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HOTWIRED JAPANより
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/technology/story/20040526302.html
米陸軍、超軽量・ハイテク戦闘服など新装備の開発へ
Noah Shachtman
2004年5月25日 2:00am PT
独立戦争でイギリス本国軍と戦って以来、米軍の指揮官たちは、食料から無線機、防弾ベスト、バッテリーに至るまで、兵士に持ち運ばせる物をどんどん増やしてきた。米陸軍はこの度、そうした古い装備をお払い箱にし、抜本的に見直すことを初めて決断した。
マサチューセッツ州ナティックにある米陸軍兵士システムセンターの装備の専門家、ジーン=ルイス・「ダッチ」・ディゲイ氏は、「まず兵士を真っ裸にし、そこから構築していく」と話した。同センターは、『フューチャー・フォース・ウォリアー』(FFW)という、2億5000万ドルの資金と7年の歳月をかけて行なわれるこの装備の見直し計画の指揮をする。
現在の装備では、米国の兵士は多くの場合、背中に45キロ以上の用具を背負って戦場に飛び込むことになる。どういった場面であれ、背中に小型冷蔵庫を背負っているに等しい状況は、理想的とは言えないだろう。そして、すべての装備品が互いに調和していない点も、とりわけ今日の装備の問題を厄介にしている。たとえばヘルメットの上に付けられた暗視ゴーグルはあまりにも扱いにくく、兵士たちは、何度も付けたり外したりすることを強いられる、とディゲイ氏は説明する。また防弾ベストは重すぎ、身をかわしたり、体を回転させたりといった動きを困難にしているという。
こうした装備は、兵士たちが現在イラクで直面しているような――現在に限らず今後も予想されることだが――市街戦では有効に機能しない。市街戦において、歩兵たちはできる限りの機動性と防御力を必要とする。つまりは、装備の統合化が求められるわけだ。個別の装備のアップグレードでは、これは実現できない。FFWのように、抜本的に見直す必要があるのだ。
ただし防衛政策のシンクタンク『グローバル・セキュリティー』の責任者であるジョン・パイク氏は、イラクで繰り広げられている市街戦から分かるとおり、米軍がそうしたアップグレードを今すぐ行なうことは難しいと指摘する。
「都市部の戦闘になると、(米国の)技術面での有利さの多くが損なわれてしまう」とパイク氏は言う。「むき出しの戦いになる。そうした戦闘は望ましくないものだ」。コンクリートの谷間では無線も使えない。偵察機も役に立たない。大型の火器では攻撃対象が無差別になってしまう場合が多い。部隊の「破壊力と防御力をより高めることにより、歩兵にも軍のその他の兵力と同じ技術的優位性を与える」のがFFWだ、とパイク氏は話した。
陸軍はこれまでにも、装備のマイナーチェンジを試みたことがあった。国防総省の官僚主義のぬかるみに何年も足止めを食らってきた挙句、ようやく実現したぱっとしないアップグレードもある。何かにつけ国防総省がテレビで見せびらかしてきた「究極の戦闘服(日本語版記事)」については、ここで持ち出すまでもなかろう。だがFFWについては、2010年の本格的な配備に向けて準備が行なわれているとされる。国防総省がイラク戦争で破産しなければ、目標期限内にプロジェクトが完了する見込みもなくはないだろう、と陸軍関係者や独立系のアナリストたちは考えている。
そう思わせる理由がディゲイ氏らの存在だ。ディゲイ氏は、FFWに取り組むにあたって兵士システムセンターの20人の専門家たちとチームを組み、26の請負業者を率いている――ブルックリンにある新進のデザイン事務所クライ・アソシエーツもその一つだ。米国独立戦争以来、ディゲイ氏の家系は代々、国家のために銃を担いでおり、彼は11代目にあたる。それ以前、ディゲイ氏の先祖はスコットランドの高地にいたのだという。
「われわれには闘争本能がある」と、かつてレンジャー隊員、歩兵士官、装甲部隊長を務めたディゲイ氏は、轟くような声で言った。「根っからの兵士なのだ」
