンの回避は、世界をゆっくりと巨大な戦場へと向かわせている。極東アジアはその最も危険な地域になりつつある。
神経を研ぎ澄まして、その先を見つめようではないか。
http://www.gyouseinews.com/international/jul2004/001.html