ディゲイ氏は、兵士システムセンターの専門家や技術者たちに、常に兵士のことを忘れないよう念を押している。だが熱心なのは彼だけではない。ジョージア州フォートベニングの米軍基地や、メリーランド州のアバディーン試験場では、歩兵や空挺部隊員がすでにFFWのプロトタイプを着て、泥の中を転がりまわっているのだ。
こうしたテストを通じて、現在の軍服に、ちょっとした、ただし必要な一連の改良が加えられてきた。たとえば、新しい軍服は男女共通になっている。ファスナーが長くなり、お尻の部分が広く開くようになった(写真)のだ。これで女性兵士はおしっこがしたくなっても慌てなくて済む。ももの辺りの内側には袋が付いており、もっと大きいのをしても、なんとかなる。
たぶん最も大きく改良されたのは、防弾ベスト(写真)だ。胸部にぐるりと発泡素材のパッドが付いており、身体とベストのあいだに6センチほどの隙間ができるため、暑苦しくない。さらに現在の防弾ベストの多くが、歯医者でレントゲン撮影をするときに着せられる鉛のエプロンとさして変わらないのに対し、新しいベストは着用していることをほとんど意識させないくらい軽い。だがこのコガネムシのような防弾ベストは、マシンガンの弾丸が5〜7発直撃しても耐えられるし、弾薬や手榴弾のケースも兼ねている。ディゲイ氏とFFWの彼の同僚たちは、このベストを「ロード・ベアリング・シャシー」(弾薬を運搬する胴体)と呼ぶ。
この防弾ベストはまた、今後歩兵が頼りにすると予想されるコンピューターも保護することになる。コンピューターを携帯情報端末(PDA)やヘルメット装着型のディスプレーに接続する際、通常はかさばるケーブルを使っているが、FFWではその代わりに、ワイヤーが織り込まれた耐久性のある素材――「電子織物」(e-textiles)――を使用する予定だ。ヘルメットには、暗視装置を口径1センチ程度の内蔵単眼鏡として統合し、無線ヘッドセットの代わりに骨伝導方式のマイクが使われる。
当初、マイクのセンサー類は金属製だった。だがテストの結果、「人によっては頭に厚みがありすぎて機能しなかった」とディゲイ氏は言う。そこで金属でなくゲルを使ったセンサーに置き換えたところ、十分に敏感に反応するようになり、兵士の脈拍や呼吸数まで基地に送信できるほどだった。
とはいえ、これらが本当に完成するのか疑わしい雰囲気もある。たとえば、これらすべての装置に電気を供給するのは容易でない。陸軍はFFWに使用される電力は15ワット以下――一般的な電球の4分の1――に抑えたいとしている。「どこから手をつければいいのかすら分からない」と、FFWで電力管理の責任者を務めるカリッシュ・シュクラ氏はため息をついた。
とはいえ、少なくとも1つ、アイディアがある。「マイクロソフト社のウィンドウズ・オペレーティング・システム(OS)の使用を避ける」と、この問題に関する最近のメモに書かれている。FFWはオープンソースになる。無駄を省いたソフトウェアにすれば消費電力も抑えられる。
兵士たちの積荷を20キロ程度に抑えるため、FFWの技術者たちは、多くの機材をロボットの運搬役に背負わせる計画だ。ただし開発にはこれから着手する。こうしたロボ・シェルパが2010年の期限に間に合わなくとも(どうやら間に合わない可能性が高まっているらしい)、FFWのチームは計画を進めるつもりだ。
「ただちにすべての装備を送り出せということになっても、兵士たちはとても全部身につけているとは感じないようなシステムを手に入れることができる」とディゲイ氏は言う。「兵士は、機材をこの岩陰からあっちの岩陰に移動させることに頭を悩ませなくても済む。つまるところ、これは兵士の戦闘力の向上につながる」
いずれにせよ、すべては国防総省の意向にかかっている。イラクとアフガニスタンの戦闘でやせ細った同省は、今年度のFFW向けの予算を一部見合わせたと、陸軍筋は明かしている。一部の期限は2006年から2007年に先送りされた。ただし2010年にFFWを配備するという目標は変更されていない――少なくとも今のところは。
[日本語版:多々良和臣/福岡洋一]
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